第14話

まだ夜は肌寒い。

9時には消灯なので、9時過ぎに集合した。

亜理紗ありさが待っていると、武史たけしあいじゅんがやってきた。

もちろんテントを肩に担いでいる。


「よし、やるか」

いつもはペグをうちつけるのだが、ここは駐車場でコンクリートに打ち付けるのは無理だ。

なので、簡易的で開くだけでいいようなテントを使い、飛ばないように自分たち自身が中にいることで重しにすることにした。

寒いし、痛いだろうからとエアマットも人数分用意してくれていた。

相変わらず、武史の準備に余念がない。


バタバタと準備している様子を英人は笑いながら、病室から見ていた。

英人が笑顔を見せてくれるだけで亜理紗は満足だった。

「狭いな」

「英人!」

英人は病室で過ごして、亜理紗たちがテントで過ごす予定だったが、英人はこっそり病室から抜け出してきた。

「大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫!枕を俺の代わりにしてきたから」

英人はそう言いながら、テントに入ってきた。

「キャンプって言えばこのぎゅうぎゅうのテントだよね」

小さなテントに5人ではいると、本当にぎゅうぎゅうになった。

「子供の頃は余裕で入れてたのにね」

「デカくなったもんなぁ。特に潤。今何㎝だよ?」

「178㎝かな」

昔の話をしている内に疲れたのか藍が寝始めて、つられて武史や潤も眠り始めた。


「英人、身体しんどくない?」

大丈夫と英人は笑った。

「ありがとうね。俺のためにキャンプしてくれてさ」

「ううん。私たちもやりたかったし」

「お弁当もありがとう」

「いや・・・あれは失敗してたし」

「美味しかったよ。また作ってほしいな」

「うん」

「ずっとこうやって過ごしてたいな」

英人は眠っている武史たちを見て微笑んだ。

「過ごせるよ、ずっと」

「もっと時間が経ったら、みんなの子供も一緒に過ごすことになるかもな」

「きっと藍の子供は藍に似て武史に怒ってそう」

「確かに!」

少し英人は黙って「俺たちの子供はどんな感じかな」と恥ずかしそうに言った。

「きっと英人に似て優しい子だよ」

亜理紗がそういうと、より恥ずかしそうになって「うん」といった。


「少し寒いね」

亜理紗がそういうと、そっと自分がきていた上着を肩にかけた。

「そんなことしたら、英人が寒いじゃん」

「じゃあこうしよっか」

2人でくっついて一緒に上着にはいった。

「あったかい?」

英人ににこっと聞かれて、「うん」と小さく亜理紗は答えた。

上着の温かさなのか、恥ずかしさでなのか、どちらかわからないが、温かくなった。

その後も色々話していたが、気づいたらお互いもたれあって寝てしまっていた。


「ん・・・」

目が覚めて、うっすら目を開けると、なんとなく外が明るくなっている。

「英人?」

英人もあくびをしながら、目を覚ました。

「気づいたら寝ちゃってたな」

「ねぇ、ずっとここにいて大丈夫?さすがに看護師さんにバレるんじゃない?」

「やべ!」

英人は「またな」と言って、病室に戻っていった。

その後、撤収しようとしてある程度片付けた時に警備の人に見つかった。

「何してるんだ!」

「逃げるぞ!」

武史の一言で急いで走り出す。

なんとか捕まらずには済んだが、英人が抜け出したことがバレて後日全員そろって怒られることになった。


□■□


「あれはめちゃくちゃ怒られたよな」

「ほんとに。特におばあちゃんの怒りようには本当にビビった」

おばあちゃんは、もし英人君に何かあったらどうするのか、みんなだって夜中に外にいて何かあったらどうするのかと、1時間以上説教された。

「母さんは感謝してたけどな。心配はかけるなって言われたけど、少し規則を破って元気なくらいがいいわって」

英人はその時のキャンプの写真を見ながら、「藍の子供は藍に似てたな」と言った。

「うん」

2人の子供は可愛らしくて男の子だけど、藍に雰囲気が似ていた。

「僕達に子供いたら、優しい子だったかな・・・」

「英人に似た可愛くて優しい子だと思うよ」

そう言うと、英人は少し寂しそうな顔で笑った。


□■□


高2になっても英人は、高校に戻ってくることは出来なかった。

進級はできたので、クラスに名前は載っていて、亜理紗と同じクラスだった。

武史と藍も同じクラスで、潤は無事に同じ高校に入学した。

亜理紗は新しいクラスの教室で席に座った。

英人の席だけが空いている。


(あそこに本当は英人がいるはずなのにな)


それでも時は流れて、何事もなかったようにどんどん授業は進み、あっという間に、季節は夏になっていた。


「英人~」

亜理紗は病室に入ると、英人は眠っていた。

ベッドの横の椅子に座ろうとすると、扉が開き、「亜理紗ちゃん、ちょっと」と英人の母に声をかけられて、少しロビーで話すことになった。

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