第32話
たくさんの漁師が集まる倉庫の中では、水揚げされた魚が次々と運ばれていた。
まだ6時を迎えたばかりだ。
薄暗い空の下で、港に帰ってきた漁船が「仕分け」と呼ばれる作業に入っていた。
漁船に取り付けられたクレーンで吊るされた巨大な網が、船の中から引き揚げられていく。
網はまるで風船みたいだった。
引き揚げられた魚たちがぎゅうぎゅうに詰め込まれ、逃げ場を失っていた。
小さいものから大きいものまで、よりどりみどりだった。
初めてその光景を見た時はびっくりした。
どうやって取ってきたんだろうって、不思議でしょうがなくって。
「山の丸」は“定置網”と呼ばれる方法で、毎朝魚を取りに行く。
漁師さん達が一年間で漁獲する水産物のうち、約7割の量を占める定置網漁業。
この方法で水揚げされた魚のほとんどは、その時点でまだ生きている。
中には死んでしまっている個体もいるけど、基本的には生きたままで、鮮度が保たれたまま沖へと運ばれてくる。
1年365日いつも海流に乗って魚が回遊している。
それをねらって捕獲する漁法の一つが、沿岸に何年にもわたって網を固定する定置網漁だった。
ロープや浮き玉で作った型枠を海上に浮かべ、海底に固定した「側張り」と呼ばれる構造物に網が吊り下げられていて、その骨組みに垣網(かきあみ)、運動場(うんどうば)、昇網(のぼりあみ)、箱網(はこあみ)というスペースが組み上げられている。
垣網は垣根のような長い網が海岸近くから沖へ延びて設置されている。
長いものでは800m以上もある。
魚からすれば、海の中に突如、迷路が現れたようなものだ。
回遊魚の群れは、壁のようにそそり立つ垣網に出くわすと、障害物を感知して向きを変え、より奥へと進んでいく。
こうした魚の習性を利用して、徐々に迷路の最深部へと群れを誘導した後、箱網の中に入ったたくさんの魚たちを引き揚げ、漁船へと積み込んでいく。
宮崎の定置網は漁港から船で数十分の近さにあった。
漁船は定置網に行って魚を取り、即座に氷水で生き締めにして、また数十分後には港の市場に戻ってくる。
クレーンで引き揚げられた魚たちは、あらかじめ滅菌され冷却された冷たい海水と氷が入れられた魚槽に入れられることで、一気に冷却され、仮死状態になる。
沖に着く頃にはほとんど動かなくなっていた。
漁船から降ろされた後、魚の種類や大きさによって分けられ、10kg1箱で発泡スチロールの中に詰められていた。
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