第25話 辺境の村ダンジョン(洞窟) プレオープン! まずは【ギルド】登録
急ピッチでダンジョン内やダンジョン外の休憩所、入場券売り場などが建てられた。
村からダンジョンまでの森は整備されて、魔物に襲われないように道の両端に柵がつけられた。
国から補助金が出るので、村の人が張り切っている。
魔族のミレーヌとサウスさんは、正体をうまく隠して村の人達の手伝いをしてくれた。正体がバレても危害を加えなければ、村の人は気にしないと思うけど。
情報を発信できるようにと四角形の水晶板がいくつか大小、王都から贈られてきた。
オイルが入った珍しい水晶で、どういう原理か難しくて解らなかったけれど、同じ水晶同士で通信出来て映像や文字を映すことが出来る……と、王命を受けて運んできた人に説明を受けた。
前世のもので例えると掲示板の電子化、この世界ではそれの魔法仕様だった。
つまりこれで宣伝してね! ということだ。
僕は母に教えてもらった衝撃耐久・防水加工・汚れ防止の魔法を、水晶掲示板へ唱えた。
ついでにラッピングしたように薄く結界を施しておいた。
「これでよし!」
水晶掲示板の一つは村の入り口に近い、村の皆が使う休憩所①の前へ設置することにした。一番大きい水晶掲示板は、洞窟の前の休憩所②に設置して色々な情報を流そう。
とりあえず……。どうにか形になってきた。
【辺境の村ダンジョン(洞窟) バージョン1 地下三階まで解放(初心者向け)】が、プレオープンしました!
村の人々と王都の方々、冒険者&ギルド関係者、
「おめでとうございます! 皆で盛り上げていきましょう!」
村の長の挨拶が終わり、皆とジュースで乾杯した。
「サウスさんやミレーヌのおかげで、ダンジョン(洞窟)をプレオープンできたよ! ありがとう!」
村の皆や他の人へ、お祝い言葉と挨拶してから二人の所へ戻ってきた。僕の作った、から揚げ(二種類の味)を持ってきた。
「いえいえ。すべてはマオ様のおかげですのよ」
ミレーヌは、から揚げの乗せたお皿を受け取った。優雅に小さめのから揚げをフォークに刺して口の中に入れた。
「もぐ……。美味しいですわ!」
口元を手で隠してミレーヌは、思わず……という感じで言ってくれた。嬉しい。
「マオ、ここにいたのか!」
「ジーン! ジュウガさん!」
ミレーヌ達と話をしていたらジーンと、ジーンのお父さん ジュウガさんがやってきた。
「辺境の村ギルドのギルドマスター就任、おめでとうございます!」
なんとこの辺境の村に【ギルド】が出来てしまった。ここは辺境過ぎて何かと不便なので新たにギルドがつくられた。
そこの
ジーンはジュウガさんにそっくりだ。年を重ねて筋肉ムキムキになるとジーンもジュウガさんみたくなるのかな。
「ん、まあ。ありがとな」
ジーンのお父さん、ジュウガさんは照れ臭そうに返事をした。有名な冒険者と知らなかった。
「……ということは、冒険者登録ができるようになるんだ。さっそく登録したい!」
僕は気合いが入った。
「気合いが入っているなあ!」
ジュウガさんが僕の頭を撫でて言った。ジーンと同じ年なので、自分の子供のように何かと気にしてくれている。
「俺も騎士へなる前に腕を磨く!」
パチン! 僕とジーンはハイタッチした。ジーンはすぐに冒険者レベルが上がりそうだ。僕も頑張らないと!
