対鬼人戦闘用強化人間 ―永遠の血―
とろり。
第1話 滅びゆく国
最初の発症者が出てからは加速度的に〝鬼人〟が増えていった。virus-XYZは寄生するように人間の体内で半永久的に生きる。だが、その人間が死んでも這うように死体から蠢き出る。そして別の人間にまた寄生していく。
政府は緊急事態を宣言した。ニホンは飛行機や船でなければ、他国に渡ることができない。逆もまた然り。よって〝鬼人化〟するニホン人が急激に増加した。世界の大多数の国々は鎖国同様の政策に移行し、ニホン人はニホンに閉じ込められた。
感染経路は未だにはっきりとはしていないものの、接触が第一原因ではないかと研究者は発表した。非接触者は家の中に隔離された。だが、〝鬼人化〟された人間は〝正常な人間〟を襲う。理性を失った〝鬼人〟は鬼人化されていない人間の生肉を喰らうのだ。
緊急事態宣言が出されて一週間が経つ頃には〝鬼人〟の数が正常な人間の数を上回った。もはや打つ手無しと政府が諦めていると、外国政府から電話が入った。
「対鬼人戦闘用強化人間を派遣する」
「し、しかし、我々の国では90%が鬼人化している。駆逐できるのか」
「任せてくれ」
ニホンに対鬼人戦闘用強化人間が派遣されたのは、その一報から数時間後だった。軍用ヘリ一台がチバ沿岸基地の廃墟に到着すると、一人の女性が降りた。
長めの黒髪を後ろに束ね、無表情な顔で遠くを見つめていた。
外国の軍用ヘリは女性を降ろすとすぐにその場を離れた。女性はチバ沿岸基地からその場の戦闘車両を動かすとトーキョーへと向かった。
「なんだって?! 女一人だと?!」
「ええ。ですが、確かに強化人間だとの連絡は入っています」
「くそっ! 女一人に何ができる! この国をバカにしているのか!」
「女性は〝エイル〟というネームだそうです。彼女は今、我々のいるトーキョーへと向かっています」
「ふんっ! わしは海を渡るぞ!」
「しかしそれでは軍の忠誠が保たれません」
「そんなもんは知らん。パイロットを準備させろ。このシェルターも聖域ではないんだよ」
「わ、分かりました……」
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