第3章ー2 トキの透かし模様

     1


 錆びた鉄のにおい。

 暗い。

 寒い。

 眼が慣れるまで時間がかかりそうだ。

 身体が重い。

 椅子に座らされているようだ。

 椅子?

 脚を縛られて、腕は肘掛に固定。

 右の太ももが異様に痛い。

 そこだけズボンの色が濃くなっている。

 血だ。

「眼ェ覚めたかよ」男の声が降ってきた。

 狭い部屋なのか、声がしぼんで消えた。

「何しに来たんだよ」

 左頬に刃物が突きつけられている。

 おそらくそれで太ももを刺した。

「お前が椅子野郎か」

「んだよ、椅子野郎って」男は後ろに立っているので姿が見えない。

 刃物が頬に触れた。

 切れたかもしれない。

「殺しはしねえよ。椅子の紋様を描かねえと」

「さっき転がってた遺体は」

「用なしだから捨てた。お前も用なくなったら捨ててやっから」

 やっと耳が正常になってきた。

 啜り声が聞こえる。

 眼も慣れ始めている。

 男が裸電球を付けた。

 狭い空間に椅子が並んでおり、三つ隣に20代くらいの女性が。

 その二つ隣に10代くらいの少女が座らされていた。

 よく見えないが同じ状態だろう。

 どこかに傷を負わされ、椅子に拘束されている。

「おにい、ちゃん。おねがい、いえに、いえにかえし」泣いている少女が言う。

「うるせえなあ。めそめそしてっと口利けなくするぞ」

「おといれ、おしっこ。ねえ、おにいちゃん」

「あー、もー、うっせえなあ」男は椅子ごと少女を部屋の外に連れて行った。

 静かになる。

「あの、私、苅狛カルコマと言います」20代くらいの女性が喋った。ヒソヒソ声で。「昨日からここに連れて来られて」

「ああ、俺は陣内だ。さっき襲われた」

「みたいですね。引きずられてくるところ見ました」

「怪我してるのか」

「はい、脚に」

 パンツスーツのスラックスが黒く染まっているのが見えた。

 まず脚を刺すのか。逃げられないように。逃げるのに難儀するように。

「陣内さんと入れ違いで捨てられた人がいたんですけど、あの人が済んだので次は私か」

 悲鳴。

 少女が泣き喚いている。

 逃げようとしたのを椅子野郎に見つかって暴力を受けている。

「助ける義理はないですけど、気分が悪いですよね」苅狛が言う。

 この状況で善も悪もない。が、可能なら助けてやりたいと思う自分もいて。

「おい、椅子野郎。話がある」でかい声を張り上げている自分がいた。

 椅子野郎が椅子を担いで戻ってきた。

 少女を椅子ごと乱暴に床に捨てた。

「お前は最後にしようと思ったが、順番早めてもいいんだがな」

「椅子に模様を描くだけならこんなことしなくたっていいだろ」

「やり方に意味があるんだよ。お前にはわからねえと思うがな」

「俺とそこの女二人を逃がしてくれたらお前のことは何も言わないし、黙ってる」

「交渉できると思ってんのか? お前らは捕まった時点でただの塗料なんだよ」

 平行線だ。

 でもなんとかしないと。

 少女が泣いている。高い声が耳に障る。

「ほどいて」苅狛が強気に言う。

「は?」椅子野郎がびっくりして変な声になった。

「ほどきなさい」

 椅子野郎が苅狛に臆したのか、縄を解いた。

 苅狛は自分の手首の縄の痕を一瞥してゆっくり立ち上がる。床に屈んで少女に優しく語りかける。なんと話しかけたのか聞こえなかったが、少女が瞬く間に泣きやんだ。

 少女の大きな眼が苅狛を追っている。

「縛るなら縛りなさい」苅狛が椅子野郎に命令する。

「いや」椅子野郎の眼線が覚束ない。

「もういいよ。選手交代しよっか?」苅狛が鈴が鳴るような声で言うと。

 椅子野郎が表情を固まらせたまま椅子に座った。

 苅狛が慣れた手つきで、先ほどまで自分を拘束していた縄で椅子野郎を椅子に括りつける。

 なにが、

 起こっている?

