第10話
イリアナが誘拐の集団から逃げようとしたその頃・・・
イリアナが突然の襲撃を引き起こした謎の集団から誘拐され、王子毒殺未遂ときて立て続けのことで騒然となった。
被害は爆発による被害、戦闘による負傷で、十数人の兵の被害を受けた。また建物の一部は延焼したが、すでに鎮火された。
しかし、あまりの展開に残る貴族たちは緊張の連続で疲弊しだした。
「さすがにこの状況でここにとどまるのはおかしいのでは」
「取り調べるなら明日でもよかろう」
貴族らに不満が一層高まった。
「とにかく、速やかに調査をし、貴族らを退去させよ」
国王がそう命じるなり、グレイヴはまず王子毒殺未遂の件での調査、聞き取りを行う者と、イリアナ嬢誘拐の調査する者と分けた。毒殺未遂事件に関しては厨房で働いていた者、王子と距離が近かった者を限定とした。一方で、グレイヴは部下の警務らはまずイリアナの控室としていた部屋を調べることとした。散乱した窓ガラスと複数の足跡。 その中に、クラリッサの姿があった。
部屋の捜索しようとしたとき彼女がグレイヴに近づき、自分も協力させてほしいと言ってきた。
「なにをおっしゃるのですか?」
「私は彼女とは長い付き合いがあります。彼女の身になにかあるとおもうと、いてもたってもいられません。それに貴族の令嬢の私物を殿方があさるのはいかがなものかと」
「それなら、あ、いや、」
グレイヴは即答できかねた。
「恐れながら、我々従者がいますので、それは大丈夫でございます」
イリアナの従者の一人が答えたが、確かにそうだ。普通なら。問題はイリアナ嬢は誘拐された被害者でもあるが、毒殺事件の容疑者でもある。イリアナの女性の従者が数人もいたが、彼女らもイリアナ自身が王子毒殺の容疑者、または共犯の可能性も捨てきれないのである。それが事を面倒なことにしている。
「わかりました。こちらからの指示に従って、必要なときだけお手伝いいただけますか?」
調査に部下以外の者を参加させることは異例である。しかし、早急の調査が求められていることが彼を悩ませた。その従者も同様である。それゆえに警務らも少しでも調べたい思いもあり、彼女を受け入れた。こうして異例ながら協力者として控室にいた。
警務官たちは部屋をくまなく捜し、そして私物であろう荷物に目を注いだ。
「クラリッサ様、よろしければ。。。」
警務官が広げたバックの中を手さぐりで探すクラリッサ。そこから一枚の手紙を取り出した。
「これは?」
クラリッサが手紙を取り出し、その文面に目を覆わせた瞬間に、その表情がこわばった。
「よろしいですか?」
と警務兵が受け取り、内容を読み上げると、顔色が変わっていった。
「隊長、これを」
部下から受け取ったグレイヴはその内容を読むと、口をゆがめた。内容が王子への毒殺の指示が詳細に書かれていた。
「この手紙をすぐに国王へ報告する。 他の者はこの部屋の調査を引き続き行え」
グレイヴはすぐさま国王の元に赴き、国王、国王の書記官、近衛騎士、警務局を司るグレイヴの上司にあたるバナル伯爵を含めた協議が始まった。
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