最強勇者のワイが独身ニート(31)に転生したんやがなんか質問ある？

ニートの始まり

　目を覚ます。昨晩の酒が残っているのかまだ体がだるい。暗い部屋で視界も悪い。

　昨日はパーティの仲間と一緒に酒盛りをした。魔王を倒して数年経った今でも、たまに集まるとあの頃の辛いことも楽しいことも思い出せる。昨晩の記憶が曖昧だから、きっと俺は酔いつぶれて誰かに運ばれたのだろう。

　だるい体を無理やり起こす。眠気と酒が残っているので、伸びをすると、物の輪郭線がはっきりしてきた。そうして飛び込んできた景色に俺は驚愕する。

「どこだ、ここ…。」

改めて周りを見渡すと、ここは俺の家ではない。俺は今まで何回も酔いつぶれては運ばれているから、仲間が家を間違えたり、知らないなんてことはありえない。

　とりあえずこのままではいけないと思い、立ちあがろうとすると自分の手が見えた。

「なんだこれは…。」

その目に映ったのはとても自分の目とは思えない代物だった。指は全体的に太く。少し脂っこい。何より爪が齧られていてなんとも気持ちが悪い。次々に起こる信じられない事柄から逃げるように立ち上がり、部屋の扉を開けた。すると外はもう明るく、下の階からは生活音が聞こえた。

「誰かの家か？それとも近くの宿に置いて行かれたのか？」

そう思い階段を降りる。するとキッチンに1人女性が立っていた。

「あんた降りてくるなんて珍しいやん。飯やったらまだないで。」

降りてくるのが珍しい？今日初めてここにきたんだぞ。そんなことあるか？それに奥の方でチラッと見えた絵、動いていなかったか？それに音も出ていた気がする。

「なんなんだ本当に…。」

部屋から出ても起こり続けるけるわけのわからない事柄が俺の頭を襲う。

逃げよう。その考えが頭に浮かんだ。危険なことは起こっていないが、中にいると危ない気がする。

「それよりもあんた、就職活d…」

あの女の人の言葉を遮りながら、俺は外へ出て行った。