手紙

第1話

幸広ゆきひろくんへ。



君に伝えたいことは、もう全て伝えてしまったと思う。



あたしは昔、水槽に水を入れて、砂利を入れて、綺麗な石を入れて、いきものを飼うわけではないけれど、その中にエアストーンを入れて、カーテンのように泡がのぼっていくのを見るのが好きだった。


それを思い出したのは、確か別邸に住み始めてすぐの頃で。


ホームセンターで熱帯魚が売られているのを見て、水中を颯爽と泳ぐ美麗な小魚を見て、ああ、そういえばあたし、こういうの好きだったなぁって思い出したら、いてもたってもいられなくなって。


水槽やら砂利やら、もちろんエアストーンも買って部屋に設置した。



水を見たら、つい考えてしまう。もしあたしが小さくなってこの水槽の中に沈んだら、口からぶくぶくと息を漏らして溺れてしまうだろうと。みっともなく手足を動かして情けなくもがくのに、誰にも気付かれずに死んでしまうのだろうと。



だけど、このエアストーンがあれば、

こんなにたくさんの泡があれば、あたしは生きられると思うんだ。





なんて、ね。


この話をした時、君は共感してくれたけれど、あれは必死にあたしの話に合わせようとしてくれただけだったんだよね。



巻き込んでしまって、本当にごめんね。

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