第55話 襲撃の後

「ほーん、何者だそいつ」

カールが朝食を食べながら言った。あの侵入者が話した目的はUSBメモリだったが、それが本当かどうかは全くわからなかった。

「ダレク〜、なんで撃たなかったんだよ〜」

なぜか当たり前のようにいるクレイが聞いてきた。…お前入院してるはずだよな?

「あいつとやり合ったらまずい雰囲気だったんだって。あと、お前なんでい…」

「そうだダレク、お前の銃の腕なら行動不能にするくらい余裕だろ?」

オーロンが俺の発言を遮って言ってくる。

「だからさ、お互い銃向け合ってる状況だったんだって。一発撃ったら一発帰ってくるぞ」

俺が呆れながら言うと、クレイが立ち上がった。

「そんじゃ、病院戻るぜ。抜け出してきたのバレたらまずいからな」

クレイがよろよろと玄関に向かう。まだ全身の包帯が取れてない状況なのに、なんで来たんだろうか…。全く理解できない。

「ダレク、お前の朝食あるから食いな」

ランディが俺の手に色々を押し付けてくる。パッと見て目に留まるものがあった。

「なんでブラックコーヒー…」

ランディが悪意しかない笑みを浮かべる。俺はコーヒーには手をつけず、パンに噛みついた。


◻︎ ◻︎ ◻︎


「………」

人通りが少ない市街地を通り抜ける。まもなく路地裏に出た。ダレクが言っていたのはこの辺りだろう。

「…流石になんも残してねぇな」

わずかな希望を持って来てみたが、いなかった。おそらくダレクが言っていた人物は、俺の病室に現れたあの少年と同一人物だろう。

「…ルタードの口」

その言葉について、誰にも言っていないことが一つあった。俺とダレクがいた孤児院の門。一度逃げ出したから見ている。あの忌々しいマークが刻まれていた。この記憶はなぜかくっきりと覚えていた。

「過激派組織がなぜ孤児院を?孤児院を卒業した者を狙っているのか?カルンツァミア側ならなぜペルニヒに孤児院を作る?ダメだ、わからねぇな」

考えれば考えるほどよくわからねぇ。路地裏を抜けようとした時、後ろに気配を感じた。

「ッ!!」

振り向いた時にはもう遅かったようだ。

「…ぅあ」

背中に熱い感覚が広がった。…誰がやったかはなんとなくわかる。あのクソ野郎…。このままここにいれば死ぬのは明白なんだよなぁ…じゃあ、道連れにするしかないよな!?

「悪いね。上が君も殺せって言っててさ。ところで、チョコレート美味しかった?」

ドクドクと激しく脈打つ心臓の音が嫌に響く。敵の位置は歪んでよく見えない。でもいい、大体のシルエットがわかれば刺さる。

「…美味しかったぜ!!」

腰からナイフを引き抜き、そのままそいつの体を切りに行った。が、掠りもしなかった。ナイフが手の中から落ちていく。それと同時に膝が崩れる。アスファルトが冷たい。

「そりゃ結構」

そいつはトーンを変えずに言い、その場を立ち去った。あーあ、終わったかなぁ…?間違いなく腎臓に刺さったはずだ。最近腎臓の扱いが酷くないかい?ぁあ…意識が…


⚫︎ ⚫︎ ⚫︎


俺がブラックコーヒーに牛乳を混ぜていると、ランディが呟いた。

「なんか嫌な予感する…」

カールがテレビから目を外して言った。

「奇遇だな、俺もだ」

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