第11話 推しヒロインの嫉妬?
最寄り駅で芹澤さんと別れ、七瀬からのメッセージに返信していると。
「「……あ」」
まさかの七瀬本人とエンカウントした。
「あ、ぶ、文くん。もうみーちゃんとのデートは終わったんだ?」
手に持っていたスマホを意味もなくいじり、視線をあっちこっちに彷徨わせながら、こちらに近づいてくる七瀬。
「う、うん。ちょうど返事をしようと思ってたんだ…………もしかして、終わりるのずっと待ってくれてた?」
「え、あ、いやっそのっ……た、たまたまね? この近くで一人でショッピングしてて……それで、文くんとみーちゃんが気になったから……れ、連絡してみただけ!」
本当かな? と内心でめちゃくちゃ思ったが、表には出さないことにする。
ショッピングしてた割に両手には何も持っていないけど……きっと買ったものは鞄に入れているんだろう。うん。
「ど、どうだった? みーちゃんとのデート」
「え? あ、ああ……デートではー」
いや、待て。そういえば芹澤さんはプレゼントのことを伏せたいからデートって嘘ついたって言ってたな。であれば……
「うん。楽しかったよ。芹澤さんとのデート」
こう答えるのがベスト。
「……っ、そ、そっか」
え、待て。なんで曇る。
「……な、なにしてたの? デート」
「へ? あ、その。じ、アイス食べたり。し、ショッピングしたり……?」
「……へーなに買ったの?」
え、なんでよりにもよってそんなに深堀りしてくるんだ?
「え、えっと……その……」
「文くん……私に何か隠してない?」
「エッ……」
俺が言葉を詰まらせてると火の玉ストレートの言葉が飛んできた。
動揺した俺を見て、先ほどまであちらこちらに彷徨っていた視線が俺の目を凝視して離さない。
「もしかしてみーちゃんと、何かあった?」
「え……いや」
「……あったんだ」
……タスケテ。
声は変わらない。怒っているわけでもない。でもなぜだろう。空気が重たくなった気がする。
しかし、ここで誕生日プレゼントの存在を匂わせることは出来ない。
『……え、なにあれ。修羅場?』
『めちゃくちゃ彼女に詰められてるじゃん』
どこからか聞こえてくる周りの声。
修羅場……ある意味修羅場かもしれないな。
「私たちって、親友じゃん? だから、文くんの恋愛事情も把握しておきたいな〜なんて……」
え、俺たちって親友だったの? いつの間にそんな関係にランクアップしたんだよ。い、いや……そんなことより、なんか猛烈に勘違いされている気がする。
「……で? なにを隠してるの?」
止まらない追及。そして一向に逸らす気配のない視線。
こんな七瀬ひより、見たことがない。
「……これを、買ってました」
鞄から、先ほど買ったアロマストーンが入ったプレゼント袋を取り出し、七瀬に差し出す。
すいません。芹澤さん。今の七瀬に下手な誤魔化しは悪手な気がするんです。
「……これを?」
七瀬は目をぱちくりさせながらプレゼント袋を眺める。先ほどまでの圧はすっかり消えていた。
「……七瀬の誕生日プレゼント。さっき芹澤さんと買ってたんだ」
「えっ……あ! そっか、そういう……」
察してくれたのか納得したように頷く。
よかった。誤解は完全に解けたみたいだ。
「プレゼントのこと、七瀬にバレるわけにはいかなかったからデートってことにしたんだ」
「そ、そうだったんだ……」
七瀬はそう言いながら、ほっと心から安心した様に胸を撫で下ろす。
その瞬間、七瀬のお腹がくぅと鳴った。
「あ、いやっ、これはっ、そのっ、違うのっ……ずっとここで待ってたから、何も食べてなかったというか、ほ、ほら! 時間も時間だしっ」
余程恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして否定する七瀬。まぁ、この時間だからお腹が空くのは不思議なことでない。
「晩御飯、どこか食べて帰る?」
「!! うんっ……えへへ」
その弾ける様な笑顔に俺は思わず笑みを口に浮かべる。推しヒロインの笑顔は心の栄養剤なのだ。
何を食べるか周りを適当に歩いていると、不意に七瀬が俺の袖をぎゅっと掴んできた。
「どうかした?」
「へ?」
「いや……袖、掴んでるから」
「……え、あ、ほんとだ」
どうやら無意識だったらしく、掴んでいる本人でさえ、困惑していた。しかし、離す気配は一向にない。
「……なんかね、文くんがみーちゃんやほしのんと仲良くなることはすごく嬉しいんだけど……みーちゃんとデートしてるって思うと、すごく気になっちゃって、なんか不安になって……あはは、変だよね……私が文くんをみんなに紹介したのに」
なるほど、俺と芹澤さんが仲良くなることによって芹澤さんが俺に取られるのでないかと不安になったのか。
確かに、紹介した友達が気がついたら自分たち以上に仲良くなっていたら、嬉しいと同時になんか嫌だからな。
「あ、あのさ……文くん。今度はさ、その、私と……一緒に行かない? ショッピング……二人で」
「え? う、うん」
「!! やった。絶対、絶対だからねっ」
「は、はい……」
そんなに念を押さなくても……なんで俺なんかと一緒に行きたいのか。
「……ん」
すっと七瀬は小指を突き出した。
「……指切り、しよ」
「……え、ああ、うん」
少し、戸惑いながらも七瀬との指切りしたあと、彼女は俺の目をじっと見ていった。
「……約束だよ?」
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