第34話 討伐隊結成

「いい? 喧嘩とかしないでよね。仲裁するの僕なんだから。特にコトネ、君に言ってるんだよ」


 先頭を進むニルコックは歩きながら振り返り、コトネを指差す。しかし、コトネは無視を決め込み歩いている。

 そんな無愛想な態度にニルコックは怒りが込み上げるが、グッと堪えため息をつく。


『何で僕がこんな面倒な事を……。余計な事、言わなきゃ良かった』


 討伐隊の隊長に任命されたニルコック。

 メンバーはコトネ、ディアン、エルドラなのだが、はっきり言ってニルコックは必要ない。

 ならば何故ここにニルコックが組み込まれているのか。

 それは作戦開始前にさかのぼる。


 ※※※


 地図で地形の確認と作戦を通達した後、ナガレは討伐隊のメンバーを選抜していく。


「俺はアリスとリン二人を護衛する為、ここで待機する。討伐隊にはコトネ、ディアン、エルドラでいきたいと思う」

「大丈夫なの、それ。三分の二が外部じゃん」

「それについては大丈夫だろ。二人は強いからな」

「いや、そうじゃなくってさ」


 ディアンとエルドラは既にリーヴァントのメンバーを撃破している。

 故に実力は疑っていない。

 ニルコックが心配している事は関係性についてだった。


「コトネ。吸血鬼ヴァンパイアだけの所に入れて大丈夫なの?何するか知らないよ」


 ニルコックの発売を聞いて、ナガレはやってしまったという表情をする。

 しかし、自身は子ども達を護衛するので、どう組み合わせても吸血鬼ヴァンパイアの中に一人でコトネを入れる事になる。

 確かにディアンに斬りかかった時の様な事は起こしたくはない。

 だが、だからと言って貴重な戦力を削る事もしたくない。

 ならば出すべき結論は一つ。


「じゃあニルコックも一緒に行ってくれ」

「ハァ!? 何で!?」


 思ってもいなかった言葉にニルコックはあんぐりと口を開ける。


「おかしいでしょ! 僕は戦闘員じゃない! 行った所で役に立たないじゃん!」

「でもまぁ、コトネを抑えれるだろ?」

「この……クソジジイ……ッ!」


 何が抑えれるだろだ。

 狂犬をしつける役目を押し付けるなと思いながら拳を握りしめるが、ニルコックもこれ以上言った所で決定は覆らないと理解している。


「はぁ……分かったよ。やればいいんでしょ。言っとくけど絶対戦わないから」

「戦闘員は三人もいるんだ。そもそも出番来ないだろ」

「はいはい」


 無自覚なのか煽っているのか知らないが、取り合って感情を浪費させたくない。

 ニルコックは適当に流すが、次のナガレの発言で、その思考は無に帰す。


「おう。ついでに隊長として頑張ってくれ」

「なっ……、それは違うでしょ! 何で!? ねぇ何で!?」

「頑張れ」


 ナガレは頼んだと言わんばかりにニルコックの肩にポンッと手を置く。

 初めから全部押し付ける気だったんじゃないかと思いつつ、ニルコックは何とか溜飲を下げ、了承するのだった。


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