🐇🐇🐇06
「昨日さ、焼き鳥の噺をしたよね」
「そうっすよ。それで文章がこうなんっすか?」
文章が不味いという訳か。
美味しくないではなく、毒を孕んでいると。
「身も蓋もないかな。嘘も方便でいくべきか」
「ここでもシマエナガとどないよの突っ込みしているんっすか」
彼が焼いてくれたスナップショットをデスクに広げる。
鷹のような目つきで、さっさっさと五枚選んで渡してくれた。
「桟橋の反対側に白い子が多いっすね。ビジターセンターの近くは茶色の子がよく家族連れで穴掘り生活を楽しんでいるけど、浜近くの白い方は定住はあまりしないようっす」
彼は検察人側に立ったのか。
私は弁護人かな。
違う。
検察側の証人になったのだろう。
「ははは……。今日の毒づいた文章は没にしようかしら」
「駄目出しはしていませんって。うさぎの特徴で毛並みも大切なのは分かります。ただ、島は家兎も混ざっていることを子ども達にも分かりやすくコラムで訴えて、飼えなくなったら島流しでいいのか考えてほしいと思うんっすよ」
首肯するしかない正論だ。
「そうね。環境保全の前に人々の意識改革も必要だわ」
幾つかのビジターセンターのデータを見ていた。
入館者数の推移が多い日もあるのは自然なことかと看過してきたが、業者もいたかも知れない。
博物館は、敵地を占領する前に敵地を探る目的で作られることもある。
ここが弱点の発信基地となっていたとは、目から鱗だ。
「入島は船賃さえ払っていれば誰でもできるわ。この現状にプラスアルファーを加えようかしら」
「どのように?」
「二日に一便の現状、降りてきた方々へリーフレットをお配りするわ」
稲庭くんが顎を擦った。
元々かれは髭などないが、たくわえたら主に見えそうだ。
少し考えてから口を開く。
「罰則はないんっすよね」
「心の枷ができない人は、無理に罰金などを作っても金さえ払えばしていいんだムードで片付けてしまうから。堂々巡りね」
思えば駐禁でも禁煙でも取り締まっても次から次と虫がくる。
「あのね、乱獲を恐れているの。それも悪戯の色が濃いものを」
「そうっすよ。弱い者はいくらでも虐めたがる奴っているもんです。うさぎはか弱く逃げるだけってそりゃあないっすよ。せめて食べるから狩ったと主張すればいいほうっす。弄ばれて、親うさぎを失った仔うさぎとかどうするんすか」
本当は定点観測して全てのうさぎを確認したい。
呑気なコラムではなく、シビアな記事に啓発される人はいないものか。
「今度から動きを変えるわ」
――07へ続きます。
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