ジュウガさんとジーンと一緒にギルドへ来た。村の入り口近くに、木でできた二階建てのギルドが出来ていた。
入口には『グリーンリル王国公認 辺境の村リール ギルド』の看板が確認できた。
「わ! すごい!」
村にギルドができるなんて夢みたいだ。
「中に入りな」
ジュウガさんが顔をクイっと傾けた。僕とジーンはギルドの中に一歩入った。
まだ建てたばかりなので新しい木の匂いがした。
木の四角いテーブルとイスが並んでいて、冒険者たちがパーティーの誘いなどするときに座るのだろうか? 壁には大きな木の板の掲示板があって、そこにはもう色々な依頼書が貼ってあった。
王都から贈られた大きな水晶掲示板は、真正面のカウンターの横にあって各地のギルド情報が流れているのが見えた。危険な魔物情報などお知らせしていた。
「こんにちは! 辺境の村ギルドへようこそ! ギルドマスター、さっそく冒険者を連れてきてくれましたか?」
ギルドのカウンターの中には、本で見たギルドの制服を着た女性と男性が座っていた。王国の紋章が入ったきっちりとした制服は、女性と男性では微妙にデザインが変わっていてカッコイイ。
「ああ。登録をしてやってくれ。俺は着替えてくる」
ジュウガさんはカウンターにいた、ギルドスタッフに言って奥の部屋へ入っていった。
「ギルマスのジュウガさんはずっと忙しく、このギルドをオープンするために頑張ってました。ジュウガさんがいてくれて助かりました」
「です」
ギルドスタッフの女性と男性は、良い人みたいで良かった。
「私はギルドスタッフの サナと言います。よろしくね」
長い青髪を後ろで一つに束ねている。握手を求められたので、僕はカウンターの上に手を伸ばした。
カシャン! 「ん?」
何かがカウンターの上に落ちたので視線を落としてみた。
「ああっ! 失礼しました!」
サナさんは慌てた様子で、カウンターの上に落とした
え、どういうこと?
「おほほほほ! 護身用ですの! 気になさらないでくださいね」
パチンとウインクをした。護身用……。確かに荒くれたちがきたら女性は危ないものな。でもサナさんは強そうだ。
「またか。サナ、気をつけないと」
穏やかな感じの茶髪で糸目の背の高い、お兄さんという感じの男性がサナさんに注意した。
「あら。ショータ、あなたこそ、気をつけなさいよ」
サナさんはお兄さんに注意し返した。何を気を付けるのだろう?
「コホン! 僕はショータと言います。よろしく」
「「よろしくお願いします」」
僕とジーンは二人に挨拶をした。これからお世話になる人たちだ。
「ではさっそく登録しましょうか。この水晶の板に手を置いてください」
サナさんが下から、水晶でできた平らな板を取り出してカウンターの上に置いた。これは前世で言う、タブレットみたいなやつかな。確か物凄く高価と聞いたことある。
「じゃあ、俺から」
ジーンが前に出てきて、タブレットに手を置いた。ピカッと光って魔法陣が現れて一瞬で消えた。
「はい。オッケーです! ジーン様、おめでとうございます! 無事に登録されました! 犯罪歴があったり、国にチェックされてる危険人物だと登録されませんので。これをどうぞ!」
生体認証かな? 生まれたときに登録しているんだっけ。
サナさんは幅広の銅色の指輪を渡してきた。
「これは冒険者を認識する指輪です! こちらをかざして依頼を受けることが出来ますのでお使いください」
ジーンは指輪をはめた。ぴったりだったみたい。
「では次の方、どうぞ」
僕の番だ。緊張する……。水晶の板の上に手を置いた。
ぴかっ! と光って……、あれ?
魔法陣が出てこない。もしかして? ――どうしよう。
僕は水晶の板の手を置いたまま困っていた。
「あら? どうしたのかしら」
動かなくなった水晶の板を見てサナさんは不思議そうに見ていた。
「ちょっと貸して」
隣にいたショータさんがスッと来て、水晶の板の横の部分を指でトンッ! と押した。
ピカッ……! と再び光って魔法陣が現れて消えた。
「大丈夫だよ」
ショータさんが直してくれた。僕はホッとして笑った。サナさんは首をかしげながら、僕にジーンと同じ指輪を渡してきた。
「おかしいですね? まあ、とにかく登録できたみたいなので……。おめでとうございます、マオさん!」
僕も指輪を受け取って指にはめた。嬉しくて、鈍く光る指輪をしばらく眺めていた。
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