第14話 ダンジョン(洞窟)① 探検! 地上一階


 「は? なんで俺が?」

僕は幼馴染のジーンにダンジョン捜索の話を持ち掛けた。お城の騎士に試験を受けに来いと誘われてからジーンは、毎日素振りを欠かせずして鍛錬していた。


 「ジーンが村一番、強いからだよ」

ルルンが王都へ行ってしまったので、この村で一番強いのはジーンだ。僕にはわかる。

 伝えるとジーンは真っ赤になって照れた。

「そっかぁ? そこまで言うなら付き合ってやるよ! しゃーねえな!」

 まんざらでもなかった。それに、魔物を倒す訓練をしておいたほうが経験になるし、レベルも上がる。ジーンには強くなってほしい。


 「レベルの低い魔物たちばかりだから、腕ならしにいいし魔物を倒す経験になるよ」

 「そうだな! 支度してくる! マオも準備してこい!」

良かった。やる気になってる。僕も戦闘能力を少しでもいいから上げたい。僕が扱いやすい軽い剣を持ってこよう。装備もちゃんとして、と。


 父と母にも伝えておく。

 「村おこしになるかもしれないから、洞窟をこれからジーンと調べて安全確認してくる!」

 父と母は驚いたけれど、村のためになるならと賛成してくれた。武器防具職人の父の特製の簡易な胸当てと腕あて、盾と軽くて細いレイピアを貸してくれた。

 「ありがとう!」

 防御力が上がった! と思う。

 「気を付けて!」

準備をしっかりして、父と母に見送られジーンとの待ち合わせの場所へ向かった。




 「来たか」

 ジーンは僕と同じく簡易な胸当てと腕あてを装備していた。剣だけがジーンは両手剣だった。

 「装備したジーンを見たのは、初めてかもしれない」

「お前もな!」

この辺境の村は魔物には気をつけなければならないけれど、平和でのんびりしていて武器や防具を使うことは稀だ。なのでお互いに武器防具を装備をしているのを見るのは初めてだった。


 「じゃ、洞窟ダンジョン探検出発しよう」

「おう」

 二人、慣れた森の中へ入っていく。村の人達がという境界線しるしを超えて、奥へと向かう。


 「しかし。よく洞窟なんて見つけたな? 村の歴史は古いみたいだけど、村のじいさんやばあさんからそんな洞窟なんてのは聞いたことないぞ」

 村に伝わる話はいくつかある。それは先人たちから口頭で伝えられて、次の世代へと受け継がれていく。

 村のおじいさん、おばあさんは誰よりも知恵を持っているので尊敬されている。その知恵で、危機を逃れたことが歴史的に多々あるらしい。


 「そうだね……。薬草を取りに来て、偶然見つけたんだよ」

僕はなんて言ったらいいか悩んだけれど……。きっかけはどうであれ、偶然は間違いのない。


 ケルベロスの歩いたあとが、細い道になって迷わず行けるようになった。

「うわ。だいぶ森の奥だな」

 ジーンは額に汗をかいていた。僕は慣れた道だったのかそんなに疲れてない。


 「ここだよ」

しばらく歩いて洞窟の入り口前に着いた。ジーンは、入り口が見つけられないみたいでキョロキョロ辺りを見ていた。もしかしてケルベロスが、結界を張っていたのかもしれない。僕は垂れ下がった葉っぱや長い蔓をカーテンのように除けた。

 「うお! 本当に洞窟があった! すげえ!」

洞窟ダンジョンが現れてジーンは興奮していた。


 今、気が付いたけどここまで鎧とかつけないで来て、ここで着替えたほうがいい気がした。着替える場所、小屋が必要かも、と僕は考えた。――とすると、入る前の入場料兼使用料を回収するのに、この辺に建物を建てて……。

 「マオ、行くぞ」

考え事してジーンに置いて行かれるところだった。

 「は――い」

 僕は速足でジーンについて行った。


 あらかじめケルベロス親子には、姿を現さないように言い聞かせてた。いきなりラスボスケルベロスが出てきたら大騒ぎになる。


 ケケケ……。ケケ。

入り口から洞窟の奥まで進んでいくと、大キノコの魔物がたくさんいて、不気味な笑い声を出していた。

「うわぁ……。たくさんいる……」

ここは湿っているから、増殖しやすいかもな。低レベルの魔物とはいえ魔物だ。気を付けていかないとケガをする。

 「行くぞ、マオ」

「おう!」


 僕の弱い闘争心を燃やして、大キノコに向かっていった。

「俺は負けない!」

ジーンの大剣が大キノコを引き裂いた!

 「えい!」

 ズシュッ! 僕のレイピアが大キノコの胴体を突き刺し、倒した。


 「いいぞ! マオ! 意外とやるじゃないか!」

ジーンは周りにいる大キノコをなぎ倒して、僕に言った。

 「ジーンはさすが、強いね!」

 このジーンの強さなら安心して進めそう。無理なく行けそうだ。僕も大丈夫そうだ。


 ケケケケ……! 不気味な鳴き声が洞窟内に響いてる。

でも洞窟に入った時よりだいぶ数が減ってきた。倒しながら進んでいくと、地下へ降りる階段が見えてきた。

 「地下へ降りられるか? マオ」

少し息が切れただけのジーンは、僕に気遣いができるぐらい余裕だ。僕は普段から森に入って獲物を狩ったり、食べられるものを採取したりと歩き回っているから息は切れてなかった。

「平気」

 意外と行けるんだなと、ジーンに驚かれた。


 地上一階は、大キノコの集団がほとんどだったけれども、地下二階はどんな魔物がいるのか謎で慎重に行こうと二人で話をした。


 

 = 地下一階 =

 地上一階は外からの地続きで湿っているものの、すぐ引き返せば戻れる安心感があった。

 地下へと続く階段を降りていくと、固いゴツゴツした岩が大小並ぶ景色に変わった。ここで本当に、ダンジョンに入ったのだと気が引き締まった。


 広さはどのくらいだろう? 生き物の気配はするから、呼吸は大丈夫そうだ。

上を見ると天井は高く、コウモリが逆さにぶら下がっている。

 地上一階は、大キノコの魔物がいた。地下一階は何がいるのだろう。


 「俺が先に行く」

おお! さすが騎士になることが目標なだけはある。いいね!


 ジーンは腰を低くして進んでいく。傾斜があったり、少し登っていくような坂もあった。岩は大きいのでも僕の胸ぐらいなので、見通しは良い。地形と出現した魔物を覚えておかなくてはいけない。


 「マオ! 魔物が出たぞ!」

はっ!? ジーンのかけ声で気が付いた。

 「ボーっとするな! やられるぞ!」

「ご、ごめん!」

 いけない! 集中しないと!


 僕はレイピアを構えた。盾は左腕に着ける、父の特製の小さな盾だ。小柄の僕に合わせて作ってくれたようだ。


 カサカサカサ! 乾いた地面を動く、音がする。これは……。

「マオ! 大ゴミムシダマシ だ! 気をつけろ!」


 人の倍くらいの大きな昆虫が、警戒しながらこちらへ向かってきた!


 

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