第37話 襲来

「ワンチャン襲って来ないって事もあるかな?」

 ビクビクしながら理瑚が話しかける。

「あー、あんな見た目だけど、攻撃とかは出来ないって事か。無いことも無いよね、指示通りに動く戦闘力を持った怪物を何体も作れたら、チート過ぎるもんね」

 そんな期待を胸に、山羊頭に徐々に近づく。


「あ、痛っ」

 後ろで理瑚がつまずいて転び、「ガチャッ」と、盾が地面に落ちる音がする。


「ヴィギィーン!」

 私達に気付いた山羊頭が甲高い声で嘶くと、それを合図に3体とも一斉に、こちらに向って走り出した。

「うわわっ、やっぱ襲ってくるパターンか!」

 理瑚が情けない声を上げながらも、急いで盾を拾う。


「来るっ!結構速い!」

 山羊頭が、頭から突っ込んできたところを、すかさず左に避け、そのまま、すれ違いざまに右手の剣を振り抜く。

「ギュギィー!」

 上下半分になった山羊頭は、断末魔の声を上げながら、光の粒になって消えた。


「舞ー!」

 やったと思ったのも束の間、理瑚が鳥野郎に襲われ、必死に盾で防いでいる。

「ビシュッ!」

 剣を縦に振り抜き、鳥野郎を一刀両断する。

「大丈夫だった理瑚!?」

「だ、大丈夫……あっー、来るよー!」

 ドスドスと足音を立てながら、1つ目の巨人が迫って来る。

 物凄い迫力だが、動きは速くない。目の前まで来た巨人は、持っている棍棒を大きく振りかぶってから、勢いよく振り降ろす。


「遅い!」

 巨人の攻撃を難なく避け、そのまま左足首を切断すると、巨人はバランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。

 私はすぐさま背中に飛び乗り頭を貫くと、巨人はうめき声をあげながら消えていった。


「ハァ、ハァ、やってやった……」

 私と理瑚が地面に座り込んでいると、委員長が走ってやって来た。

「やりましたね、2人共!危なげなかったんじゃないですか?」

「うん、舞のお陰だよ。鳥の奴がアタシに向かって来た時はビビったけどね」

 理瑚が苦々しい顔をして言う。

「えぇ、後ろから見てて思ったんですが、もしかして怪物達は、単純な行動しかできないんじゃないでしょうか?」

「えっ、どういう事?」

「2人に気付いた怪物達は、一直線に走ってきました。その時、鳥の怪物は棚加さんの方が距離が近かったんです。そして棚加さんに攻撃してる時は、緋影さんの動きには全く反応してないようでした。だから、簡単に斬る事ができた」

 確かに、空中に浮かんで、素早そうな奴だったけど、あっさり斬る事ができた。

「つまり、能力としては、侵入者を攻撃しろとか、単純な命令しか出来ないのではないでしょうか」

「そうか、委員長の推測通りかもしれないな。怪物を何体も生み出すなんて凄い能力だからな。流石に細かい命令なんて出来なそうだよね」

 それなら、まだ沢山いたとしても、勝機は見えてくる。怪物同士で協力されたら、対処が難しいけど、単純に向かってくるだけなら、順番に切り裂くだけだ。


 私は息を整え、校舎にそびえる高い塔を見上げる。

 クイーンめ、上から見てるのだろうか?

 私は意を決して理瑚と委員長に告げる。

「よし、怪物を倒せる事もわかったし、いよいよ校舎に乗り込もう」

 2人とも力強く頷く。


 ゆっくりと校舎に近づく。校庭側から直接校舎に入る場所は、昨日山羊頭が出てきた出入口1つだけだ。時間はある、慎重に進めよう。

 私達はその扉の前まで進み聞き耳を立てる。

 特に、音はしない。そっと扉を開く。


「ピギャース!」

 待ち伏せでもしていたのか、いきなり怪物と対面した。

 しかし、コイツは小さい。1メートルぐらいの黒い小鬼、ファンタジーものに出てくるゴブリンとかいうタイプか。手にナイフのような物を持っているが、恐れるに足りない。

 私が手早く倒そうと足を踏み入れると、ゴブリンは、途端に踵を返して廊下を走り出した。

「あっ、アイツ逃げるよ!」

 理瑚が声を上げ追いかける。私と委員長も後に続く。

 すると、少し先の曲がり角から、新たな怪物がヌッと現れた。

 身長2メートルぐらいある、鎧をまとった骸骨だ。腕が4本もあり、それぞれの手に無骨な剣をにぎっている。

「ワワワッ!?」

 理瑚が急ブレーキをかけ、私の背中に隠れる。

 くっ、罠だったか?廊下という狭い場所で、攻撃力の高そうな4本腕の骸骨!ゴブリンはその後ろで、様子を見てやがる。

「理瑚、委員長、巻き込まれないように、横の教室の中に逃げて!」

 ひとまず2人を避難させた。骸骨剣士とタイマンだ。所詮、自動運転の機械みたいなもんだろう、さあ、どう出るか……。

 骸骨剣士は、一歩間合いを詰めると、左右の剣を交互に振りかざした。

 精密機械のような動きで、スピードも速い!私はバックステップで、ギリギリかわす。廊下の左右の壁は、斬り刻まれボロボロになる。

 あっ、これはヤバイ!4本の腕は飾りじゃないみたい。

 私は予想を上回る骸骨剣士の戦闘力に圧倒され、たまらず理瑚達のいる教室に逃げ込んだ。


「ちょっと、舞も逃げてきてどーすんの!?」

「ゴメン!コイツ思ったより隙が無い」

「ワ、ワッ、来るよー!」


 骸骨剣士もドアを破壊して教室に侵入すると、隅で小さくなっている理瑚と委員長には目もくれず、真っ直ぐ私に向かって来る。

 コイツ私をロックオンしてるのか?ジリジリと後退する。

 それを見て、委員長が骸骨剣士の後ろに回ると、そばにある椅子を投げつけた。

 骸骨剣士は振り向きもせず、左手の1本の剣で叩き落とす。

「コイツ後ろ見えてるの?アタシもヤッてやる!」

 理瑚が骸骨剣士の右側にまわる。

「委員長、一緒にいくよ!せーの!」

 2人同時に椅子を投げつけると、左右の剣で叩き落とした。


 コイツこんなに正確に!でも、その正確さゆえに、動作の予想はつきやすい……!

「見えた、コイツの攻略!委員長、理瑚!私が今だって言ったらコイツに椅子を投げて!」

「えっ?わかった!」

 2人が椅子を持って構えると、私も椅子を掴み、骸骨剣士の頭上高く放り投げた。

「今だ!」

 私の掛け声で2人が椅子を投げ、同時に私も骸骨剣士に斬りかかる。

「1本対1本なら私が勝つ!」

 骸骨剣士が3本の手で椅子を払い除け、残りの1本の手で私に斬りつけたところを、しゃがんでかわし、剣を振り抜いた。

 上半身が分離し、頭から落ちた骸骨剣士は、ガシャガシャと骨の崩れる音と共に、光の粒になって消えた。


 手をついて床に座り込む私に、理瑚と委員長が駆け寄る。

「やったね舞!」

「危なかった……でも所詮作り物だね、頭は良くないみたいで助かったよ」

「でも、あんな恐ろしい骸骨に飛び込む勇気は尊敬します」

 委員長が声を弾ませる。

「委員長が、はじめに椅子を投げつけてくれたからだよ、あれで奴の動きを掴めた」

 私達は快勝を分かち合った。3人が協力すれば、この先もやっていけそうな気がする。

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