【5話】拾肆巡目 九藤義平(壱)
しかし、大きな転機が訪れる。
桃太郎システムの
九藤義平はわずか八歳、元服前の幼き身ながらも、戦場での実践経験を積むべく、後方支援の部隊に配属される運びとなった。
左腕を失いながらも桃太郎を討ち取った
✤ ꕤ ✤ ꕤ ✤
出陣を二日後に控えた日、九藤義平は正平の厳しくも熱のこもった指導のもと、ひたむきに稽古に打ち込んでいた。
「義平! まだまだだぞ! かかってこい!」
「うおおおぉぉ!」
九藤義平は木刀を両手に構え、兄を目がけて一直線に駆け寄ると、一撃必殺とばかりに勢いよく振り下ろした。しかし、正平は片手でその攻撃をいとも簡単に受け流す。力の勢いをあらぬ方向に持っていかれた九藤義平は態勢を崩し、地面を転がりながら盛大に倒れ込んだ。
「義平、何度言えばわかる。強引な攻撃は隙を生むだけだ。何でも力任せに振り回しては通用せんぞ」
「はい…、分かっているつもりなんですが、どうしても隙が見えると、つい…」
「それは隙ではない。誘われているのだ。見極めを誤るな。相手の真意を見抜く目を養うことは大事だぞ」
正平は非常に面倒見が良く、誰に対しても思いやりを持って接する人物であった。さらに、まだ十七歳の若さであったが、その圧倒的な強さで九藤家の中でもひときわ高く評価され、注目の眼差しを集める存在であった。
しかし、九藤義平にとって、優れた兄である正平の存在は、尊敬の念を持ち合わせるとともに、常に重い影となってのしかかった。周囲から比較される機会も多く、そのたびに焦燥が胸を灼いた。正平が八歳の頃はすでに剣技に光るものを見せており、同じ年齢の九藤義平とは比べものにならぬ腕前であると、周囲から何度も話を聞かされていた。そんな状況にあっても正平は、優しい声で言葉をかける。
「義平、お前は強い。お前には強さの素質がある。いずれ、俺よりも強くなるだろう。ただ、今はそれを会得していないだけだ。心配するな」
「そうでしょうか…? 俺は兄上に追いつける気がまったくしません…。剣の技も、いっこうに上達する気配がないし…」
正平は静かに息を吐き、優しく答える。
「義平、剣技とは何だと思う? 刀を巧みに操ることか? 身体をうまく動かすことか? 確かにそれも大切だ。しかし、剣技の本質は、それらを超えたものだ。心だ、心が最も大切だ。心を強く持つこと、それだけは誰にも負けるな。そして、それは自分の意志で誰よりも強くなれるものだ。心が本当の意味で強くなった時、お前の剣技は圧倒的な力を持つようになるだろう」
「は、はい…」
九藤義平は小さく頷きながら返事をしたものの、兄の正平の言葉が示す真意については、正直なところあまり理解できていなかった。
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