「陣内さん、椅子野郎は私」苅狛が俺の鼻すれすれの距離で微笑む。「飽きちゃったから、拾ってきた塗料と役割交代してただけ」

 とすると、さっき少女に言ったのは脅しの言葉か。

 少女を椅子ごと起こして、苅狛が少女を後ろから抱き締める。

「順番変えられたくなかったら大人しくしようね、わたし」

 身長155センチほど。セミロングの茶髪は肩に付くかどうかすれすれの長さ。OLのようなスーツを着ていたが、その格好すら俺を騙すための演出だったらしい。

「狙いは椅子に模様を付けるだけか」

「だけ、て何? さっきもそんなようなこと言ってたけど」苅狛が少女の長い髪を弄びながら言う。「綺麗でしょ。赤黒い鉄で色を付けるの。誰にも真似できない。誰もやってない」

「遺体をそこら辺に捨てるから足が付いてる」

「そんなの知らない。塗料の容器がどうなろうと。ビャクローが好きにしてるだけだし」

 ビャクロー。

「ビャクロー! いんなら出てこい。さっさとやめさせろ」

 あひゃひゃひゃひゃひゃ。

 不気味な高笑いが狭い空間に満ちた。

 姿は見えないが、向こうからこちらは見えている。

「ビャクロー!」

「知り合い? へえ、じゃあ私にしか見えない魔法使いってわけじゃないんだ」

 なんとかしないと。

 なんとか逃げる方法は。

「さーて、次は」苅狛が少女の椅子から離れて、椅子野郎をやらされていた男に近づく。「動かないでね?」

 刃渡りの大きな刃物で男の股間を刺した。

 手元は躊躇いなかった。

 男が声にならない悲鳴を上げる。

「あーあ、怖くって縮こまっちゃってるじゃん。ほら、これ見せてあげるからでっかくしてご覧よ」苅狛がブラウスのボタンを開けて胸を露出した。「見たことないでしょ? あんたみたいな童貞。最期の最後だからよく見ときなさいよ? 一生かかったって見れないものがここにあるんだから」

 男は痛みで泣いていた。しゃくり上げて肩で息をしている。

「お、いいじゃん。大きくなってきたよ。生存本能ってやつ? あ、いいこと考えた」女が刃物を床に置いて、スラックスを脱いだ。下着姿が露わになる。「これはどう? もっと見たことないんじゃない?」と言いながら、下着を脱いだ。

