42話 中央構造線って?何いってるの?

原因不明の局所寒冷、それは悪霊域界が超強力で周囲に冷気が伝播、それが局所寒冷を起こしているとモリヒコは考える。

モリヒコは、その悪霊が柏崎から内陸へ、日本を東西に分ける大断層の中央構造線に向かうと仮説。


その中央構造線こそが龍脈という仮説を宮内庁の二人に話し、今後の情報収集のため、二人を巻きこもうと興味を引く種をまいていた。

蒔きすぎに注意しながら。


 【モリヒコ!疾風を生んだ銀龍が言っていた『龍脈をたどり龍族を育てよ』の龍脈なのか?】ミトが興奮して聴いてくる。

モリヒコが平然と「龍脈」といったことでミトは興奮していた。


「待って。オオナって何?」モリヒコの言葉で引っかかっていた一水が突っ込んでくる。

 さすが観察力に優れた人だ。

「オオナとは私たち日本人のことです。」モリヒコは答えた。

「昔の言葉でオオナおおきいに対応する単語はスクナ、ちいさいよ。」綾子が言う。

さすが書陵と管理と分野は違えど基礎知識はしっかりしていた。


 「あっ!」一水かずみと綾子が同時に叫ぶ。春の嵐吹く、だいわ神社の奥の院で一瞬、砂埃に浮かんだ小さな人型。


 「ほんの数十人のオオナのみが知る葦原の中津国=日本の二つの民族と神と皇族の盛衰。

それはオオナの世界でも2600年ひきつがれてきた

絶対の秘密事項です。

しかしその歴史は、オオナの記録の始まる遥か前から、

スクナビコナによってひきつがれてきたと聴きました。

縄文弥生交差時代、古事記通りならもっと前からかもしれません。でも今二つの民族に危機が迫っている感じなんです。


この冷気の的確な情報と違う視点での知恵が欲しい。だから今日、僕はここまでお話ししました。ただもしお力をお借りできるとしても、秘密を守るため「命」を預ける必要があります。漏れたら、だいわ神社の神様騒ぎどころでななくなります。おそらく世界規模で大変なことになるでしょうし、それにより日本を窮地に追い込むかもしれません。いやらしい話でしょ。」


 静まる二人にモリヒコが微笑む。

「怪しい話と思われますよね。そろそろお役所のお昼時間も終わる時間ですね。……えーと、バイトは続けていいですよね。」

ふわっとした、いつものモリヒコ調で言った。


 ------。しばらくの沈黙の後、綾子が言った。

「狂人とは思わない。でも命を預けろということ自体は狂人と誤解されてもしょうがないわね。気軽に”わかりました”なんて言うわけないじゃない。」綾子が言う。

 「ですよね~。そうなんです。興味があるとかのレベルではないのです。」モリヒコがいう。

そうだよな~わけわからず命はかけられないもんな。


【我々は困っている。西川一水、葛城綾子。】

カエデがフライングして、モリヒコと二人にテレパシーした。【たまたまの出会いだが、とても重要な出会いだと思っている。しかし半端な気持ちでは本当に命を落とす。

我々を守るため2度にわたってモリヒコも死にかけた。

首筋の怪我が見えるだろ。

でも今我々は二人の力が必要だと思っている。

緊急事態なのだ。ここまでで結論が欲しい。

それに、これ以上モリヒコが話せば、否応なしに二人は命を預けることになってしまう。】

「カエデさん、ありがとうございます。」モリヒコが言う。

 名前を呼ばれた一水と綾子はモリヒコの方を見たまま動かなかった。意識が真っ白になっていた。


「今の声聞こえましたか?カエデさんのテレパシーです。幻聴じゃないですよ。お二人に話したのですから。」

モリヒコは動かず前を見たまま説明した。

右首筋のけがれにやられた後をそっと触っている。


「どんな時に、命を亡くすのかしら?」。表現を変えて一水かずみが聴いた。

「二つです。一つは、穢れや怨霊、または物の怪という悪霊に殺される。僕は右耳タブとこの傷跡だけで命を拾いましたが、今のテレパシーの持ち主達がいなければ死んでいました。

そうなれば、だいわ神社一帯からの局所寒冷が今も拡大していたかもしれません。」

 「もう一つは?」一水が聴く。

「知った秘密を漏らした方の口封じです。これは漏らされた人にも及ばさなくてはなりません。」モリヒコが言う。

「じゃ、何故今話しているの?」綾子が突っ込む。

「今までのお話なら、だれも信じない頭の可笑しい奴の作り話に聞こえるでしょ。皆さんも笑われて終わりです。」

 「どうやって口封じするのよ?」

「カエデさん お願いします。」

【わかった。】カエデが答えた。

 ”うっ”二人の身体が動かなくなった。

「カエデさん、もう少し。」とモリヒコ。

二人の呼吸がみるみる荒くなる。

5秒くらいたっただろうか、「もういいです。」

モリヒコが言った。

二人の呼吸がもどり、身体も動くようになった。


「だいわ神社でも経験されましたが、身体の動きを様々に止められるのです。場所と力の強弱がつけられます。

心臓が止まるかもしれませんし、

運転中に身体が動かなくなるかもしれません。

プールで泳いでいる時に身動きができなくなるかも。

いずれにしても事故死。

そして皆さんの気配はすでに把握されています。

隠れることはできません。

ちなみに私だって同じ境遇ですから。

神社に来ないでといったあの時は巻き込みたくなかったからですがその後出雲の寒冷で状況が危機的に変わりました。」

モリヒコが言った。


 ちょっとした沈黙。 モリヒコは立ち上がった。

「話は以上です。ありがとうございました。」

一水と綾子はモリヒコを見た。モリヒコが言う。

 「あの~。ところで来週からのバイトはできるでしょうか?」


【モリヒコ、バカなんじゃない?ね、一水、綾子】フミカがテレパシーした。

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