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「それより大変だよ」とあまり大変そうには見えない、のんびりとした顔と声で太っちょの白い天使猫の三日月は言いました。

「大変ってなにがですか?」と白ふくろうは言います。

「誰かが『空に落っこちてる』」

「え?」と白ふくろうは言いました。

「誰か落ちてるよ。早く助けないと間に合わなくなってしまうかもしれないよ」と三日月は言いました。

「そう言うことはもっと早く言ってください!」とびっくりした白ふくろうは(ちょっとだけ怒った声で)三日月に言うと、とたとたと白い床の上を走り出して、走り出すときに自分の白い大きなかばんの中から急いで取り出した、片目でみる形をした円筒状の古い望遠鏡を伸ばすと、空中庭園の円形の床の端っこのところで、へんてこなお面をぱっととって、そのとても美しい顔を見せると、とても珍しい『虹色の瞳』に望遠鏡をつけて、空を見ました。

 丸い視線が大きな青色の空の中をきょろきょろと行ききします。

 そして、遠くに見える黒い小さな人影を見つけたところでぴたっと止まりました。

 見つけた。いました。

 確かに三日月の言っている通りに人が空の中に落っこちていました。

 天使は空を守ることが努めです。

 空の中に落っこちた人を助けることが天使のお仕事なのでした。

 なので天使である白ふくろうは本当なら今すぐにでも背中にある大きな白い天使の翼で、空の中にばさっと羽ばたいて、空の中に落っこちている人を助けなければいけません。

 でも、大怪我をして、翼を痛めてしまって空が飛べなくなってしまった白ふくろうは自分で落っこちてる人を助けに行くことができませんでした。

 白ふくろうは小さなたまごのような石を取り出します。

 その小さなたまごのような石は、天使たちのおしゃべりの道具になっていました。

「白木花蜂蜜です。人が空の中に落っこちています。場所は、……、世界樹の第二枝付近です。風はほとんどありません。誰か助けに行ける人はいますか?」と白ふくろうは言いました。

「……、風花十六夜です。わかりました。私が助けに行きます。安心して。蜂蜜」と十六夜の声が小さなたまごのような石から聞こえました。

 それから白ふくろうの見ている望遠鏡の丸い視界の中に、十六夜が空を飛んでいく姿が見えました。

 その十六夜の、白い天使の青色の空の中を自由に白い翼を羽ばたかせて飛んでいく風景は、とても、とても美しいものでした。

 頑張ってください。十六夜さん。

 そう思いながら、ずきっと、白ふくろうの背中の怪我をしている飛べない翼が、少しだけ急に痛みました。

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