魔法使いといっしょに!~転生バフが無い僕と世界最強の女魔法使いといっしょに贈る未来異世界冒険紀行 1章 躍動編~

ひらたけまめ

プロローグ 死を想う

死について考えるのはいつぶりだろうか。


中等部の頃だったか。布団に入ってふと孤独を感じると、いつか来る人生の終わり、自分の死についてあれこれ考える。


死ぬ時ってどんな感じなんだろう。意識とか一瞬で消えるのか、ここで寝たら二度と目覚めなかったらどうしよう、とか。


事故で死にたくないなぁ、人生を全うしたい。自分は老衰がいい。


生まれ変わりとかあるのかな、天国とか地獄とかあるのかなあ。何となく地獄行きな気がするが、死後も意識というか、精神活動が出来るものなのだろうか。


あれこれ考えながら、ふと老いる自分を想像した。

肉体が古くなるのを、死に一番近い時の姿を想像する。

生き返りなど無い。死後の世界などあるはずが無いという無慈悲な現実が全身を伝う。


体が硬直する。

焦燥、鼓動が早くなるのを感じる。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!


いたたまれない恐怖に苛まれて、夜眠れなくなった事もあったかなぁ。


死は人にとって恐怖の対象である。少なくとも私はそうだった。



そして今私の命は尽きようとしている。



会場に響く銃声。

その音と共に私の心臓は貫かれていた。




2024年11月


NewTone社 新製品発表会場にて


最新IOSの情報や、新作のタブレット端末情報が出る中、今日最後の情報が発表されようとしていた。


<司会の男>

「皆様お待たせ致しました。この人無しでは語れない!

“現代に蘇りし万能の天才“、ケント・セン!」


その男を待っていたと言わんばかりの拍手と歓声が会場を包む。


<ケント・セン>

「皆さん、ありがとうございます。」


お辞儀をしながら現れる男、それが“私”こと千健人せんけんとだ。


「ケント-!」


観客からのラブコールが飛ぶ。


<千健人>

「ありがとう。皆さん大変お待たせしました。待ちきれなかった方も多いでしょう。では、まずはこちらをご覧下さい」



 映像が流れる


 tull…tull…tull…

「デイブ?おはよう」

「やあ、ジェシカ元気かい?」

「元気よ。あなたも元気そうね、はっきり“見える”わ」


―ホログラム―

ケント・セ技術技術協力によりついに空間投影の技術を実現。もちろん会話も可能。


「今どこにいるの?氷山が見えてるんだけど?」

「南極さ、君のうしろに流氷が見えるよ。どこにいるんだい?」

「北極よ」


地球のどこにいても通信できます。


―スクリーン―

空中に画面を表示でき、自身の360度に表示が可能です。拡大、縮小、スクロール、選択、あなたの感覚で画面も思い通りに。


手、足、声で操作もほら、この通りに!

いらないデータは手でくしゃくしゃにして、ゴミ箱にポイ!


―サウンド―

イヤホン無しでの音楽視聴。

あなたの耳に直接音楽が届けられます。

音質の変化も自由自在。

クリアなサウンド、ライブ会場、映画館、気分を変えてレコードで。


以降も解説が続き―


―AI―

こんにちは、私はAIのゼイ。

私は対話型AI、会話を理解し、自ら考え、最適な情報を提供します。

皆さんに快適な生活を送るためのサービスをいくつかご紹介します。


―翻訳機能―

「Howdy! How are you doing?」

【ヤッホー!元気にしてる?】

話した言語か直接変換されて相手に届けられます。

2000言語に対応可能。


―MAP―

皆さんが歩いた道をフィードバックし常に最新の地図情報を保ちます。

あなたの歩いた道を記録し、適切なナビゲーションを提供します。

【Warning Warning 左に避けてください】

危険な車両、人物を感知し、100m以内に入った場合にお知らせします。



ホログラムによって色や形も自由自在に変化させることもできます。

時計型、ブレスレット型、腕と色を同化させてまるで付けてないように見せる事も。

あなたの思い通りのアクセサリーにしてみてください。


次元を超えた体験をあなたに。 ―iDeas(アイディーズ)―



歓声が上がる。数多の拍手が祝福する。

私を称える声、興奮冷めやらず叫ぶ人、涙を流す人、この世紀の発表に誰しもが歓喜していた。


<千健人>

「ありがとう。スティーブンがスマートフォンを発売してから約16年、私がスマートフォンに触れたのは12歳。そのの頃には高等教育を終え、MITへの入学を決心し勉強していましたが、正直に負けたと思いました。この端末は世界を変えうると。そして実際に今や生活に不可欠なものとなりました。


2019年に発表した『四次元空間の証明と理論』は亡くなった彼に対する挑戦です。翌年にノーベル賞を受賞しましたが、これは僕にとって始まりに過ぎませんでした。この技術が戦争の道具にだけはなって欲しくなかったのです。この技術は世界をよりよくするために使うべきだと、その時に声をかけてくれたのがNewTone社でした。


そして4年の歳月をかけて、多くの実験と、多くの開発と、それらを凌駕する多すぎる失敗を繰り返し、本日”わが子”を発表できたことを心より感謝申し上げます」


拍手が再び湧き上がる。


<千健人>

「私は幼いながら両親を亡くしました。このiDeasは今まで私を育ててくれた祖母を助けたいという思いから制作されています。今はまだ機能は少ないですが、これから順次アップデートをしていく予定です。わが祖母に敬意を表し、iDeasをこれからもよろしくお願いします」


