第21話【婚約者との夜】
時間帯は深夜。外は暗くなり静まり返っている。もう大路地からも人の声は聞こえてこない。たまに酔っぱらいが野良犬のように喚いているだけである。
そこはシマムの酒場の三階に設けられたマキちゃんの寝室。その部屋で俺とマキちゃんは二人で過ごしていた。
異世界転生して来て二日目であった。なのに早くも嫁候補をゲットした俺は、現在のところ彼女の部屋のベッドの前で全裸のままに正座をさせられていた。
それは、お預けである。少しばかり床板が脛に食い込み脚が痺れてきて痛い。
俺と婚約を結んだのは酒場の一人娘であるマキちゃん十四歳である。彼女は二日後には成人を迎えて十五歳になるのだ。
この異世界では十五歳が成人である。なので十五歳で堂々と結婚も出来るしお酒も飲める。
だから本来ならば結婚も許されるしイチャイチャだって問題ないはずなのだ。
そして、俺は、そのイチャイチャを期待してマキちゃんの部屋に全裸待機していたのだが、予想が少しばかり外れてしまう。
俺の目論見は初夜前からの連発発射の大フィーバーが予定。だが、予定は願望とともに砕かれる。そんなに世の中は甘くはなかった。
そして、現在のところお預け状態なわけである。
マキちゃんは俺が考えている以上に貞操が固かったのだ。まるで難攻不落の防壁のような守備力を発揮している。
そう、彼女は潔癖系なヒロインだったのだ。それは、決してパンチラすら許さないアニメのように鉄壁だったのである。婚約者なのにチューすら許してくれない。
そんなフィアンセとベッドの高低差を挟んで無言のままに向かい合う。彼女が俺を睨み、俺は俯き視線を床に落としていた。
彼女は怒っていた。
髪型が金髪のポニーテール。顔付きは少し強気な表情だが素朴で十分に整った可愛い子ちゃんである。
身長は160センチぐらいで痩せ型。なのに胸はなかなかに大きい。オッパイ好きならば十分に満足出来る程にはタワワである。
そんな彼女が可愛らしい白の寝間着姿で俺が正座させられている前のベッド上で座っていた。全裸の俺をベッドの上から真剣な眼差しで見下ろしている。否、睨んでいる。
それに対して俺は躾を去れている子犬のように縮こまっていた。
そもそも今夜一晩だけでも同じベッドで一緒に寝ようかと思って彼女の部屋を訪ねたのだが拒否されたことから話が始まる。
俺的には、何もしないから一緒に寝ようと誘い、寝静まったころに布団の中でコッソリとソフトタッチから始り、彼女が抵抗しない事を良い事に少しずつ大胆に触れていき、どさくさに紛れながらもワッサワッサと乳を揉みしだいた最終的には彼女の花園に大冒険の進入を果たそうかと考えていたのだが、潔癖な彼女は同じベッドでの添い寝すら許してくれなかったのだ。
親が許してくれた婚約者なのにご無体である。この女は殺生なことにもお預けをしやがったのだ。
ここはこの作品がR-指定化されるかされないかの瀬戸際だったが、どうやらR-指定はされない方針で進むらしい。残念だと声を抗える読者もいるかも知れないが我慢してもらいたい。
「あの〜、マキちゃん。添い寝だけでも駄目ですか……?」
「駄目です!」
念の為に再び訊いてみたが彼女の意見は変わらなかった。本当に強情な嫁である。サービス精神に欠けている。
「なんで駄目なのさ。俺たちは婚約者だろ?」
「だって私はまだ未成年です!」
正論だ。
「でも、それもあと二日の我慢じゃん」
「なら、我慢してください」
再び正論だ。
「それに私たちはまだ夫婦では無いじゃないですか!」
御尤もである。
「でも、結婚を約束してるじゃないか」
「それで私が体を許したら、結婚前に捨てちゃうんでしょう。私だって酒場で働いているんだから、そう言う話は良く聞くんだからね。騙されないわよ」
余計な知恵を付けてやがるな。酒場のウエイトレスは侮れん。要らん智識ばかり蓄えおってからに。
ならば、ここは力任せで行くしかない。
俺のパワフルな加護があれば可愛らしいウエイトレスさんの一人や二人ぐらいは強制的にチョメチョメするぐらい簡単なはず。
否否否。それこそR-指定が確実になるどころか強制非公開すら有り得る大惨事になりえる行動だ。それは間違っても出来ないほどのアダルトサービス過ぎる。
俺の異世界転生ストーリーは、もっとスマートでエレガントに進めなければならないのだ。ゲスな考えは捨てよう。
だが――。
「しかし、マキちゃん。それは殺生で御座る……」