「いいじゃんいいじゃん。破裂しそう。じゃあこれご褒美ね」

 脱いだ下着を丸めて男の口にねじ込むと、男の股と股の間に座った。

「ほら、ここ、挿れてみたいでしょ? もうちょっと。あと1センチ。触っちゃいそう。キスしちゃいそう」

 少女の眼と耳を塞いでやりたかったが、このあともっとまずいことになる。

「だけど、ダメー!!」苅狛がひと際楽しそうな声で、刃物を男の股間に振り落とした。

 竿か玉かどちらかが切り落とされたか串刺しになったのだろう。

 男が天を仰いで気を失った。

「あ、すごい。すごい。模様が、紋様が」苅狛が自分の股の間を凝視している。「綺麗。べちゃべちゃ。やっと第一号できたー。ビャクロー、これ、捨ててきて~」

「あいよ」ビャクローがどこからともなく飛び降りてきて、男の遺体を担いで跳んで行った。

 この間数秒足らず。

「男はこの方法がいいかも。うん、決めた」血まみれの苅狛が俺を見てにっこり笑う。「陣内さん、次の次ね」

 少女がひ、と小さい悲鳴を上げて椅子を揺らした。

「うん、よくわかったね。次はわたしちゃん。お名前は?」

 少女が首を振る。

「お名前。言えないの?」苅狛は床の隅にあったランドセルをがさごそと漁る。名前の書いたノートを見つけた。「エリザちゃん。へえ、かわいいね。エリザちゃん」

 少女――エリザが首を振る。再び泣いていた。

「すぐに殺さないよ。ちょっと休憩ね、エリザちゃん」苅狛がエリザの隣の椅子に腰掛ける。「お腹すいちゃった。陣内さん、ちょっと荷物持ち」

 苅狛は俺の拘束を解いて立たせた。「運転できる?」

「免許がない」

 苅狛はタオルで適当に血をぬぐって、上下黒のスウェット姿に着替えた。

「うそぉ。じゃあ自転車は?」

「しばらく乗ってない」

「うーん、私一人のほうが早いか」

 思った通りトラックの荷台だった。

 後ろの扉を開けて外に出る。

 足がぬかるんだ。

 山の中。森の中。

 脚が痛い。

 とりあえず止血をした。

「陣内さん、私を捕まえに来たんでしょ?」苅狛が悪戯っぽく言う。

 電波が届かない。

 時刻は、

 12時。

 外が明るいだけマシだった。

「捕まらないよ。最高の椅子を作るまでは」

「お前、ニンゲンで椅子を作るつもりはないか」

 苅狛がドングリのような眼をぱちくりとさせた。














     2


 家具屋敷。

 生きたニンゲンを家具にしてできている屋敷があると聞く。

 行ったことはない。

 ベイ=ジンの別荘のうちの一つ。

 人形アーティスト・燕薊幽エンケイユウのもう一つの名義。

 人体アーティスト。

 ホンモノのニンゲンを使って芸術作品を作る。

 アングラな界隈では知らない者はいない。

 それを苅狛に話した。

「え、すっごい。すごい。それいい。それやりたい」苅狛は前のめりに賛成した。「ビャクロー。塗料、じゃない。材料が足りない。持ってきて」

「あいよ」

 ビャクローは二つ返事でニンゲンを攫いに行った。

 なぜビャクローは、苅狛に協力しているのか。

 少女は苅狛の買ってきた弁当を食べて、トイレにも行けて(森の中でしただけだが)、椅子に拘束されたまますやすやと眠ってしまった。

 暢気なのか肝が太いのか慣れたのか。

「ねえねえ、陣内さん。椅子ってのはあの有名な小説みたいな感じ?」

「いや、背もたれが脚で、こう、逆さになってたはずだ。まともな奴は血が上っておかしくなる」

「え、でもそうすると腕が邪魔じゃん」

「切りゃいい」

「ああ、そっか。でも肘掛にしてもいっかな~」

 すっかり味方扱いになり、拘束も解かれて自由の身になった。

 これで警察が見つけてくれれば恩の字なんだが。

 14時。

 ケータイのバッテリィ残量が心許ない。

「ねえ、陣内さんて悪い人でしょ?」苅狛が椅子の背もたれに抱きついた姿勢で言う。

「なんでそうなる」

「だって、私にそんないいこと教えちゃって」

「乗ってくれるかどうかは賭けだった」

「乗るに決まってるじゃん。そんな最高なこと」

 ビャクローが若い男を二人攫ってきた。

 気を失わせて(ビャクローがやった)、その隙にに取りかかった。

 男の服を剥いで全裸にした。

 椅子に逆さに固定して完成?

