第10話 聖女再来。史実の裏に隠された真実!?
「一つ心当たりがある。」
王様は私の存在に心当たりがあると言った。ここでいう私のことというのは、私、サーシャ個人のことではなく、魔力総量1000を初期値で叩き出した者という意味であるだろう。私個人のことは誰にも知られてはいないはずだ。
「……!?心当たりとは!?」
父がその言葉に食らいついた。父からしても魔力総量1000は異常なのだろう。おそらく父は勇者の生まれ変わりと言われるくらいだから1000近い魔力量は持っているはず。だが、今までの努力や経験からそこまで行き着いたに過ぎない。初期値1000というのはそれだけ破格の数値なのだ。
「『古の物語』を知っているな?」
古の物語……。もちろん、誰もが知っている物語だ。この大陸の成り立ちにもなっている。サンローランだって勇者の仲間だった。
「もちろん知っています。この国、いえ、この大陸に住む者でこの物語を知らない人はいないのではないでしょうか?」
そう、それほどまでに有名なお話だ。
「そうであろうな。ここでの話は他言無用だ。」
王様はそう言って、隣にいる従者に耳打ちをした。それと同時に自分たち以外の人が謁見の間から出ていった。どうも人払いをしたようだ。
「結界もはらせてもらおう。」
そういうと、王様は手に持つロッドに魔力を込めて自分たちを包んだ。それほどまでに門外不出の情報なのだろう。それにしても、こんなに精密な魔法を1人で行使しちゃうんだから、魔法の技術もすごいな。
「では、準備もできたから話をしよう。」
王様は話を始めた。
――――――
勇者とその仲間たちは魔王を討ち取った。
全てはこの6人の勇者と聖人達の活躍であると伝えられている。だが、本当はこれは間違った物語。後世へ伝えるために体よく美化された物語だ。
本当の物語はもっと血塗られた物語だった。
あるところに1人の女の子が産まれた。
彼女は生まれつき神に愛されていたかのように複数の加護と膨大な魔力量を有していた。彼女はすくすく大きくなり、心優しく美しい女性となった。その時すでに魔王は世界を脅かしていた。なぜ彼女が物語に出てこないのか。それは、彼女が存在を隠していたからだ。神の御使と言える彼女の存在が知られれば魔王は黙っていないだろう。だが、いくら力があろうが彼女1人ではどうしようもない。彼女には信頼できる仲間が必要だった。
そこで、彼女は旅に出た。仲間を探す旅だ。そして、その仲間達と魔王を討ち滅ぼすことを目的としていた。
彼女の能力に、『対象の潜在能力の把握』がある。簡単に言えば対象がどれほどの強さになるかわかるというものだ。彼女はその能力を駆使して、6人の仲間を見出した。
そう、この6人が勇者と聖人達だ。突出して能力値が高かったのが勇者で、聖人達は何かしらの能力が軍を抜いていた。
彼女は6人を鍛え上げ、魔王討伐に向かえるようにした。
そして、とうとう、魔王討伐の日。
魔王は思った以上に強力で強大だった。勇者と聖人達の力をもってしても、皆、満身創痍で次の一撃で全滅してしまうことがわかりきっていた。
唯一、魔王と互角に戦えていたのは彼女だけだった。しかし、彼女は1人では勝つことが叶わないと察知し、最終手段をとることにした。
――魔王の封印だ。
物語では魔王は討ちとられたとしているが、本来は封印されているだけだった。そして、現在魔王として君臨している者はその
残滓だけで魔王クラスというのだから魔王の強さが異次元なのは明確だった。
彼女は巻き込んでしまった6人の命を守るべく、自身を犠牲にした封印を施すことに決めた。
そして、勇者と聖人達にこう言い残した。
「貴方達は最高の仲間です。巻き込んでしまって申し訳なかったです。私の分析不足でした。こんな惨めな私の言葉を後世には伝えないでくださいね。魔王は貴方達で倒したのです。これからの世に平和を……。」
彼女の最後の言葉を裏切るわけにはいかない6人は真実を秘めつつ、魔王討伐を吟遊詩人に歌わせて各地をまわらせた。
そして、今のアース大陸と各国と伝わっている物語が存在する。ただ、秘めたところで誰も覚えていないが……。
彼女は自身を犠牲にする封印を行ったが、それは自身の全てを犠牲にするものだった。その存在までも……。
より強固な契りを交わしている6人以外は彼女がいたことも忘れてしまう。6人の記憶には残っているのが救いだろう。6人は自分たちの直系に真実を伝えることにした。少しでも彼女に報いるために。
だが、存在を賭けた魔王封印も完全ではなかった。魔王の残滓は残り、今の世を脅かしているし、封印の際も力が足りず、勇者の力を借りたことで勇者にはある呪いがかけられた。
ともあれ、魔王は封印され、ひとときの平和が得られたのだ。
この時の全ての始まりである女性が「ウルス」。彼女はその心のあり方、力の強さから『聖女』と呼ばれるように伝えられている。
――――――
「まあ、簡単だがこれが真実の物語だ。」
王様は話終わるとそう締め括った。この話を聞いて何の目的で?という人はいないだろう。
「つまり……。」
父も勘づいたようで王様に結論を求めた。
「そうだ。サーシャは『聖女・ウルス』の生まれ変わりなのか、それに順じた力を持っている。サーシャはまさしく、今世の『聖女』だろう。」
うはぁー!聖女っていうから勇者よりは格下かと勘違いしてたぁ!魔王を倒したって言うくらいだから1番格上ということも視野に入れておくんだった!!失敗したぁ!!
しかし、聖女ということが明るみにでたか。どうしよう。
「……そんなことが!?」
両親も驚いている。私はまあ、聖女ということは知っていたが、聖女がそんなに位の高いものだとは知らなかった。
「サーシャ……。お前はどうしたい?」
と、ここで、王様から私へ丸投げの質問!?!?まあ、結局は私の気持ち次第なんだろう。それくらいの決定権が私に委ねられるのだからむしろ喜ぶべきか……。勝手に全て進められるよりはいいのかも。
「……えっと……。」
とは言え、いきなり振られてもという気持ちだ。
「とにかく何でも良い。サーシャの気持ちを知りたい。」
王様は私のことを1番に考えてくれているのだとその表情から見てとれる。私も真摯に答えなくてはいけない。だけど、私はどうしても譲れないことがある。
「えっと…、とにかく目立ちたくないです!!」
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