第6話

「えっ!? 滝川一益殿が挙兵!?」


 驚いてしまった。

 滝川一益が、羽柴秀吉の領土に侵攻?


「歴史と逆になってるな。いや、秀吉の挑発の結果なのかもしれないな」


「それで、羽柴秀吉様より救援の要請が来ております」


『柴田殿~、助けてちょ 秀吉より』


 さ~て、どうすっかね……。

 滝川一益殿から連絡がないのは、儂に動くなということだと思う。

 ここで、儂がどう動くかで織田家の均衡バランスが決まりそうだ。


 状況を整理すると、秀吉は信雄と手を組んだみたいだ。信長の次男だね。

 信孝は、儂の部下が抑えているので動くことはないと思う。つうか、尾張に進軍して、信雄を討ってもいいかもしんないな。あいつは、織田家の癌だ。


「信孝は、岐阜。信雄は、尾張・伊賀(三郡)・南伊勢なんだよね。秀吉は、山崎城だし、滝川一益は挟み撃ちにあってしまう。本来は、防衛戦なのに今回は、侵攻か」


 信雄って100万石持ってんだよな。秀吉に資金援助したのかもしれない。

 それに、本来であれば信雄は、次男だから天下人になれる可能性もあった。

 儂ら家臣が、『器じゃない』と言って反対したのもある。


「ダメだね。相当恨まれているよ。それと秀吉も清須会議に参加してんだけどな~。猿(秀吉)は言い出さなかったけど、猿も三方師様を支持したんだよな」


 滝川一益殿も歴戦の猛者だ。

 勝算があるんだろう。

 それと、今は雪の降る時期だ。柴田軍は動かせないな。


 そうなると、計略だ。


「仲裁するか否か……」


「殿! 手出し無用かと」


 高山右近を見る。本来であれば播磨国が領地になるんだけど、今はまだ俺の部下なんだよね。もう未来は分からない。

 キリシタン大名になるのかも不明だ。


「一益殿の居城である北伊勢をさ、信雄が攻めるとさ、ヤバくない? 大事なのは、織田家家臣の均衡バランスなのよ」


「なれば、誰かを安土城に派遣すべきかと。安土城に殿の息のかかった軍勢がいれば、信雄も大人しくしていましょう」


 それも一つの手だな。近畿地方の中央に一軍いるだけで、謀反を防げるかもしれない。織田家は、内乱中といってもいいんだし。

 今上杉家とか毛利家に動かれると、ちょっと困るんだけど、国境の警備より、内乱を警戒しないとね。


「大和の筒井順慶殿にお願いするか。安土城は、光秀軍が略奪してから放置されてんだよね。所領を増やすので復興もお願いしようか」


「殿……。流石です。素晴らしい案です」



 順慶殿が、安土城に入ると信雄は、ピタリと動きを止めた。混乱していそうだ。

 それと、岐阜の信孝に戦の準備をさせる。

 これで信雄は、動かないだろう。博打に出るタイプじゃない。


「後は、一益殿次第かな~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る