10年前に回帰した元世界最強は、隠しスキル〈共鳴〉と未来知識で無双する ~俺だけ2周目の世界で、ダンジョンを最速攻略していきます~
八又ナガト
第1話 回帰
「くそっ、ここまで、か……」
現在。
全100階層から成るグランドダンジョン――【
そこに現れた強力な
『ルォォォオオオオオオオオ!』
頭上を旋回するのは、この階層のボス『紅玉のオルトドレイク』。
俺を含めた最前線の冒険者二十数名を一蹴した、怪物級の魔物だった。
胸元の火傷痕を抑えながら、俺は朦朧とする意識の中で思考する。
(まずい……俺たちが負けたら、コイツを含めた大量の魔物が地上に氾濫する。そうなったらもう、この世界は終わりだ……)
摩天城の各階層には攻略までの
ダンジョン内の魔物が地上に溢れ出すという地獄のようなシステムが備わっており、それを防ぐために戦ってきた俺たちだったが……結果は見ての通り惨敗だった。
抵抗しようにも、ここからアイツを倒せる手段など存在しない。
そう考えていた直後、
「おい……生きてるか、カナタ……」
隣で俺と同じように横たわる、アメリカダンジョン出身のS級冒険者、ルーカスがそう話しかけてきた。
俺は絞り出すように返事をする。
「なんとかな。だが、残された時間はあまりなさそうだ」
「そうか。ならもう、
「っ、それは……!」
ルーカスが懐から取り出した砂時計を見て、俺は思わず声を上げた。
そうだ。まだこれが残されていた。
俺は改めて、その
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【
・レア度:S
・入手場所:〈
・世界の時間を10年間巻き戻すことができる。
使用者本人のみ、10年前に記憶が引き継がれる。
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この【回帰の砂時計】は、第77階層に存在していた大図書館〈叡智の無限回廊〉にて入手したS級アイテムであり、世界の時間を10年間巻き戻すことができる。
これまでに積み上げてきた全てをなかったことにしてしまうが、もはやこれ以外に残された選択肢はなかった。
「それじゃ、あとは頼んだぞ、ルーカス」
後を託すようにそう告げるも、なぜかルーカスは眉を上げた。
「はあ? 何言ってやがる。これを使うのはお前だよ、カナタ」
「……いや、俺なんかより、ずっと最前線組のリーダーを務めてたルーカスの方がいいんじゃ……」
しかし、そこでもう一人の生き残り――イギリスダンジョン出身のS級冒険者、シャーロットが静かに告げる。
「いいえ、カナタ。この結末を変えられるとしたら、それは誰よりも早く
「それにカナタ、お前も分かってるだろ。〈叡智の無限回廊〉にはダンジョンに関する様々な情報が詰まっていた。俺たちがこの先に進むためには、
そう言いながら、ルーカスは真剣な表情で俺に砂時計を差し出してきた。
「だから、あとはお前に託す」
「……ああ、分かったよ」
俺は砂時計を受け取ると、それを強く握りしめた。
この信頼だけは、絶対に裏切れない。
「それじゃ、最後のひと踏ん張りといくか」
「そうですね。アイテムを使う時間を稼がなければ」
そういって、ルーカスとシャーロットの二人がオルトドレイクに挑んでいく。
それを見届けながら、俺は砂時計をひっくり返した。
数分後、最後の一粒が落ちると同時に、青色の魔力が俺の体を包み込む。
(ありがとう。みんなの願いは、俺が必ず叶えてみせる――)
やがて俺の体は、世界とともにゆっくりと消えていくのだった。
◇◆◇
「――――はっ!」
目を覚ますと、俺は懐かしい自室のベッドの上にいた。
起き上がり鏡を見ると、確かに姿が18歳の頃のものに戻っている。
「……本当に戻ってきたんだな、10年前に」
窓の外を見ると、あの日と変わらぬ姿で摩天城が浮かんでいる。
そしてその中心には、これでもかと巨大なカウンターが表示されていた。
――――――――――――――
The 42nd Floor
Limit Time
645h:17m:52s
――――――――――――――
現在、攻略しているのは第42階層。
それを一か月以内に攻略できなければ、地上に魔物が溢れかえってしまうことを、あのカウンターは示している。
俺は拳を握りしめると、改めて決意を固めた。
(いつまでも感慨にふけってはいられない。まず初めにすべきことは、
俺は摩天城を見上げながら、力強く宣言する。
「――待っていろ。俺がもう一度、最前線まで最速で駆けあがってやる」
こうして、俺の二周目の人生が始まったのだった。
―――――――――――――――
新連載です!
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