冷徹な態度をとってくる幼馴染に『セフレになってくれ』とダメ元で頼んでみた
髙橋リン
第1話 セフレができてしまった
童貞……異性と肉体関係を持ったことがなく、性行為を経験していない男性を指す言葉である。
ズボンのポケットに手を入れて、学校に向かって歩いている俺――
だけど、彼女を作ってデートをしたりキスをしたりする……そんなものに興味はない。
俺が求めているのは――性行為、それだけだ!
童貞を卒業してもおかしくはない年齢だし、思春期の時期だから性に目覚めるのも当然のことである。逆にそうでないとおかしいのではないかと思ってしまう。
つうわけで、俺は性行為をする相手を考えたわけだが……せっかくするなら、それなりに顔が可愛くて貧乳ではない女がいいと思った。
そんな奴がいるのかと思うだろうが……いるッ!
艶のある白髪にショートカット、端正な顔立ちでつぶらな瞳……おっぱいの大きさはC~Dと思われる女――幼馴染の
家は近所で幼稚園の頃から付き合いのある幼馴染……なのだが、一つだけ問題点がある。
それは――俺に冷徹な態度をとってくることだ。
中学を卒業するまでは明るい性格で、俺に接してきていたのに……同じ高校で同じクラスになってから態度が急変した。明るい性格だったはずの梨湖が、なぜか俺にだけ冷徹な態度をとってくるのだ。
『気軽に話しかけてこないで』とか『ジロジロ見てこないでよ、キッモ』って言うんだよ~! ひどくない? ねぇ、ひどいよね!?
どうして梨湖がそんな態度を俺にだけしてくるのか分からない。梨湖に嫌われるようなことをしたりはしていないはずなんだが……。
んー、分からん。
本題に戻るが、俺はそんな冷徹な態度をとってくる幼馴染と性行為をしたいと思っている。
どうしてわざわざ冷徹な態度をとってくる幼馴染と性行為をしたいと思っているのかって?
答えは簡単――俺が性行為をしたい女性のタイプと一致しているからだ。
それなりに顔が可愛くて、貧乳ではない女……学校内で探したが、梨湖以外にはいなかった! ブサイクで貧乳ではない女はたくさんいたけど……。
つうわけで、本日……俺は梨湖にダメ元で頼んでみようと思う。
☆★☆★
学校に着いた俺は、下駄箱で上履きに履き替えると……教室に入り、自分の席へと着いた。
梨湖とは席が隣同士で、すでに梨湖は席に座って本を読んでいる。
なんとなくわかる、なんとなくわかるぞ……声をかけたら、まず第一声が『気軽に話しかけてこないで』とかだろうな~。
俺は深呼吸をすると、梨湖に声をかける。
「なあ、梨湖……」
声をかけると、梨湖は鷹のような鋭い目つきで見てきた。
「何? 気軽に話しかけてこないでくれる」
ほ~ら、やっぱり思った通りじゃ~ん。
梨湖は分からないと思うけど、言われた方はとっても心にグサリとくるんだよ。吐血しそうなぐらいにね。
俺は机の上に肘をつきながら、ため息をつく。
「どうしてそんなこと言うんだよ……悲しいよ、俺」
「あっ、そっ」
「…………ひでぇー」
「何もないなら話しかけてこないでよ」
「何もなくて話しかけるわけねぇだろ」
「じゃあ、何よ? どうせ大したことのないはな――」
俺は梨湖の方を向き、両手を足の上に乗せて真剣な表情で頼んだ。
「セフレになってくれ」
その言葉を聞いた梨湖は、俺の顔を見ながら固まっている。
しばらくの沈黙が続いた後、梨湖は顔を背けた。梨湖の表情が見えない俺は、首を傾げる。すると、梨湖がスマホをポケットから取り出して何かをしている。
「ん? 梨湖?」
梨湖は顔を背けたまま、スマホを見せつけてきた。
そこにはこう書かれていた。
『昼休み、学校の屋上に来て』
どんなことを言われるのか分からないが、言われた通りにするしかない。
俺は右手の親指を立てる。
「りょーかい」
☆★☆★
昼休みになり、俺は梨湖と一緒に学校の屋上に来た。
学校の屋上には初めて来たけど……なんというか、悪くないな。太陽の光を浴びながら飯を食べたら最高なんじゃないか? 今度やってみようかな……。
梨湖は古びたベンチに座ったので、俺も隣に座る。
なんて言われるのか不安だな~。ダメ元で頼んでいるから、拒否されるのは想定内だけど……それよりも怖いのは、梨湖に罵詈雑言を浴びせられることだ。
昼休みが終わるまで、ずーと罵詈雑言を浴びせられる……一種の拷問だな。
まあ、分かっているよ。梨湖が俺の頼みを聞いてくれないことぐらい。俺が梨湖の立場だったら、絶対に断るし……。
俺にはまだ早すぎたのかもしれない。童貞を卒業するために幼馴染とヤレばなんて……そんなに物事がうまくいくはずがない。現実はそんなに甘くない。
断られるのが目に見えてわかる。
だから、俺は決めた。
今、そうすることにした。
――梨湖と関わるのはもうやめると。
梨湖からしたら、俺はウザい奴だと認識されているだろう。そんな奴と一緒に居たくないし、話したくもないよな。こんな俺だけど、梨湖の気持ちを少しは分かっているはずだ。
つうわけで、これが最後の会話になるだろうなぁ……。
なんだかあっけないなぁ……人間の死があっけないのも似たようなものなのだろうか? ……おそらくそうだろうなぁ。
梨湖は鷹のような鋭い目つきで、俺のことを見てきて口を開いた。
「どうして私がセフレになんかならないといけないのよ」
「そ……それは……」
正直に話す……しかないけど、なんだか話すのが緊張する!
「ど……どど……童貞を……卒業したい……からです」
「…………」
梨湖は黙って俺のことを見つめてくる。
絶対に怒られるな……これは。分かった、いいよ! なんて言うような空気じゃないし……やっぱりダメかぁ。
「こんなこと言ってごめ――」
「いいよ」
「…………えっ?」
「あんたのセフレになってあげる。理由は……教えない」
「……マジで言ってるの?」
「大マジだけど……何か文句ある?」
あっけなく頼みを聞いてくれたんだけど……嬉しさよりも驚きが勝ち、驚きよりも心配が勝つのだが……。本当にいいのだろうか、俺のセフレになって……。
いや、でも……本人がセフレになってあげると言っているのだから、大丈夫なのだろう。どうして梨湖がセフレになってくれるのかがとっても気になるが……理由は教えないと言っているから、聞けないな。
梨湖はベンチから立ち上がると、俺の方を向いてきたが……鷹のような鋭い目つきではなく、俺の知っている中学時代の優しい目つきへと変わっているのが、すぐに分かった。
「梨湖……」
しかし、すぐに梨湖の目つきは鷹のような鋭い目つきへと変わってしまう。
「今日、19時まで家に誰もいないから……」
「それで?」
「言わなくても分かるでしょ、普通」
「いや、ごめん。分からん」
梨湖はため息をつくと、俺のことを指さしてきた。
「童貞を卒業させてあげるってことよ」
「……マジか」
あまりにも急展開すぎやしませんかねぇー!!
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