第17話 王城周辺観光。そこで見たものとは!?

 朝の支度も終わり、母と父と共に王城周辺の観光をすることにした。観光といっても見晴らしのいい場所があるわけではない。なにせ、王城そのものが観る対象なのだから。故に、今日の王城周辺の観光というのは母の実家を紹介してもらうようなものだ。


「じゃあ、行きましょうか。」


 ――――――


 母の号令に従って付いていく。

 まずは、部屋から出て、玄関があるホールまでいく。そこまでで思ったこと。とにかく広い!!私はこんな家に、というかお城に住みたくはない。

 だって、部屋から出て、玄関に着くまで10分歩かなくちゃいけないんだよ!?おかしいでしょう!?

 母の部屋は真ん中の塔の中間あたりだ。部屋の説明をするのになんて言葉を使うことが来るとは思ってもいなかった……。

 玄関も中央にあるから降りていくだけなんだけど、それでも遠い。あっちの塔はどうなっているのか……。

 まあ、王城とは公務を行う仕事場という側面も持っているから仕方がないのかもしれないが、せめてエレベーターが欲しい!!ずっと階段はきついよ。とはいえ、私がここに住むわけでもないから仕方がない。郷に入っては郷に従えというし、ここはスルーしておこう。


「やっと外出られたぁ!!」


 私は玄関から出てすかさず叫んでしまった。思いのほか外が恋しかったようだ。前世はあれだけ引きこもっていたのにこれだ。精神と環境の変化はとても大きい。まあ、引きこもりといっても、外が嫌いなわけではない。人の目が嫌いなのだ。この世界ではを知る人はいない。そんな環境が私の心を変化させてくれているのだと思う。


「あらあら、大変だった?」


 母は慣れた感じに歩を進める。全然帰ってきていないとはいえさすがは実家。体が覚えているのだろう。


「大変だろうさ。部屋から玄関までの長さありすぎだろ。……まあ、うちもそんなに変わらねぇか。」


 父も言葉を紡いだ。なんと、父の実家もこんな感じであると聞こえた気がするが、まあ、聞かなかったことにしておこう。


「長いよぉ〜!でも、これからが本番だね!!」


 そういうと、私は母と父の手を取って走り出した。いろいろ話してスッキリした私は清々しい気持ちだ。


「……そうね。これからが本番よ。お城が大きいということは、そのお庭はもっと広大よ。」


 母が現実を突きつけた。まあ、それはそうだろう。今日中に回り切れるかどうかと思うくらいだ。


「いいよ!さっ!行こう行こう!!」


 そう言って、私は両親と共にお城の周辺を回ることにした。……もっと言えば、お庭散歩だな。


 ――――――


 いや、思った以上に広い……。お城の大きさは某夢の国のお城よりも大きそうだし。お城の周りをぐるっとするだけでも1時間はかかる。それに加えて畑やら花畑やら闘技場なんてものもあった。本当にもはや某夢の国って感じだ。他の国もおんなじ感じなのかな……?

 ただ、気になったのは至る所にある魔法の痕跡があることだ。この国は魔法使いサンローランの子孫が繁栄させた国であり、魔法に関しては大陸で1番深い見識を持っている。至る所に魔法の痕跡があることが普通なのだろう。

 私たちが散策していると、ある新聞が飛んできた。


「あ!すみませーん!風で飛んじゃって!」


 その新聞の持ち主である庭師だろうか?が、走って新聞をとりにやってきた。新聞は父がパシッと捕まえて、庭師に返却する。


「気をつけてな。」


 父は一言いうと、庭師も返す。


「はい。すみません。……あまりにも嬉しくなってしまい……。」


 庭師はその新聞の内容に嬉しくて呆然としていたところに風が吹き新聞を飛ばされたと言った。


「……嬉しくて……?ちょっと見せてもらってもいいか?」


 父は返した新聞をまた貸してもらい、その内容を確認した。


「……なるほど……。」


 父は何か納得したようだった。


「どうしたの?」


 私は気になったので聞いてみた。母は何やら知ってそうな微笑みを浮かべていた。


「ああ、これ見てみろ。」


 父から渡されたその新聞にはデカデカと号外!!と書かれていた。見出しは


「聖女の誕生」


だった。

 ……!?私のことか!?みんなに周知させるっていうのはこういうことか。内容はうまいこと私の存在はわからないようになっていた。内容はざっとこんな感じだ。

 魔王を打倒しうる力を有した聖女様の誕生。

 聖女とは何か。

 すでに動き出しているということ。

 そして、最後にはこう括られていた。


「聖女様がおられる限り安寧は約束される。最大限の協力を!」


 安寧は約束される!?!?ちょっと大袈裟に言い過ぎじゃないかな!?これじゃ過大広告だよ!?


「ありがとう。」


 父は私から新聞をとりに、庭師に再度返却した。庭師はそのまま仕事に戻っていた。ただその足どりは軽やかなものだった。


「……流石に言い過ぎじゃない?」


 私は思ったことをぼやいた。


「ふふ。仕方がないわ。今の今まで、私たちはすがるものがなかったのだもの。市民のみんなにすがるものがを与えてあげて、生活が少しでも豊かになればいいと思ったのよ。」


 言いたいことはわかる。確かに恐怖に怯えながら生きていくよりはいいだろう。


「それでも、言い過ぎだって……。私はのプレッシャーが半端じゃないよ。」


 みんなはいいかもしれないけど、私に対するプレッシャーは相当かかっている。少しでも失敗すれば糾弾されるのは私な訳だし……。

 ん?いや、私の正体はバレていないから、私に直接来ることはないのか……?みんなが思う「聖女」という偶像が全てを肩代わりしてくれる。とは言っても、それは私に向けての言葉なんだろうし……。ごちゃごちゃになってきた!!とりあえず、直接私が何か言われることはないんだ!と思って気楽にやっていこう!


「正体バラさないのは思いの外メリットがあるのかもしれないわね。」


 母は意外だと言った。確かにメリットはあるかもしれない。仮に敵がいたとしても、その敵が私を見つけることは容易ではないだろう。このスタイルを貫いていこうと心に決めた。

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