ベイルアウト

岸亜里沙

ベイルアウト

搭乗員A「エンジン出力低下。高度が下がってきている」


搭乗員B「何かコックピット内、燃料のような臭いもするな」


搭乗員A「管制塔、トラブル発生。緊急着陸を要請する」


管制官「了解。そのまま基地内の滑走路にまっすぐ侵入してください」


搭乗員B「くそっ、煙だ。早く基地に戻らないと」


搭乗員A「いや、駄目だ。このエンジン出力では、基地まで持たない」


搭乗員B「管制塔、本機は基地まで持たない。何処かに不時着する」


管制官「高度が下がってきています。早く緊急脱出ベイルアウトしてください」


搭乗員A「それは出来ない。下は住宅地だ。ここで機体を乗り捨てたら、住宅地に墜落し、民間人に死傷者が出てしまう」


管制官「何処か不時着出来る地点はありそうですか?」


搭乗員B「入間川に向かおう。そこしかない」


搭乗員A「そうだな。それしかない」


管制官「脱出高度が足りなくなります。早く緊急脱出ベイルアウトしてください」


搭乗員B「自衛隊員が民間人を殺し、自分たちだけが助かるなどあってはいけない」


搭乗員A「ああ。俺たちは最後まで誇りを失わない」


管制官「中佐・・・少佐・・・」


搭乗員B「なんだ?ここにきて高度がどんどん下がってきている」


搭乗員A「入間川までもう少し踏ん張れ」


搭乗員B「くそっ、機体制御不能だ。もう墜落する」


搭乗員A「この高度で脱出しても、我々は助からんだろう。だがこのまま墜落しては、脱出装置を点検した整備員が、自責の念にかられてしまう。装置に異常は無かったと安心させてやろう」


搭乗員B「ああ、そうだな。最後に君と乗れて良かったよ」


搭乗員A「俺もだ。じゃあ幸運を。緊急脱出ベイルアウト!」


搭乗員B「緊急脱出ベイルアウト!」








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