第56話 さよならの季節③ 夜々の家の邑珠姫Side
選抜の儀第2位の
違う。
きっと違う。
何かがおかしい。
選抜の儀の8ヶ月の間、私は彼女と共に過ごしたのだ。
私たちは……決して……決して鷹宮さまに刃を向けるようなことはしないはずなのよ!
激しい恋は人を狂わせる。
でも、1点だけ私は彼女に対して絶対的に信頼している点がある。
御咲の皇帝一族を危うい立場に追い込むことは絶対にしないわ。
考えるのよっ!
「碧い石のついた櫛はあなたの贈り物ですか?」
私は
鷹宮さまそっくりの透き通るような瞳で私を見つめて、
「昨晩枕元に置いてあった櫛だろう?あれは
違う。
私のものではない。
私は
もしや、まあり、あなたが置いた櫛?
っ!!
分かったわ!
思い出した!
あれは、蓬々の家の
彼女が入内してきた最初の日に、鷹宮さまが『その櫛の飾りは蓬々の家の家紋の蓮と龍か?』と聞いた記憶がある。
私が今朝見た櫛は、黄色い石で作られた蓮がなくなっていた。龍の形も変だった。あの形は……龍の中に奈が隠されていた。
少し前のこと。
私は記憶を探った。
宦官が市中の賭場通いで責められる噂を侍女の汐乃が洗濯場で仕入れてきたことがあった。黄色く美しい飾り石を持ち歩いていて、どこからか盗んだものか、賭場通いで儲けて手に入れたのか、追求されたという噂だ。
噂を聞いた当時は何のことかまるで分からなかった。
御咲の国は碁盤の目のように整備されているが、賭場が多くある。そのあたりはぼったくり酒楼も多い。
身に余るような栄華を夢見て都にやってきて、夢が破れて賭場通いに明け暮れる田舎の子息がたむろすることも耳にする。
その宦官の名前は……確か奏山ではなかったか?
新しくやってきた選抜の儀の吏部尚書である奏杜の縁者である奏山だ。奏杜が間に入ってとりなして、今後2度と賭場に近づかないと念書を書くことでお咎めを免れたという噂だった。
身に余るような栄華を夢見て京都にやってきて、夢が破れて賭場通いにハマるというのはあるといえばある話だ。
なくなっていた黄色い蓮の形をした宝石は、奏山が持っていたという黄色く美しい飾り石だったとしたら、どうなるだろう?
もしそうであるならば、今となっては話が全く変わってくる。
黄色い蓮は皇子という意味もある。
赤い瞳で有名な
目の前にいるのは、秦野谷国の
何かが足りない。
違う……きっといてはならない人がいる?
激奈龍の皇子はどこにいるのだろう?
小顔でホクロが目尻にあり、いつもニコニコしている印象という噂の
先ほど、空から見た時に五色の兵の跡をつけていたのは奏山。
あれは、本当に跡をつけていたのだろうか。
彼は一体何をしていたのだろう?
奏山は蓬々の家の侍女の梅香に執心している気配があった。梅香は相手にしていなかったが。
彼は小顔でホクロが目尻にある。
いつもニコニコしているが、宦官かどうかはかなり怪しい。私たち若い女を見る目が怪しいのだ。
私は爛々の優琳姫と猛々の
2人も食い入るように
どうやって合図を送ればいいのだろう?
私の考えが正しければ、味方のふりをした「奏山」を警戒すべきだ。
私たちは62家の姫。
私たちは選抜の儀で選ばれて入内した姫。
私たちが教育されてきた長い年月と前宮で過ごした10ヶ月もの月日は、私たちの中にあるものを作り上げている。
それは、目には見えない、隣国からは決して見えないものだ。
「花蓮姫の時の
爛々の優琳姫と猛々の
2人はギョッとして私を見た。穴が開くほど見つめている。私は微かにうなずいた。
入内した初日、青桃菊棟で初めて会ったあの日、前宮の庭には美しく鮮やかなピンク色の
「
私は秘密の暗号を
これは、御咲の鷹宮妃選抜の儀第1位になった今世最高美女、夜々の家の
鮮やかな五色の帯をしめた黒装束の兵たちが勢いよく傾れ込んできて、私は彼らに法術を向けた。同時に黒い立体文字が浮かび上がり、風のように舞って五色の兵を襲った。
今回、鷹宮さまも暗殺計画の一部に入っていた。鷹宮さまが帝王
今朝、櫛が枕元にあり、それには既に法術がかけられていて、
私の推測が、正しければ、全てが腑に落ちる!
奏山の姿が見えて、私は彼に向かって最高級の法術を仕掛けた。
もんどり打つ曹山が
何?
あっという間の出来事だった。
私は崩れ落ちた。
優琳姫と
鷹宮さまには選ばれず、花武皇子に揶揄われたのかわからぬまま、私はここで死ぬのか。
一瞬、黄色い煌めく鱗を持つ竜が突然現れて
今宵は天蝶節だ。
思えば、朝から大変な日だった。
あぁ、今日が私の最後の日だったのか。
今世最高美女とチヤホヤされたから、失恋ばかりをしてあっけなくこの世を去るのか。
私は寂しいなぁと思った。
今宵の天蝶節の花火は綺麗だっただろうに。
私の入内は、予想もつかない展開となった。
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