魔術世紀22

@kurokuro11223344

第1話 白紙の本

 魔法、または魔力が世界に広く認知されたのが22世紀。世界中に広まり、現科学での限界点を容易く突破し、人類社会は大きく発展した。


「ここで最初に作られたのが何だ?佐々木答えてみろ」


「魔導変換技術を用いた発電施設、です」


「正解だ、その真面目さを他の科目にも生かしてくれ。魔法関連以外の教科担当全員から定期的にクレームが飛んでくるんだ、頼む・・・」


「が、頑張ります」


「お前らも、もうすぐ一学期が終わるからって油断してるんじゃないだろうな?そんなんじゃぁ2学期初めのテストで痛い目見るぞ。留学するやつも一緒だからな!」


「「はーい」」


―――――――放課後


「佐々木~、今日ラーメン食いに行かね?」


「昨日行ったばっかだろ、それに今日は用事があるんだ」


「ちぇ~いいもん別に、じゃぁ多田達と行くから」


 そう言い若干すねながらその場を去って行った。あいつその内ラーメンそのものになってしまうんじゃないだろうか・・・。


「・・・まぁいいか。本日は行きつけの本屋に新しい本がドッサリ入荷するとのこと、急がねば」


 そうして駆け足で本屋へ向かう。


「おっちゃん!新しいの入ってる!?」


「おう!2階の魔法関連Cコーナーにギッシリとな」


 階段を一段飛ばしで駆け上がり、言われたコーナーに着く。


「めっちゃ入ってるじゃねぇか!!どれどれ~・・・『魔法史――イギリス編』、『The・魔法の手ほどき~中級編』、『イージス・オルビスの憂鬱な魔法生活』、他にも色々入ってる!」


 本屋に入り浸り始めてから30分経過。


「もうこれで終わりか・・・数ある本の中から非常に唆る物が3冊、まぁこんなもんだな。」


『――――――――』


「ん?」


 何か聴こえた。振り返ると、本棚の空きスペースにポツンと一冊置かれている。


「なんだこの本・・・・。え!?全部白紙のページじゃねぇか・・・、これは店長に報告しないとな」


 一階のレジでボーっとしている店長に駆け寄る。


「この本ページ全部白紙だぞ、出版社に抗議の電話入れた方がいいんじゃねぇか?」


「どの本だ?」


「これだよ、めくってもめくっても白!」


「なんもないじゃん、魔法の勉強で頭ぱっぱらぱーになっちまったか?」


「いやここに・・・」


「はいはい、それより買う本決まったか?」


 他の人には見えず俺にだけ見える本・・・。あの後はさっき厳選した3冊を買ってそのまま家に帰った。あの本はとりあえず見えないならいいか、という精神でそのまま持って帰ってしまった。


「色々謎しかないな、全ページ白紙のくせに俺以外は見えない本・・・」


 試しにもう一回開いてみる。本屋の時とは違い、1ページ目に少量何か書かれている。


「『この本視えし者・・・己の力を注げよ・・・』後なんて書いてるかわかんねぇ、英語は多少出来るが筆記体は無理なんだよ・・・」


「己の力を注げよ・・・・己の力、魔力か!?」


 試しに少量魔力を本に注ぐ。すると文字が徐々に浮かび上がり、ページの全てを埋め尽くす。


「おお!なんて書いてるかな・・・・」


 英語・・・じゃないし、筆記体・・・でもない。


「・・・・読めるか!!。だけどびっしりと文字で埋め尽くされてるのを見ると魔導書でもないから別に読めなくても問題なさそうだな」


 次はさっきとは比べ物にならないほどの魔力を注いだ。先ほど同様、文字が浮かび上がりページを埋め尽くす。しかし今回は一気に本の十分の一程のページまで文字が浮かび上がった。


「なるほど、注げば注ぐほどページが完成し、全てのページを埋め尽くした時、何かが起こる。そんな感じだな」


 何かヤバいことがおこるんじゃないかと危惧したが、俺の魔力でそこそこ行けてしまう程度なら別に大したことないなと思った。


 その日は魔力を使い過ぎたのでもう寝ることにした。


―――――次の日


「佐々木~今日も見事に爆睡かましてたな!そんなんで留学先でやれるのか?」


「昨日は結構早く寝たんだけどな、まぁ寝る子は育つって言うしな」


「確かにな。あとお前、留学の準備もうできてるか?イギリスだろ、ピザとか準備しないと」


「「ビザ」な、後ビザは現地で申請するんだ。俺は一年間イギリスの魔術学院に留学するから長期留学というわけだ」


「いつ出国するんだっけ?」


「3日後、会うのは明日で最後だ。寂しいか?」


「一年間かー、お前なら向こうでやらかして強制送還有り得るからな~。」


「・・・俺のことそんな風に見てたのかよ」


「冗談冗談、まぁ帰ってきたら土産話聞かせてくれよ、彼女出来たら言えよ?」


「考えとく」


 何気ない話で大いに盛り上がり、その日は解散した。

  


「・・・さて、じゃぁさっそく・・・注ぐぜ!!」


 惜しみなく、全部ひねり出す。今、俺にある魔力全てを!!。


 「本」に手をかざし、昨日の比ではない量の魔力を注ぐ。ページを文字が埋め尽くし、魔力が注がれる限り次のページ次のページへと写り、埋められていく。


「もうじき底を尽きそうだ・・・いや!・・・まだいける!!。オオオオオオオオオオ!!!」


 注ぎ続けて約10分。自身の残り魔力量約一ミリ(当社調べ)で「本」のページ全ての文字を浮かび上がらせ、埋め尽くした。


「・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・ふーー・・・やはり一筋縄でいくほどやわじゃなかったか・・・」


 とはいえページは全て埋めた、さぁ何が起こる・・・。


 その時、本がひとりでに開いた。そしてページの文字が紙から剥がれ、一本の紐のように部屋の空間の中央に集まりだす。


 剥がれて収束する速度は段々上昇し約5分、最後のページから剥がれ、本が消える。


「一体どうなるんだ・・・・」


 文字の帯が収束し、眩い光を放つ。その光は真夏の空を照らし焦がす太陽よりも強烈な光。俺は両腕で目を守った。


「!!・・・・・・終わったか?」


 光が止み、目を開けてすぐに俺の目に映ったのは、謎の正八面体の体を持つ存在だった。


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