「殺生?」
「花も恥じらう十七歳の青少年が初めて出来た恋人を前に夜な夜な何もしないで指を咥えて我慢しろなんて地獄で御座るよ……」
「そ、そうなの?」
「爆発寸前で御座る……」
「爆発って?」
「むむむむむ。もう砲弾が暴発寸前であります、隊長!」
何せ可愛い女の子と一つ屋根の下で寝間着と全裸で向かい合っているのだ。この状況で人身事故が起きないほうが不自然である。
それに俺には見えるのだ。全裸の加護で強化された眼には伺えるのだ。
彼女の体のラインがはっきりと悟れる。
ネグリジェの下に膨らむ二つのタワワのサイズは特上のボリューム。なのに引き締まった腰つきはスマートで魅惑的。そして、安産型の骨盤はお尻の肉を飾り付けて美味しそうだった。
更には彼女の身体全身から漂ってくるメスの香りは蜂蜜とジャスミンをブレンドしたかのような爽やかな美臭。うっかり涎が口から流れ出そうなぐらい煩悩を誘い出していた。
だから俺は正座で組んでいる太腿の隙間からヒョッコリと松茸のように飛び出て来そうな一物を両手で蓋をするかのように隠すので精一杯だった。手の平に先っちょが当たって絶え間なく刺激して来る。
今ここで両手を退けてしまうと俺の願望が彼女に一目でバレてしまう。それだけは男の子の威厳を保つ為に阻止したかった。何より恥ずかしい。
「とにかく私は結婚初夜まで絶対に如何わしいことはしないと決めているの。だからサブローも我慢してよね」
「そ、そんな……」
「それが結婚の条件よ!」
「ええ〜……」
「だからとっとと部屋を出て行って。何か間違いが起きる前にさ!」
俺的には間違いを起こすためにやって来たのだが、その作戦は通らないようだ。厳しい。
しかし、今は部屋を出て行けと言う願いは聞けないのである。
何故かって?
それは、俺の一物が凛々しくも起立をしたまま大胆に静まらないからである。彼女が怒れは怒るほどに何故か俺の興奮が収まらない。たぶんM心が刺激されて収まりが着かなくなっているのだろう。
おそらく可愛らしく怒っているマキちゃんは、その事に気づいていない。自分の怒りが変態に燃料であるガソリンを汲めている事実に感づいては居ないのだろう。なんとも罪な乙女である。セルフS女王様と言ったところだ。
全裸正座を崩さないままに俺は涙ぐみながら願いを語る。
「お願いだ、マキちゃん。せめて同じ部屋で寝させるぐらいは許してもらいたい。同じベッドで寝かせてくれとか言わないからさ」
「分かったわよ。ならばそこで寝るのを許してあげる。床で寝なさい!」
「本当に!」
「ただし、私に近づいたら婚約は破棄なんだからね!」
「大丈夫、あと二日ぐらいは我慢できるから!」
「二日じゃあないわよ。貴方が冒険者として成功するまでよ」
「うん、大丈夫だ。二日以内に成功するからさ!」
「もう……」
すると唐突にマキちゃんが両手の指を絡めて印を組む。そして、魔法を唱えた。
「リストレインチェイン!」
「なぬっ!」
床に全裸で正座をしている俺の周りが魔法の光で輝いた。すると俺の体に輝く魔法の鎖がグルグルと巻き付いて来る。
拘束の魔法だろう。鎖の魔法は俺の上半身を大蛇のように力強く巻き付き縛り上げている。
しかし、俺が本気を出せば簡単に破壊できそうな強度だった。
それよりも、マキちゃんが魔法を使えることに驚いてしまう。
「マキちゃんって、魔法が使えたんだ」
「これでもマジシャス先生の二番弟子だったんだから。これでもレベル3までの魔法が使えるのよ」
「あの魔法使いの弟子だったのね」
俺が己の魔法で拘束できたのを確認したマキはベッドに横になると布団に潜り込む。そして、枕元のランプを消した。部屋が暗くなる。
「もう寝るわよ。明日もお店の準備があって速いんだからさ」
「はぁ〜い」
マキちゃんが眠りに入るのを見守ってから俺も床に横になる。魔法の鎖は俺の上半身を束縛しているだけで横になっても邪魔にはならなかった。俺も安心して眠れる。
女の子と二人で同じ部屋で寝るのは初めての体験であった。ちょっぴりドキドキして来る。そのためか、なかなか眠れなかった。
しかし、焦ることはない。少しずつ階段を登ろう。一歩ずつ確実に体験を積んでいこう。大人になることを焦らなくっても良いんだから。
そう考えながら俺は眠りに落ちて行った。
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