🎼 MEMORIES OF YOU ── 決して君を忘れない

歴野理久♂

モノローグ(1)

──潮風の届く丘にて


 目映まばゆいばかりの初夏の光。

 僕はそっとひたいに右手をかざし、仔犬とたわむれる和志の姿を目で追い掛ける。


 広い海原を見渡せるこの丘に、僕たちはもう何回、こうして一緒に来ただろう。


 季節が変わり人が変わっても、僕の中の君は永遠に変わりはしない。

 春にはタンポポ、そして秋にはコスモス──この丘を飾る花々が季節にいろどりを変えても、こうして和志とこの丘に立つ時、僕の胸に秘められた君との思い出はいつも変わらずよみがえる。


「おーい!そんなに走って転ぶなよー!」


 僕は満面の笑みで和志に声を掛けた。

 和志は屈託も無い笑顔で僕に手を振り、飽く事もなくこの丘を駆けめぐる。

──この至福の時が、いつまで続いてくれるのか。

 幸せな時間はいつか必ず過ぎ去ってしまう事を、僕は悲しいほど知っている。


 人には必ず別れがあるから。


 たとえどんなに藻掻もが足掻あがいても、決して越える事の出来ない厚い壁が有るから。


(和志……君ともいつか、別れの時を迎えるんだね……)


 広い海原から吹き渡る潮風に身をゆだね、僕は微かにまつ毛を濡らす。



(どうしてこんなに、君を愛する事が出来るのだろう)



 日の光を一杯に受けて輝く朝凪あさなぎのように。

 この広大な空に浮かぶ、無数の白い雲のように。

──いだいてもいだき切れぬほどの、君との愛しき思い出の数々。


──Memoriys  of  you


 君がいたから、僕は生きて行ける。


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