18.幽霊なんて怖くない
「幽霊なんて怖くありません」
と目の前に座っている私に向かって、彼女は言った。
「母が二回、比較的重い脳梗塞になったんです。脳が
どこか
「だから幽霊なんてみんな痴呆なんです。もし幽霊がいるとしたなら、人間側がありえない場所にいるそれにたまたま出くわして驚くだけです。霊障? そんなの全部気のせいです。呪いだって、呪った相手が『呪われた』と認識しなければただの不幸です。そう思いませんか?」
「興味深い見解だと思うけど、幽霊についてあんまり深く考えたことはなくてねえ。私はほら、生きている患者さんが相手だから。気分はどうです、〇〇さん?」
私は言った。彼女は急に私の存在に気付いたみたいに、まっすぐに私の目を見た。
「ええ、大丈夫です先生。大丈夫ですよ」
しばらくして看護師が私のところに来た。
「〇〇さんて確かあの事件の──」
「うん、介護うつを発症して無理心中しようとした人だね。幸か不幸か生き残ってしまった。今の投薬を続けて、もうしばらく様子見だなあ」
精神科医の私はそう判断して、電子カルテに打ち込んだ。
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