捜索・救助
「リスティア、怪我をした人たちの救護を頼む。ノイア、中に人は残ってるか?」
『分からない。けど今捜索してる』
「シルヴィ、リスティアを手伝ってくれ。ニシェル、行くぞ」
「うん、分かったマスター!」
「了解いたしました、マスター。お気を付けて」
「フェーン、私は」
「姉さんは…危ないからここで待ってて」
『〈対物理要素結界、展開〉』
炎が上がる建物の中に、フェーンとニシェルが入っていく。遠のいていく後ろ姿を追いかけようと足を踏み出した瞬間、手を掴まれた。
「いけません、ユーリア様」
「…放せ」
「マスターの身を案じられているのは良く分かっております。ですがマスターからのお言葉を忘れたのですか」
「……でも」
私の方が…強いから…。
「ユーリア様」
「…いいから、放して」
「……リスティア」
「ユーリア様、最後に軽く診断だけさせてもらいます」
■
「…あなた達は、助けに行かないのね。大切なマスターなんでしょ?」
「えぇ。ですから信じているのです」
「…信じる…」
「私共は確かに、マスターに愛を忠誠を誓っております。ですが、甘やかす事、守る事だけが、愛なのではないのですよ、ユーリア様。時には信じ、背中を押し、帰りを待つこともまた、愛なのです」
「あなた達、フェーンとはいつから知り合っているの」
「前世から、でしょうか」
…前世…前世のフェーンはこんな組織を作っていたのね。
…確かに私は、フェーンを甘やかし過ぎていたのかもしれない。過保護になっていたのかもしれない。
「…分かった。なら、ここで手伝うわ。何かすることはある?」
「では、リスティアと共に怪我をした方たちの診療をお願い致します」
診療…専門外の事だけど、リスティアから教えてもらえばどうにかできるのかもしれない。
それに…自分が何もできないままと言うのも歯痒い。ここで様々な経験を積み、将来に活かそう。
「分かったわ」
■
『フィルター起動』
「マスター、温かいね!」
「はは…そうだな」
マスターボードが対物理結界を展開してくれているお陰で、灼熱の炎も全く熱くない。更に結界自体に僅かな遮光効果があるようで、明るく輝く炎に目を眩ませることもない。
前世の俺はこんなすごい物を開発していたんだなと、前世の自分に若干尊敬の念を抱いた。
ちなみにニシェルには灼熱の炎もあったかいですむらしい。…本当に人間じゃないんだな…。
「っ…他に人は…!」
「分からない、手分けして探そう」
階段の奥から、走り回る足音と人の声がした。少し段を上がり2階の方を見る。あれは…確か…。
「っ!いた!先生!」
「どうした!?」
「こっちにまだ人が!」
…おっと、俺達を救助対象にされてしまったか…。俺たちにとっては二人の方が救助対象なんだが…。
「って…リゲルスさん?」
「…ソフィアさん。奇遇ですね」
2階から俺を見下ろしているのはソフィアさん。ライノア副騎士団長の一人娘であるらしい。
騎士団長の息子と副騎士団長の娘という事もあり、プライベートでも何度か面識のあった相手だった。
そして多分先生と言うのは…あの声からして魔法科のレノア先生だろうな。二人はまだ校内に残っているかもしれない人達を救助しているらしい。
俺も逃げ遅れたと判断されたのだろう、2階からレノア先生の顔も覗いた。
「フェーン、無事だったか!」
「はい…なんとか」
いい感じにマスターボードを隠しながらフィルターと物理結界を切り、ニシェルにこの場からすぐに離れるように言う。
「待ってろ、すぐそっちに行くから―――」
その瞬間、爆発の衝撃で外れかかっていた階段の柵の一部が俺目掛けて落下してくる。先端はかなり尖っていて、当たったらまず命はない。
…、仕方ないか…。
「――リゲルスさん!」
「フェーン!」
『〈———対物理要素結界、再展開〉』
目の前の景色がほんの少し暗くなる。柵は展開された結界に阻まれ、俺に当たることは無かった。
安心する暇もなく次がやってくる。爆発音がしたと共に、レノア先生とソフィアさんのいる2階の天井が落下する。
…なんでこうも…!
『〈迎撃形態、収束閾値10%〉』
取り敢えず二人の直上だけで良い、吹き飛ばせ―――!
放たれた2発の魔力弾は二人の鼻先を掠めるように通り、頭上に迫る天井の破片を破壊した。
そして粉塵が立ち込めて、2階の状態が不明瞭になった。
「なっ!?」
「くそっ…!【
レノア先生が風魔法で巻き散った粉塵を吹き飛ばす。
『マスター、もう負傷者はいない。全棟確認できた』
「分かった、ありがとな。——レノア先生、ソフィアさん、早く!」
「きゃっ!?」
レノア先生がソフィアさんを抱き抱える。歓喜と驚きの混じった声を上げたソフィアさんも、すぐにレノア先生の意思を察し、レノア先生にしっかりと掴まった。
「行くぞフェーン!」
そしてレノア先生が二階から俺の方に飛び降りてくる。…流石にこの速さの人二人分の重さを受け止めきることは無理だ。…俺だけならな。
『〈対物理要素結界、風魔法起動〉』
物理結界、風魔法の応用。物理結界で作った器に風魔法で圧縮した空気を送り込むことで簡易的なクッションとして機能するわけだ。
「おわっ…と。ありがとなフェーン」
――――――――
作者's つぶやき:レノア先生が葵さん枠かな?…いやでも…まあなんか、はい。
それはともかくとして、マスターボードが本当に優秀ですね。いやフェーンくんが優秀ではないと言いたい訳ではありませんが。
前回の高速迎撃形態といい今回の迎撃形態といい、かなり汎用性が高いですよね。
ちなみに一応マスターボードは『魔法の杖』なんですよね。どう見ても杖ではなく石板やタブレット端末の類なんですが。
――――――――
よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます