Front Warfare~ロボゲーで小学生プロゲーマーにボロ負けしたわけだが…~
みなかみしょう
第1話
ロボットゲームなんて流行らない。
そんな言葉はもう、過去の話だ。
世界は変わった。
「自分だけのオリジナル機体で戦ってみたい」。自分が考えた、自分だけのカスタマイズ。自分だけの為に作られた武装。自分が考えた特殊機能。想像の翼は際限なく広がり続ける。
そんな無茶に応えるゲームが世の中に出てきて、業界に巨大な楔を打ち込んだ。
それが、『Front Warfare(FW)』というゲームだ。
自分でカスタマイズした、自分だけの巨大ロボット『グランド・ギア(GA)』を駆り、外宇宙の惑星上でロボット同士で対戦する設定の大型ゲーム。
自宅のパソコンでGAを作り上げて、その場で対戦してもいいし、豪華な筐体が用意されたゲームセンターでプレイすることも可能。
FWはゲーム界の一大勢力となり、定着し、なんならゲームセンターを少し賑やかにした。
今日も地元のゲームセンターは盛況で、大型モニターはGA同士の激しい戦いを中継している。
「あの小学生、強すぎだろ……」
画面の中では細身の白いGAが大暴れしていた。軽量高速型の人型ロボットが、空中を高速機動しながら、フィールド上の対戦者を次々に撃破している。
得物は左手のランスと右手の盾に仕込まれたライフルのみ。少ない武装とは思えない強さだ。
「いや、さすがはプロだわ。なんか動きが全然違うわ」
「小学生に蹂躙されるの、たまらんなぁ」
「全員やられてるんだから、本当にな…」
周りで一緒に観戦している常連たちも口々に言う。
今、画面の中で大暴れしている白いGA。それを操っているのは、小学生のプロゲーマーだ。
名前は竜頭カリン。本名ではなくプレイヤーネームだそうだ。俺達FWプレイヤーの間のみならず、世間でもちょっと有名な子である。
ボブカットの黒髪に整った顔立ち、白いワンピースでも着れば似合いそうなお嬢様然とした見た目、それに反した力強い目つきと眉が「つよそう」と言われたりしている。
そして、とても強い。俺が通っているゲームセンターにふらっと現れて、次々と挑戦者を撃破している。
プロゲーマーが対戦してくれるなら皆、喜んで挑戦もする。プロとはいえ、小学生なら勝ち目があると思っていた側面もあるだろう。
しかしまさか、こうも手も足も出ないとは。
「あ、終わった」
誰かが言ったのは、白いGAがタンク型GAの弾幕を華麗に回避した時だ。直後、接近されてランスの一撃を受けて、ゲームは終わった。
「これで、今日いる常連はほぼ全滅だな。まだ遊んでくれるみたいだけど」
現在時刻、午後五時半。小学生はあと二回くらいの対戦が限度だろう。竜頭カリンはマネージャーっぽい女性と一緒にいて、六時前には帰ると宣言している。
「じゃあ、そろそろ挑戦しますか」
「お、ついに来たね。片谷君、今日の調子は?」
知り合いが楽しげに聞いてくる。本当に楽しそうだ。ゲームは楽しい。
「まあまあ、ですね」
「そいつは良かった」
軽く返して、俺は足取り軽く、筐体の並ぶ一画へと向かった。
俺は片谷泉水。このゲームセンターに二人だけいる、ランクSAのFWプレイヤーだ。
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