第43話 俺、結構強いよ?

「俺、この国の人間じゃないんだ。

 ここの事情がよく分からない」


「……そうですか……この国は、戦えない者は、収入を稼ぐのが難しいのです……

 2年前、この子の父親が、大会で戦いに敗れ、

 運悪く、打ちどころが悪かったのか……亡くなってしまいました……

 主人が生前、家は購入していたので、小さいとは言え、

 住むところは、なんとかなっては居るのですが……

 幼いこの子を、1人家に置き、

 朝も夜も働いても、私の収入では、食べていく事が出来ません……

 この子に満足に食べさせてあげる事が出来ていなくて……

「ふ〜ん……大変なんだね?ほら、これあげるよ?

 少ないかもしれないけど……この国のお金は、そんなに沢山持ってないんだ……

 これでしばらくは、食べていける?」

「き……金貨……四人家族でも、一年は楽に暮らせます……

 うちだったら、節約すれば……4〜5年は……でもこんな大金頂くわけには……」

「良いよ?貰っといて……その代わりと言ってはなんだけど……

 少し情報を、教えてくれない?」


 その時、レオナルド達の背後から声が掛かった。

「おい、お前達、この辺で、武装した集団を見なかったか?」

 振り返ると、屈強そうな男5人が立っていた。

「武装した集団?さあ?そんな連中、見てないな……」

「そうか、邪魔したな」

 意外とあっさり、その場を後にした男達。

 やはり、レオナルドを、敵とは認識していない様だ。

「あの……狭いですが、宜しければうちにいらして下さい……

 今日はなんか、街中、物々しい雰囲気で、物騒ですから、

 お話はそこで伺った方が……」

「良いの?助かるよ。ここでは、落ち着かないもんね?」



「えっ?剣神サウザー様?王家の?あなたが、そのお孫さん?」

「そうなんだ……じいちゃん、この国に行ったっきり、帰ってこなくて探しにきたんだ。

 そしたら、国に入れてくれなくて、しまいには襲ってきたから、

 全部倒して、勝手に入ってきちゃった……あいつら探してるの、多分俺だと思うよ」

「全部倒した……あの……入国審査場の兵は、この国でも上位の兵ですよ?

 倒したのですか?貴方1人で?」

「うん。こう見えて、俺、結構強いよ?

 ってか、修羅の国って割には……あいつら、そんなに強くなかったけど……」

「そ……そうでしたね?貴方は剣神様のお孫さん……強くて当たり前か……」

「ねえ、さっきから、じいちゃんの事知ってるみたいだけど……

 なんで?知り合いの訳ないよね?」

「勿論、知り合いではありませんが、存じております。国を出て、世界を股にかけ、

 剣神とまで言われる様になった、元王族……

 おおっぴらには、口には出来ませんが、噂が噂を呼び……剣神様に憧れる者も多いですよ」

「おおっぴらには言えない?何でだろ?」

「はい、国からすれば、剣神様は、国を捨てた裏切り者ですから。

 ですが、この国のやり方には、反感を持つ者も多いのです。

 その人たちにとって、剣神様は英雄です」


「この国が飢饉きが?そんな事はありませんよ?

 最近特に、国に反感を持つ人が増えたので……もしや、見せしめに……」

「何?見せしめって?」

「はい、今年の大武道会、剣神様が出場なさるとか……

 結構な、お年なので、それは何か変じゃないかと……

 しかも今年に限って、予選を勝ち抜いた者は、

 100人全員で一斉いっせいに戦うとか……あり得ないですよね?」

「またそのパターンか……卑怯者の考える事は、どこも一緒だな……

 でも、あの門番クラスなら、50や100人居ても、

 じいちゃんの敵じゃないと思うけどな……」

「剣神様とは、そこまでお強いのですか?」

「いや……ここの人達、言うほど強くない……かも?

 で、その、大武道会って、いつなの?」

「明日ですよ?中央にあったでしょ?あの大きなコロシアムです」

「明日そこに行けば、じいちゃんに会えるのか……探す手間が省けたな。

 色々教えてくれてありがとう。それじゃあ迷惑かけると不味いから、俺は……」

「お待ち下さい。泊まる所はどうしました?

 宿を取るにも大武道会で、空きはありませんよ?」

「大丈夫。野宿するから」

「外は、あのような状況。宜しければ、泊まって行ってください」

「良いの?それは助かるけど……でも俺がここに居て、迷惑掛からないかな?」

「兵の人達、何も状況が分からず、

 ただ闇雲に探している様ですから、大丈夫でしょう」

「確かに……俺の事なんて、気にもしてなかったね?だったら泊めて貰おうかな……」

「はい、そんな事で、お礼になるとも思いませんが……

 しかも、こんな汚い所で……」

「汚くなんてないよ?朝から晩まで働いているにも拘らず、

 掃除も行き届いているし……

 ご主人が、生前に買ったここ…… 外観とか凄く可愛い家じゃない。

 俺が、じいちゃん達と住んでた家も、こんな感じだったよ」

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