第7話 R.I.P.

父は医療に優る産業はないと強く信じている人で、僕達兄弟に医歯薬系の道を選ぶように圧力をかけた。


……ようだが10代後半の兄は親の言いつけに背くことを生き甲斐にしているような少年で、高校では文理選択の際にあっさりと文系に進んだ。

僕に至ってはナチュラルボーン無神経なのでそんな駆け引きがあったとは気付きもせず、自分で選んだ大学を勝手に受験して自分のために合格した。

なお、経済学部だ。


姉だけが、親の思惑通り薬剤師になった。


自由気ままに生きている兄。

中学受験に失敗したため親の思い描くキャリアパスから早々に脱落した弟。

自分だけでも親を喜ばせなければ……という忖度が姉の脳内にあったのかも知れない。

そのために姉は将来の夢を捻じ曲げたのだった。


3人も兄弟がいたのに彼女が独りで親の期待を背負い、薬剤師になる前は猛勉強、その前はヤングケアラー、


姉のための時代は無かった。



兄は仕方ないとして、僕が父を満足させていれば、姉がハズレを自ら選ぶ必要はなかった。

姉が部活を休んで家事をしなければいけなかったのも僕が当時まだ幼かったからだ。

僕が姉の足を引っ張り続けた。



僕なんて産まなければよかったのではないか。


だいたい、死ぬべきは僕なのだ。

姉には、早すぎる死を悲しんでくれる人が大勢いる。

僕にはいない。


そもそも父も母もろくに躾をしなかった。

母なんて母親の役目をまるで果たさなかった。


育てられんなら産むなダボゴルァと、


無計画に3人も産みやがってタコ親がと、


心の中で中指を立てていた。

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