第18話 狂気の囁き

 昼休みに入って──


 ──愛乃わたしはひとけのない階段の踊り場で、イヤホンをしながら「あのチャンネル」を開いてしまいました。


 もう見るのはやめようと思って、更新通知もオフにしていたのに……やはり、気になって仕方がありません……!


「やっぱり、更新されてる……」


 画面にはあのシルエット。モザイク越しでも見慣れた制服がわたしの不安を煽ります。


 そして彼女は言っていました。


「……誰にも渡さない」


「わたしだけを見ていればいいのに」


「他の女と親しくしているなんて……」


「絶対に許さないわ……絶対に」


 そんな狂気じみた台詞が漏れ聞こえるたび、心臓がきゅっと締め付けられる思いです。


「これ……本気で言ってるんですか……? ルリ先輩……」


 もはや頭を抱えたくなります。まさかここまで過激な発言をするなんて……


 下手をしたら、ルリ先輩が包丁を鞄に忍ばせているとすら思えてきます。この動画の台詞は、それほどまでに鬼気迫っていました……


 だからルリ先輩の意中の相手が、颯太先輩だとしたら……


 わたしは思わず立ち上がります。


いてもたってもいられなくなったのです。


(我慢できない。せめてこの動画は、颯太先輩には伝えないと……!)


 もう、ルリ先輩のプライベートを気遣っている場合ではないでしょう。


 ルリ先輩が実力行使に出る前に……わたしは走り出しました。

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