階段、そして部屋の前へ
俺がまだ実家で暮らしていた、あれは中学1年位だったかな?
そんな頃のちょっとした心霊体験。
実家の前には、中〇公園って言う公園があってさ
平日、休日関係なしに、とにかくいっぱい人が遊びに来る公園だった。
保育園児から中学生、はたまた高校生までね。
んで、俺の部屋の戸って引き戸でさ、化粧ガラス? 細工ガラス?
よくわかんないけど、下半分がなんか模様入ってるちょっと曇ったガラスで
上が格子状の障子戸でね。
夜になると、目の前にある公園のでっかくて背の高い照明の光がさ
そのガラス越しに部屋に差し込んで来るんだ。
その頃の俺のベッドは、パイプベッドでね
頭を横に向けると、その引き戸のガラス部が見える感じ。
ああ、ちなみに俺の部屋は2階ね。
その障子戸から出てすぐ横に階段がある。
そもそも眠りはめっちゃ浅い方だから
その日もうつらうつら寝てたわけ。
なんか寝苦しいなぁーって思って目を開けると
部屋に公園の照明の光がスーッていつものように伸びている。
時計を見ると深夜2時付近だったと思う。
早く寝ないと明日も学校がー、とか考えてたら
階段が軋む音が聞こえてさ。
最初はほぼ1階の方から
ギ…
ってね。
いつもの家鳴りか? とも思ったけど違う。
家鳴りなら派手に、パキンッ!って鳴るからさ。
ギ…
あれ? 俺が寝てないのバレて、かーちゃんが階段を上がって来てる?
まあ、そう都合よく解釈した。
ギ…
いやいや、いくら深夜っていったってそんなに上って来るの遅い?
ギ…
ちょっと待って、え? 泥棒入ってきた!?
ギ…
いやいやいやいや、確実に上って来てんだけど!
ギ…
下手に動くより気が付いてないフリした方がいいかもしれない。
どうせ部屋から逃げられもしねーんだし、って。
ギ…
とうとう2階まで上り切った音になった。
音がしてる所までほんの数メートルしかない距離。
ギ…
ちょっと待って! マジで待って!
俺の部屋の前に移動して来てる音になる。
ギ…
視線が引き戸のガラス部分から離せない。
心臓のバクバク音が聞こえそうで、息も苦しくなるし。
ギッ
なんで戸の手前で止まるんだよっ!!
百歩譲って、かーちゃんでも泥棒でも良かった。
それじゃなければ何でも良かった。
公園の照明が部屋に差し込んでいるそのガラス戸の向こう
部屋の前の廊下に、俺の方につま先を向けている2本の足。
緑と青の混ざった、えらく曖昧な輪郭の半透明な足。
足首から膝下半分までしかない足。
若干、光を帯びてた? かもしれない。
そこからどのくらいの時間そのままだった?
わからない、わからないけど、心臓はバクバク、息は苦しい
おまけに目は離せない。
目を離したらきっと入って来る、そう思った。
頭の中で必死に「南無妙法蓮華経」と何度も唱えた。
何で法華経? 分からないけど咄嗟に出てきたのがそれだった。
とにかく何度もそこだけ繰り返し頭の中で唱えた。
次の瞬間、気が付くと既に朝日が昇っていて
時計は6時を回っていた。
オチ? ないよ?
あれが何だったのか、大人になった今でもよく分からない。
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