第58話 さよならの季節⑤ 夜々の家の邑珠姫Side
碧い煌めきが空の向こうにして、真っ直ぐに青い輝く鱗を持つ竜が降りてくる。
私たちは気づかなかった。ご本人も妻である花蓮姫も、長年お慕い申し上げていて失恋した私も。
世継ぎを殺されたと思った私たちは殺気だっていた。
「おのれ!
花蓮姫は花武皇子に飛びかかった。
だが、空から青い竜に乗った鷹宮さまが降りてきて、私たちは唖然とした。鷹宮さまの透き通るような瞳が爛々と煌めき、いつにもまして美しかった。
「どういうことだっ!?」
「
「あれはそういう意味だ」
「だからどういう意味だ!?」
「お前の中に眠る力を解放したんだよ。ついでに激奈龍の法術にかからないようにしてやった」
「!?」
私たちは呆然と成り行きを見守った。世にも美しい若君2人、それもそっくりな若君2人が煌めく鱗を持つ竜を従えて激しく睨み合っていた。
「荒技を使って申し訳ない。大体お前が早く力を示せば、激奈龍に狙われるようなこともないんだよ!」
花武皇子の言葉に鷹宮さまはぐうの音も出ないご様子で黙り込んだ。
鷹宮さまはやはり福仙竜だったか。
私は息を止めてしまって見入っていたようで、慌てて息をした。
「最上格の赤い竜より格下だが、同列で青い竜と黄色い竜がいるんだ。この可哀想な姫を助けてやれる」
花武皇子は平然と言い放った。清宮の天井には穴が空いているが、もはや誰も気にしなかった。
な……るほど?
冥々の家の
ですね?
「時間がない。早く助けてあげないと手遅れになるぞ」
花武皇子が言い、鷹宮さまはすっと真顔になった。
双子のようにそっくりなお2人とも福仙竜の主だった。決して暴いてはならない追及してはならない秘密があるのではないか……。
出世の秘密とか?
だが、私たちは言葉をぐっと飲み込んだ。
不敬にも程がある考えは口にすべきではないのだから。
「花蓮姫、鷹宮、行くぞ。精神統一しよう。彼女を助けようと念じるんだ」
その瞬間、光線が天を貫いた。赤い竜、黄色い竜、青い竜から放たれた光線により、あたりは数十倍明るくなった。
ま、眩しいわ……。
しかし、床に横たわった
「仕方ない」
小さな声で言って首を振った花武皇子は大きく息を吸って、声を張った。
「激奈龍には秦野谷国からも制裁を与える。激奈龍の皇帝には退任してもらうしかあるまい。激奈龍の世継ぎの楊飛皇子の命はいただく。
びくっと動いた
そしていきなり瞳をすっと開けた。
「あなたの狙いは何でしょうか。鷹宮さまそっくりの顔で、御咲の皇族の証である銀髪をしていらっしゃる。あなたはここで一体何をしているのでしょう?」
花武皇子は優しい瞳で私を一瞬見て、
「私の妃候補が危ないと聞いてね。御咲の鷹宮は今世最高美女には興味がないと聞いていた。ならば、秦野谷国の妃にという話はあった。そもそも御咲の国の選抜の儀は、花嫁修行としては最高の場所だ。男に出会わず、1年間もの間、詩吟、裁縫、琴と様々な最高級の教育を授けるのだからな。
私の胸を恋の矢が射抜いた。
だめよ。
こんな不意打ちはだめよ。
今世最高美女は意外とウブなのよ……。
私は真っ赤になった。頬が火のように熱い。
「
は……はい。
「あ!でも、まあり、気づいたのね!?」
私は
「あなた、気がついたわ!助かったのよ!」
私は泣いた。
だが、まだやることがあると思い直して
「まあり、分かっているわよね?」
「えぇ?あ……もちろんよ。許さないわ」
「花蓮姫?」
「もちろんよ」
「私もだ!」
美梨の君も花蓮姫もうなずいた。
優琳姫と
私たちは選抜の儀を汚すものを決して許さない。62家の姫としても、選抜の儀を栄えある前宮で過ごす私たちにとっても、心に鉄の掟があるのだ。
今宵の今日の天蝶節の花火は綺麗だろう。だが、その前にやらねばならぬことがあった。
私の入内は、予期せぬ展開になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます