第20話 ダンジョン(洞窟) 経営へ


 サウスが立ち上がって話を始めた。二メートルほど身長のあるサウスは、村の皆さんをちょっと怖がらせてた。


 「私が村の森の中にある、洞窟の代表持ち主です。偶然、この村のマオ様が洞窟ダンジョンを見つけて、幼馴染のジーンさんとダンジョンに入り、攻略いたしました」

おお――! と村人たちは大喜びした。


 「すごいじゃないか! マオ!」

「この村から、ダンジョン攻略者が現れるなんて!」

 「すごい!」

 村の皆から拍手と歓声がおこった。皆、喜んでくれていた。


 「あ、ありがとう」

僕は照れながらお礼を言った。すぐにでも村中に、ダンジョン攻略の噂が広まるだろう。


 「それでですね。私どもの持ち物のダンジョンとはいえ、魔物が増えすぎて困っていたのです」

 魔物が増えすぎていたのは間違いない。サウスさんは説明を続けた。


 「低レベルの魔物はどんどん増えていきます。駆除するのは大変な作業で、何もいいことがありません。そこで、マオ様からアイデアをいただきました」

チラッと、サウスさんが僕を見た。

「『洞窟内の低レベルの魔物たちを冒険者たちに、『魔物退治のダンジョン』として開放する。もちろん入場料使用料を取る。管理は僕がして、利益を村の収入源にする。』という、すばらしいアイデアでした」

 なんだか誇らしげに僕を見ていた。


 「おおっ! それは村のためになりますな! それに洞窟が放置されていたら、魔物が地上にあふれ出てきてしまう。退治してもらえたら、その心配がなくなる!」

 村の長が焦ったように意見を出した。

 「まさかあの森に、そんな洞窟があったなんて!」

 ざわざわと村の人が話し出した。


 「コホン! 続けていいでしょうか? それでですね、洞窟のすぐそばに入場料売り場と、休憩所。地下二階に、休憩所&宿泊所を作る予定になっています。これは安全のためでもありますので、決定事項です」

 サウスさんは、お茶を一口飲んで喉を潤した。


 「で。皆様に協力していただきたいのは、村の中に色々なお店や宿泊所やどやを新たに作っていただきたいのです」

 サウスさんが皆に説明すると、わあっ! と村の皆が盛り上がった!

 「私は、お土産屋さんをやろうかしら!?」

「俺は宿屋かな……!」

 「じゃあ、私は……」 わいわいと皆、目を輝かせていた。


 「同じお店競争にならないように、平和的に話し合って決めてくださいね!」

僕も立ち上がって皆に話しかけた。その辺の決め事は揉めないように、村の長へお任せすることにした。


 「洞窟の外の入場料売り場と、休憩所の建物の建設。洞窟までの道の整備……、など造る人員が必要です。求人を出しますので、私がそれらをまとめさせてもらいます」

 ミレーヌが建設予定の設計図を取り出して壁に貼った。村の人達から、お――! と歓声が上がった。この兄妹、仕事ができるな。


 「洞窟の中は、マオ様と相談しながら改造していきますわ」

微笑んだミレーヌは皆を安心させた。

 「それと……。王都から視察隊が来ると思うが、それはこちらで対応する。村に不利益が出るようなことはさせないので、ご安心してください」

サウスさんは強面だけど、こちら側で味方になったもらうと心強い。


 「ありがとうございます! この村の者達はそれぞれ腕の良い職人だが細々とやっていてな。この機会に、この村の良い物を皆に知ってほしい」 

村の長が、僕とサウスさんとミレーヌに話しかけてきた。

 僕は頷いて、「皆で力を合わせてやっていきましょう!」と伝えた。


 


 辺境の村がいつになく活気ついて、村の皆が楽しそうにしている。

村の皆に説明をして、色々なことを意見を出して話し合いをした。

「村のお店などは長に任せるとして、治安……ですね」

村の人達と話し合いが終わり、洞窟へ僕とミレーヌとサウスさんの三人で向かっている途中の道で、サウスさんが僕に話しかけてきた。


 「低レベルの魔物のいるダンジョンですが、色々な冒険者たちがこの村のダンジョンへ挑戦に来るでしょう。中にはよくない者もいるかもしれません」

 確かに……。人が多くなれば治安も悪化するかもしれない。サウスさんの言う通りだ。


 「そこで我が魔族精鋭の者達を、魔王様の護衛としてこの村に……「護衛はいいです」」

 僕はサウスさんの話をさえぎって断った。

「ただ、村の所々に警備員のような形で来てほしいです。お金は……」

 僕には人を雇えるお金を持っていない。どうしよう……。


 「ああ。その辺は大丈夫ですわ。過去ダンジョン経営で赤字は出したことありませんから、ご安心を」

おほほ! とミレーヌは笑った。

 「それに、代々魔王様に引き継がれている財産がありますの。マオ様もお使いになられてもいいのですよ?」

 初耳だ。魔王に代々引き継がれている財産? 


 「財産……。うわぁ……」

僕は頭を抱えた。労働無しで使える財産があるなんて……! グルグルと財産という文字が頭の中で回っている。

 「魔王様? どうなさいました?」

二人は僕を心配そうにみている。


 これは誘惑。――僕は魔王ではない。でも、財産かぁ……。

グッと、両手を握って二人に伝える。

「僕は魔王じゃないから、使わない!」

言えた……。葛藤して汗をかいたけど、言えた! 

 「まあ、そうですの? いつでも使えますから、おっしゃってくださいね」

 ニコニコと二人は僕に微笑んでいた。誘惑に負けそうだ……。


 洞窟の前まで来てミレーヌは、設計図を僕に見せてくれた。森の手入れされてない木々を伐採して、それを材料にして建物を造ったり具体的に話し合った。


 「魔王様にはお料理を担当してもらいたいのです。そうですね……。名物など、お土産になるようなものをお願いいたします」

 ミレーヌは僕に担当するものをお願いしてきた。

 

これは責任重大かも。


 

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