正反対異色コンビ
知恵舞桜
第1話 プロローグ
「お呼びでしょうか」
男は音を立てずに部屋に入ると、椅子に座っていた男に声をかける。
声をかけられた男は驚くことなく、にこやかに話し出す。
「ああ。ゼロ。お前に頼みたいことがあってな」
そういうと男は椅子から立ち上がり、窓に近寄る。
十七階から下を見ると、人が蟻のように見える。
男はそれが面白くて、ついフッと笑う。
「なんでしょうか」
ゼロが淡々と返事をすると、男は唐突に本題を切り出す。
「十年前に起きた、ある事件を知っているか」
「どの事件でしょうか」
「№000だ」
「はい」
ゼロは返事をする前にどんな事件だったかを思い出した。
ゼロがいる世界で事件を示す中でナンバーが使われるのは珍しい。
世界中の事件で絶対に触れてはいけない事件として記録されてある。
その事件は全部で137まである。
数字が小さいほど触れること許されない。
もし誰かが、ナンバーの事件を解決しようと触れたら、その者は二度と明日を迎えることはできない。
それほど危険なものだ。
ゼロは事件のことは知っているが、誰が犯人かはしらない。
どうやって殺したかも知らない。
そもそも興味がない。
それなのに、なぜ自分にナンバーのことを尋ねるのか疑問だった。
何のためにそんなことを聞くのか、男の次の言葉に集中するが、発された言葉はゼロが求めている言葉ではなかった。
「七海紫苑を知っているか」
「……はい。日本の探偵です」
ゼロは記憶の中から七海紫苑が誰かを引っ張り出す。
「ああ。そうだ、その通りだ。さすが、記憶力がいいな」
男はすぐに正解したゼロを誉める。
ゼロと七海紫苑は面識がない。
ただ、一度だけ授業で七海紫苑は自分たちとは相いれぬ存在で、最も厄介な敵だと教えたことがある。
ゼロはそのとき十歳で生き残れるかわからなかったため、それ以上は教えられなかった。
その三年後にゼロは殺し屋として活動していくが、そのときには七海紫苑は探偵活動をやめていたので結局教えてもらうことはなかった。
ゼロも問われるまで七海紫苑と言う存在を忘れていた。
「頭のいいお前なら、もうわかっていると思うが、次の任務は七海紫苑についてだ」
「わかりました」
「ただし、今回はすぐに殺すな。あることを調べてから殺してくれ」
「はい」
「詳しい詳細は、そこに書いてある」
そう言うと男は茶色い封筒を机の上に投げる。
ゼロは封筒を取り、中身を確認していく。
その中には七海紫苑のことだけでなく、これからゼロが演じるための男の詳細も書かれていた。
「とりあえず、今からお前はゼロではなく日本の高校に通う普通の学生。待雪草柴として過ごしてもらう」
「わかりました」
「全く、引退したなら余計なことはするなよな」
男はゼロが部屋から出ると怒りで壁を殴る。
男は自身の手から血が出ているのも気にせず、ポッケからタバコとライターを取り出し、火をつけて一服する。
一服したおかげで、少し落ち着いた男は七海紫苑の映った写真を投げ、今度はその写真に向かってナイフを投げた。
「余計なことをするから、また同じことを繰り返す羽目になったな」
正反対異色コンビ 知恵舞桜 @laice
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