第32話
「次はどこ行く?」
「うーん、そろそろゲーム系の出し物も気になるかも!」
文化祭二日目、南雲と俺は学内を巡りながら、楽しい時間を過ごしていた。
さっきまではお化け屋敷を回り、その後は後輩のカフェでイチャつくような展開になり……結果、周囲の視線を存分に浴びることになったわけだが。
(いや、そもそもなんで俺がこんなに目立つんだよ……)
南雲光凛が学校の王子様的な存在だから仕方ないのかもしれないが、どこへ行っても注目されるのはやはり落ち着かない。
そんな俺の心情をよそに、南雲は俺の腕をガッチリとホールドしながら歩く。
「じゃ、次は……」
と、南雲が次の行き先を決めようとした、その瞬間だった。
「待ってください!」
鋭い声が響き渡る。
「……ん?」
振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
涼しげな目元にきっちりとまとめられた黒髪、胸元には風紀委員の腕章がはためいている。
「……
「はい、米内先輩、そして南雲先輩」
彼女――
普段は冷静沈着で、規律を守ることに関しては一切の妥協を許さない。そのため、男子生徒からは「騎士」と恐れられ、一部の女子からは「かっこいい」と憧れられている存在でもある。
そして何より――彼女は南雲を崇拝している。
「な、なんだよ……」
「お二人の行動が、文化祭の風紀を乱している可能性があります」
「……は?」
「私の目の前で、先輩たちがあまりにも人目を引くような振る舞いをしているので……取り締まり対象にさせていただきます」
「ちょ、ちょっと待って! 取り締まりって何のこと!?」
南雲が驚きながら言うと、堀湊は腕を組み、冷静に言葉を続けた。
「具体的には……公然と手を繋ぐ、過度に密着する、そして甘い言葉を囁き合う……。いずれも、健全な学園生活を守るために、許される範囲を超えていると判断しました」
「べ、別に囁き合ってなんかないよ!」
「ですが、今この瞬間も手を繋いでいますよね?」
「……う」
南雲は無意識のうちに俺の腕を掴んでいたようで、慌てて手を離す。
「い、今のは……!」
「南雲先輩、文化祭の場でそのような行動はふさわしくないと思いませんか?」
「うぐぐ……」
普段は冷静な南雲が、後輩相手に押されているのはなかなか珍しい光景だった。
しかし――
「……いやいや、待て待て」
俺は溜息をつきながら、堀湊に向き直る。
「文化祭の風紀を守るのは大事だけど、こんなの取り締まり対象じゃないはずだろ?」
「米内先輩、それは違います。確かに普段の校則では明確に禁止されていませんが、文化祭は特別なイベントです。ここで先輩たちのような行動を許せば、他の生徒も『これくらいならいいのか』と勘違いしてしまう可能性があります」
「……いや、ねぇよ」
「あります!」
堀湊はビシッと指を差し、断言する。
(……こいつ、めんどくせ)
俺は頭を抱えたくなったが、南雲がポンッと俺の肩を叩いた。
「ねえ、米内くん」
「ん?」
「ここは、私たちのデートを守るために、一つ……勝負しない?」
「……勝負?」
南雲はイタズラっぽく微笑む。
「ほら、文化祭なんだから、ゲームとか競技があるでしょ? そこで勝負して、堀湊が勝ったら、私たちはおとなしく風紀に従う。 でも、私たちが勝ったら……」
「私たちはこのままデートを続行する、ってことか?」
南雲はニヤリと笑って頷いた。
一方、堀湊は一瞬考え込んだ後、静かに頷く。
「……いいでしょう。ですが、私が勝った場合は、今日一日、二人が離れて行動するという条件を追加します」
「ふっ……受けて立つよ!」
こうして、俺たちは文化祭の催し物で、風紀委員の後輩との勝負をすることになった――。
▽
勝負の内容は「射的」。
お互いに三回ずつ撃ち、より多くの的を倒した方が勝ちというシンプルなルールだ。
俺たちと堀湊は、文化祭の特設ブースへと向かい、いざ勝負が始まった。
「じゃあ、先攻ね!」
南雲が笑顔で銃を構え、トリガーを引く。
――バンッ!
見事に的の真ん中を撃ち抜いた。
「やったぁ!」
「お、お前、上手いな……」
「ふふん、米内くんとデートするためなら、このくらい余裕だよ♪」
対する堀湊は、表情を崩さないまま、銃を構える。
――バンッ!
彼女もまた、正確な一撃を決めてみせた。
「……やるじゃねぇか」
「風紀を守るためですから」
二人とも一歩も譲らず、互いに二発目も成功させる。
そして、迎えた最後の一発――
南雲は落ち着いて撃ち、完璧なショットを決めた。
「よっしゃ!」
一方、堀湊は――
「……っ!」
焦ったのか、ほんのわずかに狙いが逸れ、的の端をかすめるだけだった。
「……」
「おおっ! 私たちの勝ち!」
南雲は満面の笑みを浮かべ、俺の腕に飛びつく。
「だから、米内くんは今日一日、私とデート続行!」
「……ちっ」
堀湊は悔しそうに拳を握る。
「……今日はこれで見逃します」
「よーし! じゃあ、次の出し物行こっか!」
こうして、俺たちは南雲とのデートを続行することになったのだった――。
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