「え、これだけ?」苅狛が言う。「殺さなくていいの?」

「言ったろ。生きたニンゲンを遣うって」

 小柄なほうの男が先に眼を覚まして暴れた。といっても拘束されているので椅子が倒れるくらいのささやかな反乱だった。

 ひょろ長いほうの男も眼を覚まして同じ状況になった。

 苅狛が、倒れた椅子を見下ろす。

「あなたたちには、このまま椅子になってもらいます」

 男たちが口々に反論を唱えたが何の意味もない。

 うるさいのが気に触ったのか、苅狛は男の口をピンポン玉で塞いだ。

 そのあとビャクローが続々と男を攫ってきた。

 同じ要領で苅狛が男たちを椅子にしていった。

 全部で、

 7脚。

 トラックの荷台に7脚の椅子が並べられている。

 男が椅子に拘束されたまま逆さ吊りにされている。

「これでおーけー?」苅狛が俺に言う。

 どうだったかな。

 作り方まではさすがに知らない。













     3


 9時。

 探偵の家はもぬけの殻。

 俺が来る前に出掛けたのは明白だ。

 ケータイも通じない。

 向こうが無視しているのだろう。

 この分だと次のご遺体に遭遇して犯人とかち合って何かピンチな状況になっているに違いない。

 北浦和署。

 佐林に現状を伝えた。

「群馬県警と協力して車両の追跡をしているところです」佐林は、余計な手間を増やしやがってと思っているが敢えて言わなかった。そんな表情を押し隠していた。

 探偵のケータイは電波が届かないところにあるか、という例のアナウンスがただ繰り返されるだけ。

 ということは。

 最初は自主的にいなくなったが、やはり犯人に遭遇して、ケータイの電波が届かない山奥にいる。ということにならないだろうか。

 俺が単独で探しに行くわけにいかないので、捜査本部の動向を見守った。

 不審なトラックを見かけたという目撃情報が入った。

 不審な二人組がコンビニに買い物に来たという情報。

 若い女と、身長2メートルはあろうかという男の連れ合いが。

 ん?

