(20)最初の挨拶は大事
開いた扉に、一歩踏み出す。
凄く緊張している。
凄く凄く緊張している。
でも、その緊張はいつもと同じく表には出さないで、飄々として見える様に足を進める。
まぁ、格好は付かないんだけどね!
「ははっ! 女子に手を引かれるなんてとんだへたれかよ!」
野次が飛ぶ。
うん、凄く合意する!
子供達は男女取り混ぜて十人少し。十から二十人に一人、契約武具の持ち主が居ると考えると、打倒だね。
その大半が親から引き継がれる契約武具らしいけど、使い方が分かっている契約武具って、ずるいなぁともちょっと思う。
「ほらほら、そんな事を言ってないで。
随分と遅い合流となったが、かなり珍しい契約武具の持ち主だぞ。
しかも原典だ。
ナーシャと同じ三組の、紀州ラシャ君だ。ラシャ君、自己紹介――」
「はい! 三組の紀州ラシャだよ。
僕の契約武具……というか、契約道具なんだけど、先生の言う通り特殊も特殊で、三歳の御披露目の時には受け入れられなくてぼろぼろに泣いちゃってね、戦う為の武具でも無いからって領主様も無かった事にしてくれたんだけど、最近漸く向き合える様になってね、ちゃんと受け入れて活用していくなら特別授業を受けるしか無いねって、なーちゃん通じてお願いしたんだよ。
じゃあ、皆トイレは済ませてる? 天君にお祈りは? 教室の中でびっくりし過ぎてお馬鹿になっちゃう心の準備は大丈夫?
篤と見よ! 領主様の女中さんには美人の使用済みと御墨付きを貰った、これが僕の契約道具だよ!!」
掲げた僕の両手に契約パンツが現れる。
僕の両手が広げたそれに、驚愕の表情を貼り付けた皆の視線が集中する。
先生で有っても例外では無い。
唯一なーちゃんだけがハッと気付いて僕の顔に視線を向ける様になったけれど、他の皆の口を半開きに何も考えれていない様子は、洗脳中みたいな印象で、あんまり気分が良くは無いね。
「たー!」
僕は掲げた契約パンツを右に。
貼り付いた様に視線が契約パンツを追い掛ける。
「やー!」
僕は掲げた契約パンツを左に。
貼り付いた様に以下同文。
僕はちょっと考えて、契約パンツに契約大布を詰め込んで、使い易い様に紐状に編み込んでいた契約銀髪を括り付ける。
そして徐に、紐の端っこを手に持ったまま、大布でボールみたいに膨らんだ契約パンツを教室の中央に投げ込んだ。
「えいっ!」
「「「「「「「「「「ぅおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」
ガタンというよりバキャッって感じで机や椅子が弾き飛ばされて、教室の真ん中に空白が出来る。
その間も視線を一切逸らさないって凄いなぁ。皆既に、身の熟しとかそういうのが十分に訓練されているみたい。
鞭の様に銀髪の紐を操って、ぴょんと契約パンツ玉を横へと跳ねさせる。
「「「「「「おおう! ぅおっぅお!」」」」」」
男子も女子も奇声を上げながら飛び退いて、だけど離れる事も出来無い様子で付かず離れず契約パンツ玉を囲んで追い掛けている。
うん、なーちゃんは疾っくに部屋の隅に逃げてるよ?
わくわくしながら皆の様子を眺めてる。
それと、流石に普通の紐じゃ、こんな動きはさせられないよ?
ちょっとした動きに見た目以上の力を乗せられるのは、契約パンツ程の劇的な効果は無いと言っても、流石は契約道具という事だね。
教室の中を一周、契約パンツ玉を跳ねさせれば、机も椅子ももうぐちゃぐちゃ。
僕は手元の紐を引いて、契約パンツ玉を手元に戻してから、皆の中に飛び込んで一頻り契約パンツ玉を振り回す狂乱の踊りを踊ってから、契約パンツ玉と紐の一式を呼び戻して、そして僕の物だったらしい空き机を起こして其処に座った。
うん、あんまり遣り過ぎるとデメリットスキルが上がっちゃうかも知れないしね。
それに、十分強烈な挨拶はかませた筈だから、もう十分なんだよ。
それにしても、僕はどうして契約パンツに引け目を感じていたんだろう?
僕の契約パンツはこんなに最強だっていうのに。
「あ、ああ? お……ああ。お、お前らも席に着け」
逸早く正気を取り戻したのは先生で、その言葉に従う子供達は動揺が酷いながらもそれぞれの机を起こして椅子を探す。
皆、息が荒い。
「とんでもないパンツ遣いが合流したが、これから同じく契約武具の扱いを学ぶ仲間だ。仲良くする様に」
「「「「「「「「「「お……おう!」」」」」」」」」」
う~ん、「おう」はもういいんだけどなぁ。
おうおう叫び過ぎて、染み付いちゃったのかもね♪
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