013

 それから3日間マンドラゴラを狩り尽くし、根っこをそれぞれ3個、3個、4個とエジの初日の分を合わせて12個の根っこが集まり、錬金術の結果計3個の大成功が出来上がった。

 父さんいわく運が良い方だったらしい。3個目の大成功品はいざという時のためにパーティ用に取っておく事にしたので、1本づつテミルと僕の取り分として僕からテミルが金貨1枚で買い上げる形にした。

 本当はもっと安くても良かったんだけど、テミルが引き下がらなかったので仕方が無い。

 せめて両親に使える様に、エジを購入する時に借りた銀貨15枚を現金で渡して、金貨1枚が貯まってから一括で返してもらうことになった。


 翌日は魔物の領域に行くのを休みにして、両親の世話をしてもらう事にした。

 上級治療薬の大成功品は飲んだ後1週間くらいかけて腕が生えてきてその間すごく腹が減ると聞いた事がある。

 なので食料の買い込みやら料理の作り溜めで1日使ってもらい、安心して狩りに行けるようにしてもらうのだ。


 腹が減るといえばエジの方も今だに大量に食べていて、暇潰しに来た屋台の料理を遠慮なく食べている。

 特に肉串と野菜の大量に入ったスープが気に入った様で何度も買いに行く事になった。

 大量と言っても合わせて銀貨1枚にもならないし、パーティの取り分がエジには無いからこれくらいなら安いものだ。

 骨に皮を張っただけに見えた手足も大分肉が付いたし、この分なら見た目も健康に見える様になるのもすぐだろう。

 これだけ鍛えれば鎧を着ても動けるだろうか?今だにローブとズボンだけで心配ではあったけど、僕と同様に筋力倍化はレベル1までしか取っていなかったから防具を付けるのは見送っていたんだよね。

 まぁそれも3日前の話だ。すでにエジの精霊術師のレベルは99になり、今は残りのポイントでどのボーナスを取るか精霊達が話し合っている。

 取得したのは頑丈と精神倍化のレベル10と筋力と体力倍化のレベル2だ。残りは筋力を上げて大盾を持たせて僕を守らせるか、属性耐性を上げて大盾を持たせて僕を守らせるかという事らしい。

 どちらも対して変わらないけど、属性耐性を100%以上にすると魔法を無効化出来るという利点がある。カードだけで対策しようとすると10枚も必要だし人数分揃える事は難しい。そこをボーナスで数枚分だけでも補おうというわけだ。

 ただ、物理攻撃を止めようとしたら当然受け止める筋力が必要で、カードでは補いきれないのでこちらを上げるべき。というのがデボボの主張だ。

 ミズナは殴られるような所まで近付けさせないし、仮に近付いたとしても1撃稼いでくれれば倒せるので今の頑丈さがあれば十分と言っている。

 多分答えはすぐに出ないので話に混ざるのは無駄と思い、家に置いてきた。


 屋台の食事を楽しみ、必要な雑貨と服を買い、装備を売っている店へとやって来た。

 作るための素材はすべて売ってしまった後だし、家の店に置いてあるのは鋼鉄の剣2本と大成功した皮の盾だけなので、エジの装備は買わないといけないんだ。

 店に入るとシンプルな見た目の見慣れた錬金術製の装備と、両手持ち用の大きな剣や刃が十字になった槍や装飾が施された武器や防具などが左右に分かれて並べられていた。

 片方は職人が手作業で作った物で、カードは挿せないけど一般的に錬金術で作った物より丈夫で切れ味が良いと言われている。

 もっとも大破しない限りは素材を追加すると治る錬金術製の装備とは違い、錆止めや刃を砥ぐなどの手入れが必要なので持ち手を選ぶ品物だ。それでも特殊な形状の武器や綺麗な見た目の装備はカードを使わない冒険者に人気がある。