 たぶん、

 その2メートル。

 探偵じゃないだろうか。















     4


 トラックを置いて山を降りることにした。

 椅子ができるまで時間がかかると適当なことを伝えたからだ。

「ねえ、探偵さん。デート。デートしたくない?」苅狛が無理矢理腕を組んでくる。

 16時。

 早くしないと日が落ちる。

「山降りたらな」

「エッチもしようね?」

 それはない。

 ビャクローはどこぞへ消えたし、エリザは眠ったまま。

 麓のコンビニの裏を通って、苅狛があらかじめ用意していた白い軽自動車に乗る。

「運転できないとモテないよ~」苅狛が運転席で言う。

「運転する奴がいるからいい」

「彼女にさせるの?」

「運転が好きなんだ」

「へえ~」

 高速道路沿いのラブホに入った。

 ベッドだけの簡素な部屋だがシャワーと屋根があるだけいいだろう。

 食べ物は行きすがら調達した。それを適当に腹に入れた。

 さて。

 ここからが問題だが。

「えっち。えっちしよ!」苅狛が抱きついてきた。

 ベッドの安いスプリングが軋んだ。

「先に言っとけばよかったし怒らないでほしいんだが」

「なに? 彼女いるって話でしょ? 私気にしないよ」

 ベッドの上に俺。

 その上に苅狛。

 落ち着かない。

「彼女はいない。なぜか。女に興味がないからだ」

「え、ゲイってこと?」苅狛が距離を取った。

「まあ、有り体に言えばそうなる」

「マジ?」

「殺さないでくれると有難い」

「殺しはしないけど、ちょっと怒ったかな」苅狛が俺の股間の上に座る。「やってみたら変わるんじゃない?」

「やってみろ」

 苅狛があの手この手で俺を奮い勃たせようと頑張ったがそんなことはやる前からわかっていたことで。

「え~~~、なんで~~~~~」と苅狛が情けない悲鳴を上げるだけ。「単にイ○ポなだけじゃないの?」

「確かに最近やってないからそれもあり得る」

「なんでよ~~~。全然面白くない~~~。えっちしたい~~~~」

 先に寝るか。

「寝ないでーーーー」

 つねられた。

 股間を。

「痛いな」

「ビャクローは虎だから駄目だって言うし、椅子は椅子だからできないし。もおおおおおおおお」

 寝るか。

 朝。

 ベッドごと縄でぐるぐる巻きにされていた。

 店員が来て助けてくれた。

 110番もできた。

 やってきた群馬県警と埼玉県警と鬼立に事情を話した。

 犯人にやられたのだと。

 部屋に苅狛の指紋がべったり残っていたのでお手柄ではあったが。

「本当の本当か?」鬼立だけは信じてくれなかった。「俺のいないところで愉しんでなかったか?」

「何の怨みだよ」















     5


 そこからは割と簡単に逮捕に結びついた。

 苅狛カルコマ似吹にすい。24歳。バイトを転々としていた。定職なし。

 犯人の年齢こそ当たっていたが、性別が誤っていたことで、佐林の信用がガタ落ちた。

 どうでもいい。

 だって、俺は。

 探偵を名乗った覚えはないんだから。

 しかし、椅子作成中のトラックが見つからない。

 苅狛がうまいこと隠したのだろう。

 最初の老人と俺が遭遇した遺体を含めれば、被害者は10人。

 なかなかの数だ。

 内、7脚は作成中で行方不明。エリザという少女も行方不明。

 ビャクローもどこぞへ消えてしまった。

 俺の足の怪我は大したことなかった。

 すでに血も止まっていたので病院で傷を見てもらっただけだった。

 一週間後。

 早期解決のため、鬼立のデートが予定通り実行になった。

 余計なことをしたとしか思えない。

 姉貴のときみたいにこっそり付いていった。

 17時。

 小柄で可愛い感じの女が鬼立の車から降りてきた。

 助手席そこはお前の席じゃない。

 動物園を軽く回って、イルミネーションへ。

 女の眼がキラキラ輝いている。

 ライトが反射しているだけか。

 鬼立も満更でもなさそうだし。

「よ、ちーろちゃん」ビャクローが真っ白いコートをひらひらさせながら立っていた。

 寒い。

 そうだった。

 ようやく温度感覚を取り戻した。

 風が冷たいので体感温度がかなり低い。

「どこ行ってたんだよ」

「どこって、俺はいたいところにいるし、いたくないとこにはいないの」

 ビャクローは身長180センチ。長い白髪。白を基調とした衣裳。

 スタイルと顔がいいので何かの撮影かと思われている。すれ違う女がビャクローを見つめている。

 写真を撮らせてほしいという女までいるが、そのたびにビャクローが適当な言い訳をして断っていた。

「おうおう、荒んでんね」ビャクローが女をかわしてからカラカラと笑う。

「うるさい。お前こそなんで捕まってないんだ」

「ビャクロー」足元から声がした。少女の声。「寒い」

 見覚えがありすぎた。

 トラックの中につかまっていた少女――エリザだ。

「は?」

「エリザってのは世を忍ぶ仮の名前よ。今回のゲングウってわけ」

 ゲングウというのは、ベイ=ジンの跡継ぎの名前。

 今回の、というのは、血が濃すぎて長生きができない。

「は? なに、お前、どこまで」

「どこまでもそこまでもねえわけよ」ビャクローが言う。「椅子はこっちで有効活用してるから安心しなよ」

 なるほど。

 見つからないわけだ。

 作るだけ作らされてあとは盗られたわけか。

「じゃああの女怒ってねえのかよ」

「怒りまくって俺のことくっちゃべってんじゃねえの? 見つかるわけねえけど」ビャクローが軽く嗤った。「んじゃあなー、寒がってるから帰るわ。そっちもストーカ頑張っちゃって?」

「ストーカじゃない」

 ビャクローがゲングウ(エリザ)の手をつないで歩いていった。

 背中を見送ってたら鬼立を見失った。

 俺も帰るか。

 寒いわ。
















     E


 騙された。

 騙された騙された騙された。

 椅子に紋様を付けたかっただけなのに。

 綺麗な椅子を作りたかっただけなのに。

 なんで。

 私だけが悪いみたい。

 だって徘徊糞尿もらしジジイと、私を襲おうとしたスケベ男が死んだだけでしょ?

 私は被害者じゃん。

 探偵?

 陣内さんのこと?

 彼だって共犯なのに。

 なんで私だけ捕まらなきゃいけないの?

 おかしい。おかしいおかしい。

「ビャクローって白い男が協力してくれたの!!」

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