働く者

知人の大学教授があるものを発明した。

それは通称、「アバター」だ。


自身を投影させて、性格や顔や身だしなみまで自分に合ったものがアバターとして完成する。


このアバターを使えばいわばなんだってできる。猫の手を借りる状態が常に可能なのだ。


共同作業するにもよし、なんならアバターに全ての仕事や責任を任せてしまうのもいいだろう。


俺は早速、自身を投影させたアバターを作ることにした。


実験室の丸い形をした土台に乗ると、

もう片方の土台から自分とそっくりなアバターができあがる仕組みだ。



俺はそのアバターを使ってアバター自身に

会社に行ってもらうことにした。


そうすれば俺は働くていい状態が続く

いわば、自動的に金が入っていくシステムなのだ。


俺はそれから毎日、幸せな時間を過ごした。

アバターが仕事に行ってくれるから、俺は好きなことをたっぷりとできる。


給料は好きなことをしているだけで入ってくる。アバターを世話する必要もない。


アバターは勝手に、仕事から帰ってくると昔の俺のように、夜遅くに風呂入って飯を食って寝るだけの生活を送ってくれる。


でもそんなある日、アバターの表情が明らかに暗くなっているのを感じた。


アバターの俺は毎日、夜遅くに帰ってくるのが当たり前で、疲れた表情とともにすぐにベッドで眠りにつく。


独り言も多くなった。

「死にたい」だとか「ムカつく」と

ネガティヴなことばかり吐き出していた。


髪の毛を掻きむしったり、肌を引っ掻いたり

爪を研ぐ音が聞こえたりとストレスが溜まっているようにも見えた。



そしてとうとうアバターは動かなくなった。

ベットから起き上がる様子を見なくなったのだ。仕事に行く準備もせず、スーツを着たまま

ずっとアバターは寝ていた。


表情は疲れ切っていた。痩せこけていて

とても俺のアバターだとは思えなくなっていた


そんな中、俺は先輩である大学教授に尋ねた。


「アバターが動かなくなったんですよ

もう一体、作れないですかね?」


「いや、それは不可能だ」



「どうして?」



「厳密にいうと可能ではあるが、結果は同じだろう。君のアバターはすぐに使いものにならなくなる」


「なんでですか?すぐに使いものにならなくなるって!」



「それは君自身が使いものにならない人材であり、君が働き続けた結果が、今のアバターの状態なのだから。アバターは全てを投影するのだよ」



俺はそれを聞いて、口をあんぐりと開けて、立ち伏せることしかできなかった。

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