第17話 ダンジョン(洞窟)④ 地下二階から三階へ
お店の中を見てみると木の丸椅子に丸テーブルがいくつかあって、岩壁はゴツゴツしたままだけど武骨さが逆にかっこいい。冒険者の休憩所って感じが良かった。
壁には掲示板があってまだ何も貼られてないけれど、そのうちダンジョン内の注意事項やお知らせなど、冒険者の役に立つ情報が見られるだろう。
「お待たせしました~!」
レーヌが、ジーンの注文した炭酸水とから揚げを運んできた。熱々で美味しそうだ……僕が作ったから揚げだけど。
昨日……見かけない顔の旅人が僕のお惣菜をいくつか予約注文していて、朝に買い取りへ来た。なるほど。ここで提供するために予約注文だったのか。
「おっ? 熱々で美味しいぞ! マオのお店のから揚げだろ」
そう言いジーンはハフハフと冷ましながら、美味しそうにから揚げを食べていた。
「はい! マオさんお待たせしました~」
僕も炭酸水を注文した。その他に幼馴染のベルから買ったキュウリを、味付けして冷やした『冷やしキュウリ』を注文してみた。
カリッ、ボリボリ……。うん。冷えていて美味しい! 自分が作ったものだけど。
「うん。このキュウリ、美味しいよ」
僕はミレーヌにキュウリの感想を伝えた。僕の名前で出される物は、味や状態が大丈夫か確認しないとな。
「良かったです」
両手を合わせてミレーヌはホッとした顔を見せた。
「なあ? マオ」
「えっ? なに、ジーン」
ほぼお皿にあった、から揚げを食べたジーンが話しかけてきた。
「この下、地下三階はどんな魔物がいるのかな?」
ジーンは落ち着きなく僕に聞いた。
「行ってみないと分からない……。今回は、これから向かう地下三階まで探索するつもり」
「そうか」
早く地下三階まで行きたいのか、足がせわしなく動いている。
「もう行こうか? ゆっくり休憩もできたし」
「行こう!」
ジーンは椅子を勢いよくガタンと後ろに倒してしまった。気合い入れすぎだよ。
「いや――? なんか疲れが取れて、力が出たからつい……!」
ははっ! と照れ笑いをした。
ミレーヌに見送られて僕達は『地下二階 休憩&ご宿泊所(仮)』のお店を出た。
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ! 地下三階は、こちらからどうぞ」
ミレーヌが指をさした方向に顔を受けると、お店を出て右側に通路があった。来たときはお店の看板に気を取られてて、気が付かなかった。
通路を進んで行くと、なだらかな坂道になった。幅は二メートルくらいだ。二人並んで歩いても余裕な道幅だ。僕もジーンも休憩ができたので緊張がほぐれた。
「なんか元気が出たな!」
ジーンは疲れがとれたみたいで、機嫌がよかった。僕の作ったから揚げのおかげでヒットポイント&マジックポイント回復できた……ことは、言わない。
「ソウダネ……」
僕はジーンに内緒にしていることが多くて心苦しかった。でも簡単に僕の秘密は話せない。……いつか話せるときは来るのかな?
「あ? 扉がある」
坂道を進んで行くと、降りていった先に不自然な両開きの古い木の扉があった。扉を開くために、金属の丸い取っ手が左右に取り付けられていた。
「重そうな扉だね」
扉には頑丈そうな鉄の枠組がはまっていた。ジーンが扉を開けようとして金属の取っ手を掴んで引っ張った。
「……マオも手伝え」
一人では扉が開けられなかったようで、僕も片方の取っ手を掴んで一緒に引っ張った。
「ん! 重い!」
やはり扉は重くて、二人で引っ張ってやっと開けられた。ギギギギギギ……と軋む扉の音は侵入者を拒むかのように重くて、中に入るにも躊躇しそうだった。
左右に開いた扉の向こう。太陽があるのかと錯覚しそうな明るさだった。
「ここは……? 崩れた石柱に、ひび割れたレリーフ。何かの壊れた像がある」
ジーンは一歩、中に入って独り言みたいに話した。地上一階と地下二階とはまた違った雰囲気な地下三階だった。
「遺跡、みたいだね。遺構や遺物とかありそう……」
僕は、なんだか不思議な感じがした。始めて来た場所なのに見覚えあるような……?
