第16話 仲間
「理瑚!ありがとう、理瑚のおかげだよ!」
「へへーん、盾だって攻撃も出来るんだから。アタシも少しは役に立ちたいし!」
理瑚は、地面に落ちた盾を拾って土埃を払う。
しかし丈夫な盾だ、あのパンチのラッシュを受けても、凹んだりしない。本当に何でも防ぐのかもしれない。
「それにしても、アタシの目に狂いは無かったね、徐杏たち3人ともやっつけちゃうんだもん。運動神経も抜群じゃん!」
「言われてみれば、体は現実より思い通りに動く気がする。夢の中だからかな?」
「へぇ~、アタシは特に変わらないけどねー。でも、舞なら本当に夢の世界制覇出来ちゃいそうだよねー」
「う〜ん、まだ四天王はもちろん、クイーンだっているしね、一体どんな能力を身につけたのか、油断ならないよ」
「確かにね、漫研の奴等には、能力を知ってたから、うまく立ち回れたってとこもあるよね。これからは情報力も大事になるね」
そうだ、相手の能力を知ってるのと知らないのでは大違いだ。よく能力バトルの漫画で登場人物が能力を読み合うのを思い出した。本当に自分がその中に入り込んだ気分だ。
それに何よりも、理瑚がいたのが大きい。多分一人じゃ、あっさりやられていた。仲間を作るといい……ホークの言った通りだ。
私と理瑚は流石に疲れたので、新たな敵に見つからないように、トラックの横にある建物に入って休む事にした。
「えー、何ここ?選手の控室みたいな?なんか自販機っぽいのあるけど……」
理瑚がボタンを押すと、ガラガラと音を立て、取り出し口にジュースが落ちてきた。
「お金いらないんだ!?ジュース飲み放題じゃん!ほら、舞も飲みなよ!」
私は理瑚と一緒に備え付けのソファに座り炭酸飲料を飲む。
「は〜、ここイイねー、ここをアタシ達の拠点にしようよ」
「確かに良いけど、現実ではこんな立派な控室は無いからね。恐らく陸上部の奴等がイメージして作られた場所だと思うんだ。そいつらは、もういないから明日には、元の寂れた建物に戻ってるんじゃないかな?」
「マジで!?そういうもんなの?じゃあ今のうちにジュース沢山飲んどこう」
えっ、そういう発想?理瑚は片っ端からボタンを押してジュースを取り出すと贅沢に一口づつ飲みだす。理瑚って、なかなか個性的な子だよな。
「ぷはー、もう飲めない、お腹タプタプだよ。ふぁ〜、くつろいでたら何だか眠くなってきたな。寝てる間に襲われないように、何処かに隠れて寝なきゃ駄目だよね」
理瑚があくびをしながら、窓の外を眺める。
「いや、寝てる間の心配はしなくていい。その間は夢の世界からいなくなるみたいなんだ」
「いなくなる?姿が消えるの?」
「多分。でもまた夢の中に入った時は、そこからだから、目立たない場所がいいけどね」
「へぇ〜、舞って、この世界の事詳しいよね。結構前からいるんだっけ?」
「いや、理瑚とそんな変わらないと思うんだけど、ホークとか言う男に会って教えてもらったんだ」
そう言うと理瑚が驚いて目を丸くする。
「えっ?男?男がいるの?」
「うん、2回ほど会ったんだけど、その人はこの世界に長い事いるみたいで詳しかったよ。でも能力無いので隠れて過ごしてるとか言ってたなぁ」
「えっ?えっ?イヤ、誰なのよそれ?」
「えっ?誰かは知らないけど、私達みたいに夢の世界に入り込んじゃった人じゃないの?」
「イヤ~、だってここで会ったのは同じクラスの女子ばっかじゃん!何でいきなり知らない男がいるのよ!うちの学校の先生とか?」
「いや、あんな人は見たこと無いな。近所にでも住んでる人なのかな?」
「近所ってねぇ、舞は意外と能天気なんだね」
理瑚の物言いに少しムッときたが、言われてみれば顔を知ってるクラスの女子の中に1人だけ見ず知らずの男がいるのは違和感があるかも。
「まだ、夢の世界を認識してから数日だから、これから他にも知らない人に会うかもしれないけどね。まぁ、今度ホークに会ったら、もう少し詳しく聞いてみるよ」
理瑚は不満げだが、2日も続けて会ったんだ、また会うこともあるだろう。
「まあ、いいや、ちょっとアタシ本当に眠くなってきたから、ここで寝させてもらうよ。あと、はぐれないように、明日夢に入ったらお互いに、ここで待つことにしない?」
「あ、いいね。そうしよう!」
私の了解を得ると、安心したのか理瑚は目を瞑ると寝てしまった。すると、みるみる姿が薄くなっていき、消えてしまったのだ。
うわー、こんな感じで消えるのか。何だか心配になってしまうが、現実では目が覚めたということなんだろう。
それにしても、まだまだ謎だらけの、この夢の世界で、仲間ができたのは心強い。
遠くで電子音が聴こえてくる。私も眠くなってきた……。
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