夕焼けを泳ぐのは「紅葉」のような「魚」だった
こむぎ
魚が泳ぐ夕焼け
俺は小さい頃から
自分の家が嫌で嫌でたまらなかった。
俺の家は森の中にあって、
いつ熊が出るか怖くてたまらない。
俺はじいちゃんと二人暮しで住んでいたが、
去年の初冬頃にじいちゃんは亡くなってしまった。
そんな嫌いな家に今も住み続けている理由は
俺が幼い頃、
不思議な体験をしたのが理由だった。
あの日、俺は家から少し離れたところで
遊んでいた。
じいちゃんには暗くなる前には家に帰ってこい。
そう言われてたのに約束を破って
俺は赤い空が見える頃まで遊んだ。
さっきまで真っ青だった空は真っ赤な空へと
変わり、辺りは薄暗くなってきていた。
俺はそんな真っ赤な空が怖くて歩けないでいた。
そんな時、
青々としていた木々が一気に赤黄色に染まった。
瞬間、その木々から金魚のような何かが
出てきて俺の周りをグルグルと回った後、
俺をどこかに案内するように空を泳いだ。
夕焼けを泳ぐ金魚が、
どこか風で揺れる紅葉のようで、
幻想的だと思った。
家が近づいてきた頃、
じいちゃんが俺を呼ぶ声が聞こえ、
俺は無我夢中で声のする方へ走った。
その時はその幻想的な金魚を忘れ、走った。
じいちゃんにはこっぴどく怒られたが、
その後に金魚のことを思い出した俺は
じいちゃんに話した。
その時のじいちゃんの顔は
いつもより暗い気がした。
そんな不思議な出来事。
忘れられない出来事。
俺はきっと、ずっと覚えている。
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