「何かお宝があればいいな」
ジーンが中を進んで歩いていく。石畳みの道は、あちこち痛んでいるけど危なくなく歩いて行ける。大昔に街があったのか、道の両脇には石の建物の残骸が残っていた。その建物の中に、使い物にならない壊れた家具や食器などが散乱していた。
「なさそうだよ」
僕がそう言うとジーンは「探せばあるかもよ?」と言って先に進んだ。
崩れ落ちている建物やその中を見てみると、地下だからか雨ざらしになっていないので比較的きれいだった。こんな地下三階に、人が住んでいたのだろうか?
「お――い! マオ、来てみろ!」
ジーンが何かを見つけたらしく、僕を呼んだ。
だいぶ歩いてたどり着いた。そこは左右に大きな壊れた柱が半分の形で建っていて、地面が白い石で整備された広い場所だった。ここは……なんの建物だろう?
なにか儀式でも行う場所だろうか?
「こっちだ、マオ!」
ジーンが手招きしている。僕はジーンの側まで行ってみた。
「ここを見てみろ」
ひび割れた石の壁に、色々な石のレリーフがはめ込まれていた。よく見ると光る石が埋め込まれてあって、これは宝石なんじゃないかと思った。
「ここ! これ宝石だよな? 高そうなお宝じゃないか?」
ジーンは目を輝かせて僕に話しかけてきた。
「確かに宝石っぽいけど……」
人がいなくなったとはいえ、大事に飾ってあったレリーフ。勝手にとっていい物じゃない。
「神殿とかの、大事なものだったかもしれない。やめておこうよ」
僕はジーンにやめておこうと言った。
「うっ!」
その時、僕は頭が割れるように痛くなった。頭を抱えて床にしゃがんだ。
「お、おい? マオ、大丈夫か?」
ジーンが心配して僕に駆け寄ってくれた。
また……! 転生一度目の記憶が蘇ってきた。
『お前は役立たずだから、食わせる飯はないぜ!』
大柄の男が
『……を、盗んで来いと言ったのに! 失敗して逃げてくるなんて!』
何度も何度も叩いてくる。手が痛くなったのか今度は木の棒を持ってきた。
『やめて……!』
ぼくの体の中から、巨大な力があふれだすのを感じた。なんでそんなにぼくを憎むの? ぼくはなんにもしてないのに……!
ぼくを真っ黒な霧が包んだ。――男の悲鳴が聞こえた。
【虫けらどもめ……!】
次の瞬間、目の前が赤く染まった。
「おいっ! マオっ! 大丈夫か!?」
ジーンに体を揺すられて、気が付いた。
「だい、じょうぶ……」
本当は大丈夫じゃない。ジーンに心配かけないよう僕は、額を抑えながら立ち上がった。また転生一回目の、思い出したくない記憶を思い出してしまった。
ここは転生一回目の
そう。ぼくがこの街を
「ほんとに大丈夫か? 敵もいないみたいだし、この宝石をいただいたら戻ろうぜ!」
そう言いジーンは壁のレリーフに、
「高そうだぜ、マオ」
ジーンは僕にそれを自慢げに見せた。
「ま、待って! それを採ってはダメだ!」
僕はジーンに叫んだ。
ゴゴゴゴゴゴ……!
「な、なんだ?」
地響きがして僕達の体が揺れた。立ってられなくて床に膝をついた。
「ここは【生贄の場所】らしい。あのレリーフを見て」
僕が指をさした場所にレリーフがあった。そのレリーフには人が横たわり、生贄として捧げられていた。
「宝石と生贄を貢いで、怒りを治めてたらしい」
「なんだって!?」
近づいてくる魔の者。揺れは治まらない。僕達は身動きできず、その魔の者が近づいてくるのを震えながらその場から離れられないままいた。
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