 素材を集めて渦から取り出すだけの錬金術と違って、数日から数週間かけて作る装備は割高なものの、カードに比べれば大したことはない。

 もちろん今日買うのは錬金術で作った硬皮装備なので、格好良い装備には用はない。

 錬金術で作った装備はサイズも自動で調整されるから、体格が大幅に変わってきているエジにも丁度良い。

 銅貨十数枚で売った素材が皮装備と合わさって銀貨1枚で売られている。兜、胴鎧、手甲、脚甲で計銀貨6枚が飛んでいった。

 武器と盾は今お金が心許無いので見合わせだ。どうせろくに筋力の無いエジが武器で魔物を倒すことは無い。

 持たせるにしてもアイテムを拾う時に邪魔になるので短剣とかだろうか?腰に吊るしておけるので槍や鎚なんかよりはマシなはずだ。


「あーあ、もっと肉がついてたらあーいうエロい装備も似合うんだけどなぁ」


 エロい装備というのは多分木製の人形に着せられてる下着の様な防具の事だろう。わざわざ女性の体型を模して人形を作っているので来るものがあるけど、魔法的な効果があるわけでもないのにあんなに肌が出ている装備を着てどうするのだろうか?

 いや、踊るのか?次の奴隷は踊り子として育てるのを検討したほうがいいだろうか?正直次にメンバーを増やすなら、魔法に強い魔物用に物理攻撃が強いジョブで育てようと思ってたんだけど、暇な時は踊っていてもらうのも良いかも知れない。


「いや、あの鎧じゃ危ないだろ。頑丈を上げてるとはいえ、テミルみたいに壁役用のジョブじゃないんだから怪我するよ」


 冷静になって考えてみたら、戦闘中に魔物も見ずによそ見をして鼻の下を伸ばしているパーティリーダーは嫌だろう。

 今テミルにパーティを抜けられたらパーティ運用が瓦解する。エジも頑丈を上げているとはいえタウントもモンスター誘引も無いし、新しく奴隷を買うお金も無い。

 何より値段が高かった。いくら装飾が凝ってるとはいえ面積が少ないのに銀貨50枚はどうなんだ?材質もただの皮と鉄製だぞ。


「思ったよりも興味があるみたいだしいつか着てやるよ。まぁ買うのはご主様だけどな。

 まだ子供かと思ってたけど立派な大人だったんだね」


「いや、値段が目に入って見てただけだよ。銀貨50枚だぞ高すぎないか?」


 勘違いされたままでは困るのできちんと否定しておかなければいけない。こんな事でパーティを崩壊させるわけにはいかないんだ。


「ごじゅ!?…さすがにそんな高い物強請ねだれないねぇ…」


「ああ、材質も皮と鉄だし戦闘で使う物じゃ無いんだろうな」


 その後は職人が作った武器や他の防具を流し見してから店を出た。

 次のランクの杖は銀貨25枚か…自分で素材を取って来て作るのとどっちが良いんだろう?

 作るのはいいけど上級治療薬みたいに失敗があるんだよなぁ。上級治療薬の材料は治療薬だったからまだ楽だったけど、次の防具の材料は硬皮装備なので失敗する度に皮装備から作っていかないといけない。

 金額的には自分で素材を集めた方が安く済むけど、経験値の事を考えるならマンドラゴラを倒した方が圧倒的に美味しい。

 それに明日からは、ようやくさらに内側へと行けるので素材集めをしている暇なんて無いんだ。自分が着ている装備を錬金術で失敗したら、買って穴を埋めるくらいで良いかも知れない。


 さらに数件の店を冷やかして、夕食を屋台で買って帰ってみると精霊2人の話し合いはまだ続いていた。どうやら選択肢が増えたらしい…



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テミル013話終了時ステータス

J1.精霊術師Lv94→99

J2.盾士Lv80→97

J2.聖騎士Lv80→97

J3.大神官Lv70→90

J3.守護者Lv70→90

J4.竜騎士Lv50→84

残りポイント4


エジノラ013話終了時ステータス

J1.精霊術師Lv75→99

J2.ドルイドLv0→91

J3.大神官Lv0→85

J3.転移術士Lv0→85

J2.暗殺者Lv0→50→J3.潜伏者Lv0→80

J3.斥候Lv0→50→J4.大僧正Lv0→70


B.筋力倍化Lv1→2 new

B.体力倍化Lv1→2 new

B.頑丈倍化Lv5→10 new

B.精神倍化Lv10 new

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