第30話 月見星乃の作戦
「……星乃、作戦会議を始めよう」
放課後、スタバーで新作のフラペチーノを飲んでいると美鈴が神妙な面持ちで話し始めた。
「作戦会議?」
「……そう、この件について」
そこには『入江・涼くんと放課後ボーリング』と書いてある。
「ああ、確か行くって言ってたっけ……」
「そう……入江、嬉しそうに言ってた」
……なんでそんな悔しそうな顔をしてるのだろう。
ちなみに入江とひよりは今日、神藤と綾部さんと4人でご飯を食べに行くらしいのでここにはいない。
「別にいいんじゃない? あいつもたまには男子同士で遊びに行った方が息抜きになるだろうし」
「別にそれはいい。問題は……このボーリング大会。他校の女子生徒が参加するということ」
「……あー」
「ひよりが信頼できる情報筋から得てきたから間違いないと思う」
おそらく、木村→神藤→綾部さん→ひより……みたいな感じでしょ。
……入江のプライベート情報ってほんと筒抜けよね。流石にちょっと可哀想になってきた。
「ま、まぁいいんじゃないの? きっと他校の女子には木村に夢中であいつになんて気にかけないー」
「桐藤セナ」
「………………」
「星乃、こっちを見なよ」
「……で、作戦っていうのは?」
「星乃がボーリング大会に参加して他校の女子生徒が入江に近づかないようにべったりとくっつく」
……………………は?
「すでに星乃がボーリング大会に行く手筈は私とひよりで済ませてあるから、よろしく」
「いやいやいや……なんで私が行くことになってるの!? 二人のどっちかが行けばいいでしょ!?」
そもそも本人のいない所で話を進めないで欲しい。
「本当は私が行って他校の女子達を蹴散らしてやりたかったけど、残念ながら私とひよりは家の事情が……星乃はこの日なにも予定ないって言ってた」
ぐ、この前突然予定を聞いてきたのはこの為か……
「い、いや、こんなことしなくても、行かないでって素直に言ったらいいだけでしょ……」
「星乃……そんなワガママ言って入江に嫌われたらどうするの?」
「ほんと張り倒すわよ」
美鈴との作戦会議が終わった数時間後。
私は快適すぎて動けなくなるソファーに座りながらゲームをしていた。
私がやっているのはRPGで親友だと思っていたキャラクターが実は敵幹部だったことが判明して熱いバトルを繰り広げている。
「……はぁ」
親友キャラと戦いながら、美鈴の言っていた『作戦』を思い出し、ため息をつく。
「ただいま〜」
ドアをあける音と共に呑気な声が聞こえてきた。
「あ、月見さん。ただいま」
「……ん」
この家主である入江が帰ってきた。それと同時に今戦っている親友キャラとの決着が無事に着く。
入江もやっているゲームなので気になるのだろう、興味深そうに私のプレイを覗き込んだ。
「え、待って……そのキャラ、敵だったの? 親友だと思ってたのに……」
「結構強かったわよ」
「……俺、今ネタバレされてるんだけど」
「ささっと進めてない入江が悪い」
「はい……」
がくりと肩を下ろしながら、カバンを置きネクタイを緩める入江。
「で、なんで月見さんがここいるの?」
「だって、合鍵もらったし」
「それは、月見さん最近よく家に来るようになったから俺が不在の時も入れるようするのと月見さんのオタクグッズの避難場所としてー」
はっと何かに気が付いたような顔をする。
「……じゃなくて、今ここにいる理由を聞いてるんだけど」
「明日、他校の女子たちと遊ぶのって本当なの?」
私が聞いた瞬間、入江はびくりと肩を震わせた。
これはクロね……間違いない。
「ど、どこからその情報が……共有してるカレンダーには書いていないはずなのに」
「信頼できる情報網から」
「お、俺のプライバシーが」
それは本当にそう。
「……で、本当なの」
「ま、まぁ、本当だけど……」
私の圧を込めた問いかけにビクビクしながら答える入江。
「なに? 彼女でも欲しいの?」
「……そこまでとは言わないけど、新たな出会いを求めて。的な」
「…………ふぅ〜ん。悲惨な結果になりそうだけど」
「大丈夫だよ。女の子を堕とす? テク? みたいなやつを涼くんに教わったし……きっと明日はいい結果になるはず。多分、おそらく、きっと」
それ大丈夫じゃないやつじゃない……
まぁ、私としては悲惨な結果になってくれた方が助かる。あの二人が怖いので。
それにしても、新たな出会い……か。今のこいつには必要ない気がするけど。
まぁいいや。ここにきた目的を果たそう。
こいつをここでボーリング大会に行くのを諦めさせるという目的を。
「やめといた方がいいんじゃない? あんた、ウェーイ系とか陽キャの中の陽キャとか苦手でしょ」
「うっ」
女たらしの木村が集めるメンツならきっとそういう人たちが集まるだろう。それをわかっているのか入江は言葉を詰まらせる。
「ギャルとか性格的に合うはずがないし」
「や、優しいギャルかもしれないしっ」
「そんな幻想は捨てなさい」
「あ、はい……」
「どうせあんたが言ってもウェーイ系イケメン男子の当て馬にされるだけなんじゃない?」
「う、いや……イケメンには興味ないちょっと変わった美少女が来るかも……」
「ないから、絶対」
「……ですよね」
よしよし、声が最初よりも弱々しく、小さくなってる。いい感じに丸め込めてる。
……まぁ、イケメンに興味ないちょっと変わった美少女とかまんま美鈴だけど。
「だから、ここはいっそのこと断ってひよりとか美鈴とー」
「それでも、ボウリング大会には行くよ」
「……なんで」
「せっかく涼くんが誘ってたんだし……それにこの日のために色々と相談とか乗ってくれたしね」
「だ、だったら、他で埋め合わせとかしたらいいんじゃないの? 別に無理してボウリング大会にこだわる必要なんかないでしょ?」
「……月見さん。なんでそんなにこだわるの? もしかして、俺にボウリング大会へ行って欲しくないの?」
「はい? 別にこだわってなんか……」
そう、別にこだわってはいない。ちょっとムキになっているだけだ。
……あれ? なんで私、ムキになってるんだろう。
…………いや、それはきっと作戦が面倒だからだ。そうに違いない。
「まぁいいけど、忠告はしたから」
そんな捨て台詞を言いながら私はリモコンを操作し、ゲームから動画サイトに切り替えた。
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