第54話 本当に生きていたのね

「この剣が魔剣じゃない?それはどう言う事だ?」

「まだ分からんか?それは……その剣は……」

「まさか……これは聖剣なのか?……

 こいつは、自分は、〝聖剣じゃない〟と言ってたぞ?」

「ほ〜 お前は、剣と、意思の疎通が出来るのか?面白い……」

「だから俺は、これを魔剣だと……」

「違うな……それは……聖剣でも……

 ましてや、お前が言う様な、魔剣などでは決してない……」

「聖剣でも魔剣でもない?じゃあ何だと言うんだ?」

「教えてやろう……それは……」

「………………」

「……それは紛れもなく神剣……神剣で神を斬れるわけがない……

 神剣は、神にあだなす事は出来んのだ。

 我は、神だと言ったであろう?」

「これは神剣?……だから、〝聖剣ではない〟と言っていたのか?

 そしてお前は、やっぱり、神?……なのか?

 ふん……だとしたら、お前は、邪神てやつだな?」

「ファッハハ……邪神か?面白い……」

「……だから面白くないって……

 この剣では、お前を斬ることは出来ないのか……」

「嘘だと思うのなら、やってみたら良い」

「だな?考えても仕方ない……やるしかない……喰らえ!」


 〝ザシュッ!ザシュッ!ザンッ!ザンッ!〟

「ファ〜ッハハハ!……痛くも痒くもない……どうした?

 ほれ、もっとやらんか……面白い……面白いぞ小僧」

「クッ……クソ〜!本当に、だめなのか?……」

「ん?もう終わりなのかな?」

「うるさい!俺には未だ、魔法が有る!俺の最大魔力を喰らえ!」


 〝メテオカタストロフィー!〟

 レオナルド渾身の魔法の一撃は、

 ベリアルが、身体の前に一瞬で作り出した、異空間への渦に飲まれて消えた。


「……俺の魔法が消えた……あの渦に飲み込まれたのか?

 お前、もしかして、異空間への入り口を作ったのか?」

「異空間ではなく、転移の入り口だな……

 あ〜あ、今ので、何処かが大惨事になってるかもしれんぞ?

 お前の放つ魔法は、我が全て何処かへ飛ばしてやろう……

 さあ、どうする?もう一度やってみるか?」

「転移魔法にそんな使い方があったのか……

 おまえには、魔法が通用しない……のか?……」

「もう終わりか?……面白くない……

 お前の攻撃魔法を、転移させたと言うのは嘘だ……

 お前の言う通り、異空にしまったのだよ。では……これは返そう……」

 彗星の様な巨大な魔力が、レオナルドを襲う。

「避けたら、後ろの、この星がなくなるぞ?さあどうする?」

「……くっ……それは……俺の放ったメテオなのか?」



 避ければ、地上が消し飛ぶかもしれない。

 レオナルドは、その身体で、

 自分の放ったメテオを受け止めるしかなかった。

〝ズドガ〜〜ンッ!!!〟

 大爆発が起き、レオナルドは跡形もなく消えてしまった……


「レオ〜〜〜〜!イヤァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

 静けさが戻った空に、ティアナの叫びが、こだました……



 大爆発の衝撃で舞い上がった埃が消え、視界が戻った。

「……静かね?……」

「ああ、レオが、あの爆発の大半を、跳ね飛ばしてくれたおかげで、

 悪魔族の大半も、巻き添えを食って消えたからな……」

「レオは?……」

 首を横に振るテイラー。

「髪の毛一本見つからない……

 大賢者様にも、レオの気配が感じられないそうだよ……

 あの大爆発……無事でいるとは……」



「レオ……私も貴方の側に……」

 バルコニーから、身を投げ出そうと、走り出すティアナ。

 後を追う様に、スフィアも駆け出す。

「待って!ティアナさん!スフィアさん!

 レオナルドさんの子供が、お腹にいるのよ?

 そんな事して、彼が喜ぶとでも思います?」

 〝……っぐっ……う……ううっうっうっわぁぁぁ〜〜ん!〟


「ねえ、ティアナさん、スフィアさん、世界樹を信じて!

 世界樹の精霊は、レオナルドさんと私……

 今結婚しないと、って言ったのですよ?

 あの人が死ぬ運命だったのなら、先延ばしにはならない……

 きっと生きてる……私はそう信じています」

「……ごめんね……アリエルちゃん……」

「そうよね。私も信じるわ……ありがとう、アリエルちゃん」






 レオナルドが居なくなり、早くも1年が過ぎようとしていた。

 皆、レオナルドの事は、なるべく口にしない様にしていた。

 希望は捨てていないものの、レオナルドの話をすると、

 いつも思い出話の様になってしまい、最後には気がめいってしまうからだ。


 〝アンギャ〜アンギャ〜〟

 〝バゥバウ……〟

「お腹すいたの?ちょっと待っててね……」


 〝ドガシャ〜〜ン!〟

「な……何?何事?」


「居ましたよ?ベリアル様」

「うむ……確かに、この赤子で間違いないな……

 奴と同じ匂いがする……危険な、あやつの血は、根絶やしにしておかねばならない」

「へへへ……この赤子からやりますか?」

 〝ずるっ〟

 そう言った悪魔の首が、横にずれ床に落ちた。

 〝ドスッ〟


「何奴?邪魔立てするのは……お、お前は死んだはず……なぜ生きている……」

「勝手に殺さないでくれるか?」

「おい、誰か、外の仲間を呼んで来い!今直ぐ全員だ!」

「外?見てみろよ……外にはもう誰もいないぞ?」


「な……馬鹿な……こんな短い時間で、2万の悪魔が全滅させられたと?

 ここまで立て直すのに、一年も掛かったのに……

 ものの数分で、音もなくやられてしまったのか?……」


「「レ……レオなの?……」」

「ただいま……ティアナ、スフィア……アリエル」

「ほ……本当に生きてたのね?1年もの間どこへ……」

「ごめんね。心配掛けたね?もう少し早く……

 この子達が産まれる前に帰りたかったんだけど……」

「何を呑気に話してる?そんな場合では、ないだろう?」

「確かに……って、お前が言うなべリアル。

 皆んな〜ちょっと待ってて。こいつ片付けちゃうから」

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