第37話 後宮の花嫁生活は激甘で 花蓮Side

 福仙竜は煌めく美しい鱗を持ち、空を自由に飛び、万霊を掌握すると言う。特に赤と白の鱗を持つ竜は、最上格とされ、赤い煌めく竜、正式には帝王紅碧火薔薇宝こうへきかばらほうと呼ばれる。



 今日は温かい夜だった。綺麗な月が見えて、爛々の家から上納されたお酒を美味しくいただいた。


 私は鷹宮の腕の中にいた。


「そ、んなの……あぁ」


 私は首を振り、愛を確かめ合う鷹宮に唇を奪われた。


 帝王紅碧火薔薇宝こうへきかばらほうの主は私じゃない……と思う。



 鷹宮の愛は強烈で、最初から私の入内を要請し、子供の頃からよく知っていた鷹だとわかるや否や、ずっと好きだったのだと告白されて、怒涛の愛に包まれた。


 誘拐されて殺されかけて、陵辱されそうになった瞬間も、事が為される直前に鷹宮が救ってくれた。



「い、やなの……?」

「いやじゃ……ない」



 優しくも強めに抱きしめられて私の体は震えた。


「た、だ……私がそばにいては……こんなひどい目に遭わされる人たちがいると悟ってしま……あぁっ……」


 最後まで言わせないと鷹宮は口付けで天まで登るような心地にさせた。


 何もかもが蕩けてしまう……。

 

「俺は……離さないよ……だ、だって……あんな痺れるほど格好いい……ひゃっんっ」


 私に耳への口付けの反撃に出られて、鷹宮は声を震わせた。


「俺の愛が重かったら……いつでも言ってくれる?離さないけど……考えるから」


 透き通るような煌めく瞳が私を捉えて離さない。見下ろされた私は、その美しい顔を見上げて泣いた。


 幸せなのか、ときめきなのか、甘い感情で体が震える。


「俺の妻は花蓮がいい。わかって……愛しい花蓮」


 私は泣きながら切なくてうなずいた。この人から離れる事ができるか自分でも分からない。この人のそばにいる以上、この人や周囲の人に危険な事が及ばないようにするにはどうすべきなのか。


 そもそも……そんなことができるの?


 済々の父上と母上は福分と凶分は隣り合わせだとよく言っていた。


 これは福分だ。

 でも、凶分と思われる事が十分に起きた。


「し、あわせに……なれる?」


 私は愛しい鷹宮に聞いた。甘くて切ない感情に支配されて、体の奥がキュンとした。


「なるんだよ……今、こうしている瞬間が幸せだけど、もっとこれからずっと幸せになるんだ」


 温かい唇が落ちてきて、私の唇がふわりと包まれた。


 もうすぐ桜が咲く。

 鷹宮が23歳になる5月はまもなくだ。

 御咲の皇子の妃選抜の儀の期間は残りわずかだ。



 後宮の春の宮が生涯の家と定まった私。


 鷹宮が済々の実家に寄せて再建してくれたと知ったのはつい最近だ。


 済々の一の姫でありながら、傷物姫と蔑まれて、選抜の儀最下位の32位で入内した私は、第一妃の座が確定した。



 まだ、無事に生きていられる。


 現実か分からないよ……。

 赤い煌めく竜を私が呼び出すと言われることも、鷹宮さまに愛されていることも。



 

 今年は、鷹宮さまと共に満開の桜が見れそうだけれど……。




 今宵の月はとても美しかった。

 後宮に咲く梅の花は、すぐに桜や花海棠にその満開の座を譲るであろう。



 あぁ、好きな人の妻でいられるのに、これほど命懸けの座というのもなかなかないであろう。




 だが、鷹宮が頬を上気させて私に愛を囁く夜は、煌めくような花嫁生活の幕開けだ。



 覚悟を新たに、私は後宮の春の宮の主として生きていこう。迷いは捨てよう。自分の道を覚悟を決めて歩くだけだ。



「愛しているよ、花蓮」


 囁かれて鷹宮の体の温かいぬくもりに包まれた。




 私の後宮での花嫁生活は、予期せぬ展開が続くようだ。






 

      その後編 完

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