第13話 ひとまずの解散
数はそこまで多くなかった事もあり、ディアンとエルドラは難なくガーゴイルを撃破する。
しかし、その間にシグマは何処かへ逃げてしまっていた。
「リン、アリスちゃん、怪我ないか?」
「うん」
「大丈夫だよ」
エルドラが二人の無事を確認している間、ディアンは少年の元へ歩み寄り体を揺する。
「おい、シグマの居場所を吐け」
「ん、んん……。うわぁ! な……何ですかあなたは!」
少年は目を覚ますが、まるで初めて出会ったかの様な反応をして大きく後退りをしていく。
先程の肉体の変化による影響なのか。
何にせよ少年からの情報には期待は出来ないだろう。
「小僧、さっきの事は覚えてるか?」
「な、ななな何の事ですか!? て言うかここはどこですか?」
「本当に何も覚えていないのか」
少年はきょとんとした顔をした後、考え始める。
そして少しすると思い出した様に口を開く。
「血を……飲まされたんです。そこから意識が朦朧として、本当に、本当に覚えていないんです! 何かしたなら謝ります!」
最初の雰囲気は何処へやら、別人の様になった少年は土下座する勢いを見せる。
勝手にやっている為放っておいてもよかったが、しかし、流石に気が引ける為ディアンは制止する。
「お前は何もしていない。大丈夫だ。ところで血を飲まされたと言うのはどういう事だ」
少年ははっきりと覚えていないのか、「えっと……」と考えた後に答える。
「散歩してたんです。そしたら男性の方が来ていきなり口の中に瓶を突っ込んできて。そこからは記憶がないという感じです」
「なるほどな。情報提供感謝する」
ディアンの礼にこくりと頷くと少年は立ち上がり服の汚れをを払う。
そしてあっさりとした様子で―――
「あのもう行ってもいいですか?」
「あぁ大丈夫だ」
その場を去っていくのだった。
その時誰も声に出してツッコまなかったが、全員スーツ姿で散歩してたのかと心の中で驚愕したのだった。
その後、四人はその場を後にし、駅へと着いた。
「んじゃアリスちゃん、またな」
「今日はありがと。リン君も」
「うん」
それぞれ乗る電車が違う。
そのまま解散していくかと思われたが、ディアンがエルドラを呼び止める。
「おいエルドラ。キサマ、契約解除の方法は知っているか」
ディアンの質問にエルドラは「さぁ?」と両手をそれに向け、知らない事をアピールする。
「でもまぁ、分かったら教えたるわ。感謝しいや」
「あぁ、頼む」
ディアンの返事に思わずエルドラは目を見開く。
「それと今日は助かった。礼を言う」
まさか、あの、一切こちらは信用していないという様子だったディアンが下手に出てきた。
予想だにしない発言のコンボに思わずエルドラは驚き、そしてにんまりと笑う。
「素直なとこあるやんけ。これから仲ようしよな」
「馴れ合うつもりはない」
「なんや結局素直やないんかい。可愛げのないやっちゃな」
エルドラの態度にディアンは腕を組みそっぽを向く。
ディアンがしてやられている。そんな様子に思わず、アリスは吹き出してしまう。
それを見たディアンはアリスに詰め寄ると、アリスを指差す。
「いいか、キサマが余計な事をしなけりゃシグマを取っ捕まえて事は終わってたんだ」
「はっ!何よ、エルドラさんがいたから私達無事だったんじゃない。アンタ一人じゃ二人とも死んでましたけど?」
「なめるな。あれくらいオレ様一人でどうとでもなった」
「どうだか」
エルドラとリンをほっぽりだして、二人は喧嘩を始める。
暫くエルドラ達は見ていたが一向に止む気配がない。
エルドラはため息をつき、そして―――
「
と、言うと二人は息ピッタリに「誰がコイツと!」と言い返した。
お似合いやないか。そう言いたくなったが、これ以上巻き込まれるのはごめんだと喉元まで来ていた言葉をエルドラは飲み込む。
「ほな、またアイツらについて分かったら教えるわ。多分、前言うた
「今日はありがとねー!」
歩いていく背中にアリスが礼を伝えると、エルドラはそのまま手を振って返事を返す。
その背中を見送り終えるとアリスはディアンに向き直る。
「今日はありがとね。助けてくれて」
「何だ急に気持ち悪い」
「すぐそういう事言う。助けてもらったんだからお礼言うのは当たり前でしょ」
「あぁ、そうだな」
アリスのもっともな発言にディアンは適当に返事をして駅のホームへと降りていく。
家に帰る道すがら、ディアンはシグマの言っていた組織の事を考えていた。
現状、情報が少なすぎる。構成人数や活動実態、拠点も分からない以上、手の打ちようがない。
あの場で加入すれば全体像は把握出来たかもしれないがアリスを排除させられる可能性もあった。
結局は後手に回るしかないのか。
だが無策で過ごす訳にもいかない。
恐らくは仮面の
自分はともかく、ただの人間であるアリスは少年と同じく無理矢理操られる可能性もある。
ディアンは自身の軽はずみな行動を恥じ、今後の身の振り方を考えるのだった。
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