会場にいる全員が立ち上がり、私とiDeasを祝福した。

これが、これこそが人生の絶頂。

自分の本当に成し遂げたかった事が実現した瞬間だった。



<千健人>

「これがiDeasです、腕輪型で、手でこうやると、ホログラムが空中に現れます」


健人はiDeasを腕に付け、手をグーパーさせると巨大な画面が空中に出現した。


<千健人>

「このように手で回転させたり、スクロールしたり―」


【Warning Warning】


iDeasから警報が鳴る


【Warning Warning】


その音はさらに大きくなる。


<千健人>

「え」



銃声。



フードを被った男とも女ともわからない人が銃をこちらに向けている。

すぐに警官達がその人物を取り囲むも、撃てば皆死ぬ、と脅すかのように、腹にはダイナマイトを巻いている。


『きゃああああああああああああああああ!!!!!!』


観客の悲鳴があたり一面に響き渡り、会場が一瞬にして混乱の渦に呑まれていく。


<………>

「&%‘」~%$#(<>{}*?>」

    

声を荒げていたからか、呂律が回っていないのか、その人物が何を言っているのか分からない。


人々が逃げる中、ひとり女の子が転んで取り残されている。


<………>

「‘()#’&%」_?`~“ 」


銃口を女の子に向ける、謎の人物。


<千健人>

「落ち着いてくれ、君は一体なにが目的なんだ?」


<………>

「、。;@p「^:「」ー¥:」・」


謎の人物は銃の引き金に手をかけ、今まさに撃とうとしていた。


<千健人>

「やめろ!」


咄嗟に体が動き、私は女の子をかばうように謎の人物の間に割り込む。

謎の人物は標的を変え、まっすぐ私に銃口を向け−−−






弾丸3発







<………>

「$’#」()()’”#&$&(‘)?{`L{=}~’&&}」 


謎の人物は叫びながら逃げていった。

赤黒い血が流れていく、信じられないような痛みと、遠のいていく意識で、自分はこれから死ぬのだと実感する。



地に伏す体。

視界があやふやだ。

呼吸があさい。

誰かがさけんでいる。

こえがきこえない。



上手くやる方法はあったのかもしれない。自分が死なずに済む方法があったのかもしれない。でもあのときはこれしか考えられなかった。


こういう時ってやはり走馬灯が見えるものなのか。

昔から頭が良いせいで、周囲とは価値観が合わなかった。

周りの人間と私は何かが違う、という疎外感はいつも自分の中を駆けずり回っていた。


それはMITに行っても変わらなかった。

在学中に医師免許を取った時には医科大学院生でもないのに、という冷淡の目で見られた。

友達も少なかったが、それぞれが誇れる友人だったと思う。


今まで育ててくれた祖母より先に死んでしまうのは後悔だ、iDeasもまだ完成品を見せていない、あれもまだ改良の余地がある、AIもまだ不完全だ、私の理想とするものはもっと……



ダメだ。まだ死ねない、死にたくない。

私にはやらなければならない事がある、もっと多くの人を救えるはずだ。


私のこの頭脳が、技術が、才能があれば飢餓も貧困も差別も、社会問題をも解決できるんだ。人々を平和な世界に連れていけるんだ。それが多くを授かった私の責務なのだから………


死んで体など無いはず。なのに緊張が、悪寒が全身を駆け巡るのを感じる。心臓など無いはずなのに鼓動が早くなる。


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……

死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない!

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!


久しく忘れていた死の恐怖。


体が、心が、恐怖で耐えられない。

ここで叫んでしまおうか、どうせ誰もいないのだし。

しかし叫ぼうとしても声は出ず、鳴こうとしても涙は出ない。


当然だ、もう死んでいるのだから。



すこし落ち着いてようやく自分の死を受け入れる。

やりたいことはあった。使命のようなものも感じていた。(眩しい)

悔いはある。(まぶしい)

でも女の子を救えたことに心から(まぶしいよ)安堵する。

自分の人生は良きものだったと………



<けんと>

「というか、なんで死んだのにこんなに意識あるのかなああああ!あるのかなぁぁぁぁ!あるのかなぁぁぁぁ!」

「さっきから左が眩しいんですけどおおおおおおですけどおおおおおおすけどおおおおおお」


声が出る。なぜか反響してるけど。

目も見える、光がどんどん眩しくなっていく。


<謎の音>

「#’%()=~」


何か聞こえる


<謎の声>

「けて」


光の方へ近づいてみる。


<謎の声>

「「「助けて!!!!」」」


いろんな人の声が重なっているように聞こえる。


<…の声>

「さあ、こちらへ」


さっきとは違った声が私を呼んでいる。


<けんと>

「今行く!」


泳ぐように体を動かす。

段々と強くなる光は暖かく、私を包みこむ。

ああ、もし生き返ることが出来るのならば。

二度目の人生があるのならば。

私の全てを使い、今度こそ家族を、みんなを、

世界を救ってみせる。


    ―――――――――――――

     魔法使いといっしょに!

     プロローグ 死を想う

    ―――――――――――――





―――――――――――――――


☆いっしょに!なになに~☆


千健人

今作の主人公 28歳 男性


12歳にしてMITに入学した神童。

8歳の時、交通事故に遭い両親を亡くす。

それ以降は祖母に育てられた。


「万能の天才」の異名は四次元空間の発見の功績とMIT在籍中に医師免許など数々の資格を取得した事をふまえて苗字の「千」では足りぬ「万」の才能である所が由来。



小説初投稿となります!

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