第9話 推しヒロインのグループ



「それじゃあ、改めて。こちら入江文学くんこと、文くんです」


「おー……ぱちぱち」


「………………」



 なんやかんやあって七瀬が所属するトップカーストの女友達グループに混じってお昼ご飯を食べることになった。


 なんだろう……この、俺の異物感は。まるで高級フランス料理の中にぶぶ漬けが混ざっているみたいだ。



 月見さんに至っては『なんでここにいるんだテメー』みたいな目でこっち見てるし!!



 最高に今すぐ逃げ出したい。



「……ちょっと、なんでこんなことになってんの」



 隣の月見さんがこちらを非難するような目で囁いた。



「……その、展開の速さについていけなかったというか。流れに身を任せた結果というか、断りきれなかったというか……へたりました。はい」


「……くそざこなめくじ」



 おい、やめろ。そんなセリフを耳元で囁くんじゃない。



「……二人とも、なんか近くない?」


「「別に近くない」」



 七瀬の言葉に対してハモった瞬間、横から月見さんの肘が飛んできた。



「……私、実は前から入江と話がしてみたかった」



 そう呟きながら興味深そうに俺を見つめるのは芹澤美鈴(せりざわみすず)。


 セミロングの美少女で眠そうな目と口数の少なさからどこかミステリアスな雰囲気がある。



「ひよりのスカートを履いて女装する恋愛歴10連敗以上の強者……実に興味深い」



 ちくしょう。両方本当のことだから否定出来ない。



「やっぱ、変態じゃん」


「で、でも文くんはいい変態だから!」



 七瀬さん。何のフォローになってない。



「それにひよりは最近、入江の話ばかりする」


「そ、そうかな?」



 そういえば、さっき月見さんも同じ様なこと言ってたような……



「うん。この前数えたら10回は入江の話をしてた……」


「え……」


「ひより、こいつのこと大好きじゃん」


「ちがっ!! 違います!!」


「だから、ある程度は入江のこと……私たちは知ってる」


「そっか……あれ? だったらもう俺を紹介する必要ないのでは?」


「ひよりは……入江に私たちを紹介したかったんだと思う」


「う……」


 

 見るからに動揺する七瀬。どうやら図星だったみたいだ。



「ほんとはね……これをきっかけに私だけじゃなくて、ほしのんとみーちゃんとも仲良くして欲しかったの」


「それは……どうして?」


「その、文くんが一人ぼっちでいるところを見ると……辛くなるの。それで、ほっとけなくて……」



 だから、このグループに入れる様にセッティングしてくれたのか? 俺がひとりぼっちにならない為に……


 なんか、申し訳なくなってきた。



「そう、だから私たちはひよりの為に一刻も早く絆を深めなければいけない」



 なぜかドヤ顔で力説する芹澤さんに思わず、七瀬の方を見る。



「……そうなの?」


「へ? まぁ、文くんには私達のグループに早く馴染んで欲しいけど」



 なるほど、一応? 芹澤さんの言っていることは正しいらしい。



「だから、入江。今日の放課後……私とデートしよう」


「ああ……うん」



 ……うん?



「……は?」


「……え?」



 七瀬と月見さんが呆然としながら俺たちを見ているなか、芹澤さんは楽しそうに微笑んだ。



「楽しみにしてる……ね」










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